お金によって行動が制限されることなく自由な生活を送ることを「ファイナンシャルフリーダム」と言います。日本語では「完全なる経済的自由」などと訳され、アーリーリタイアメント(早期引退)を達成したあとの状態を指しています。
資本主義が成熟した現代では、お金がないと日常生活が送れません。衣食住のすべてにお金がかかり、さらに病気やケガ、老後のことを考えれば、どれだけお金があっても足りないというのが現代を生きる私たちの共通認識です。
しかし、お金を稼ぐために使っている毎日の時間や、お金を稼ぐために感じている毎日のストレスは、本当に報酬に見合ったものなのでしょうか。労働やストレスの対価として受け取った収入で、どれだけの暮らしが実現できるのでしょうか。
ファイナンシャルフリーダムを手に入れるということは、お金を稼ぐための時間がなくなり、やりたいことをやるために全ての時間を使えること、そして、やりたいことをやるために必要な資金を十分に持っているということです。
この記事では、ファイナンシャルフリーダムで目指すべきゴールを明確にした上で、ファイナンシャルフリーダム達成のための王道と言える3つのステップについて徹底的に解説します。お金と時間に縛られない生活を実現しましょう。
ファイナンシャルフリーダムの目標(ゴール)とは
お金によって制約を受けない自由な人生を送るためのファイナンシャルフリーダムは