
投資の基礎シリーズの第3弾は金融リテラシーについてです。金融に関する基礎知識を学ぶことは、今後どのような投資をしていく上でも必要不可欠です。
この記事で金融リテラシーとは何か、リテラシーのあるなしでどのような影響があるのかを学んでいきます。
さて、早速ですが、金利が上がっていくときに、資金の運用(預金等)、借入れについて適切な対応はどれでしょうか。
- 運用は固定金利、借入れは固定金利にする
- 運用は固定金利、借入れは変動金利にする
- 運用は変動金利、借入れは固定金利にする
- 運用は変動金利、借入れは変動金利にする
- わからない
これは金融広報中央委員会が2016年に、全国の18〜79歳の個人25,000人に対して実施した、「金融リテラシー調査」の際に出題された問題です。正解は3ですが、その理由を説明できるでしょうか。
日本人は金融リテラシー、つまりお金やお金の流れに関する知識や判断力が世界的に低いとされています。実はこれが日常の様々な面で、日本人が損をする原因になっているのです。
ここでは日本の金融リテラシーが具体的にどれくらい低く、それがどのような損につながっているのかを見るとともに、どうすれば金融リテラシーが身につくのかについても考えます。
日本人の「金融リテラシー」は世界的に低い
金融リテラシーとは?
- どのような生命保険や損害保険を選ぶべきか?
- 財形貯蓄をどのように設計するべきか?
- 住宅ローンや車のローンはどんな形で組むべきか?
- 貯金するべきか、投資するべきか? など
日常生活の中では、こうしたお金に関する判断が必要になる場面がたくさんあります。
その際に、自分の収入やライフスタイル、将来の人生設計などを踏まえて、自分に合った判断が下せるのかどうか……これが金融リテラシーです。
これは悪質商法や投資詐欺の被害から自分や家族のお金を守るためにも役立ちますが、同時に自分や家族のお金を殖やすためにも役立ちます。
2019年6月3日に金融庁が金融審議会の中で「公的年金だけではなく、個々人の自助努力による資産形成が必要」という旨の指摘をしたことからも、今後はお金を守るだけでなく、お金を殖やすための知識や判断が必要になります。
そのためにこそ、金融リテラシーは必要なのです。
調査が示す日本の金融リテラシーの低さ
しかし前述したように、日本の金融リテラシーは世界的に見ても低い状況にあります。
「金融リテラシー調査」は全53問の調査問題に回答してもらい、この得点で金融リテラシーを評価するというもので、国際比較ができるよう約半数の問題を海外の調査とよく似た内容にしていました。
その結果、アメリカと比べて以下のような違いがあることがわかったのです。
国名 | 18〜79歳全体の正答率 |
日本 | 47% |
アメリカ合衆国 | 57% |
またドイツやイギリスと比べると、例えば何かを買う際にそれを買うための経済的余裕が自分にあるかどうかを判断できるかといった、行動に関連する問題では日本が両国を7〜17%下回っていることもわかりました。
もちろん金融商品やサービス、制度等において、日本と海外では違いがあるものの、お世辞にも「日本人はお金に関する知識や判断力に秀でている」とは言えそうにありません。
「自分の金融リテラシーを知りたい」という人は、金融広報中央委員会「知るぽると」の金融リテラシークイズに挑戦してみるのもいいでしょう。
金融リテラシーが低い人は大損する、という事実
貯金だけしていると大損する
金融リテラシーが低いことの問題は、金融リテラシーが高い人に比べて「生涯で形成できる資産・ひいては使うことのできるお金、ゆとり」が小さくなってしまうことにあります。
例えば現金100万円を固定利回り(ずっと同じ利回り)で運用するとしましょう。これを利回り0.01%、2.0%、8.0%で、それぞれ30年間運用し続けたとすると、以下のような差が生まれます。
利回り | 現在 | 30年後 |
0.01%
(2019年3月末のゆうちょ銀行の預金利息) |
100万円 | 100万3,000円 |
2.0%
(1993年のゆうちょ銀行の定期預金金利) |
約181万円 | |
8.0%
(1974年のゆうちょ銀行の定期預金の瞬間最大金利) |
約1,006万円 |
0.01%の場合と8.0%の場合では実に1,000万円以上の差が生じています。元になるお金が200万円、300万円であれば、その差はもっと大きくなります。
少し金融リテラシーのある人であれば「そうは言っても今の時代に利回り8.0%の定期預金なんてないでしょ」と思うかもしれません。
これはその通りで、現在国内で貯金をするだけでこれほどの利回りを得ることはできません。
しかし貯金ではなく投資に目を向ければ、そして国内ではなく海外に目を向ければ、8%の利回りで30年間運用を続けることは十分可能です。
このことを知らずに、ただコツコツと国内の金融機関で貯金をしていれば、その分だけ「生涯で形成できる資産・ひいては使うことのできるお金、ゆとり」が小さくなるのです。
金融リテラシーがあれば人生は変わる
かたやコツコツと貯金をした人は、30年間でたった3,005円しかお金が殖えない。かたや金融リテラシーを身につけて30年間8%の利回りで運用し続けた人は、お金を1,000万円以上殖やせる。
それこそ8%(1974年のゆうちょ銀行の定期預金の瞬間最大金利)で貯金ができていた時代であれば、公的年金などの社会保障も充実しているため、何も考えずに貯金しているだけでお金の心配は解消されたでしょう。
しかし令和時代の人生設計は、そう簡単ではありません。金利はゼロに限りなく近く、社会保障もあてにならないからです。
ただし、金融リテラシーがあれば手元にあるお金や、これから運用に回すお金を、何倍にも殖やすことができます。
そうすれば、今必要以上に節約しなくてもいいかもしれませんし、老後のお金への漠然とした不安を感じる必要もなくなります。
金融リテラシーがあれば、人生は大きく変わるのです。
金融リテラシーは「環境」で身につく
自分一人で身につけるのは難しい
ではどうすれば金融リテラシーを身につけることができるのでしょうか。
一つの答えは身銭を切って、経験を積むです。例えばある程度の損失を覚悟したうえで投資にチャレンジしてみるといったやり方です。
自分のお金を使うとなれば、なるべく失敗したくないと思うのが人情です。そのためにはネットや雑誌、書籍などから情報を収集し、必死になって勉強するでしょう。
もちろんその中で損失ができることもあるかもしれませんが、何度か失敗と成功を重ねていくうちに、金融リテラシーが身についているはずです。
「環境」を整えれば無理なく身につく
しかし時間とお金を使って、自分一人で勉強し続けるというのは、そう簡単なことではありません。そこでおすすめしたいのが、環境を整えることです。
前掲の調査では、「金融教育を受けた」と回答した学生の正答率は56.4%となっており、そうでない学生よりも18%以上高く、全年齢層平均よりも0.8%高くなっています。
これはつまり、「お金について知ったり、考えたりするのが当たり前の環境」に身を置くことで、金融リテラシーが高まるということです。
例えば投資や資産運用に関するセミナーに参加し、そこで人間関係を作ってしまう。あるいは金融リテラシーの高いオンラインサロンに参加して、お金について知ったり、考えたりすることを日常にする。
何も知らない状態で飛び込むのが怖ければ、最初は初心者向けのウェブ記事や書籍を読むことを日課にしてもいいでしょう。
そうやって自分の周りの環境を整えていけば、無理なく金融リテラシーが身についていくはずです。
まとめ
金融リテラシーを身につけなければ、これからも莫大な金額の損をする可能性があります。
お金の窓口は、そのような事態を回避してもらうために、記事を通じて様々な角度からお金やお金の流れに関する知識を解説したり、セミナーなどを通じてお金に関係する判断力を磨いてもらうきっかけを提供したりしていきます。
金融リテラシーの必要性やリテラシーによって投資の結果が変わるということを理解したら、次は初心者が最低限身につけておきたい金融リテラシーを勉強していけたらと思います。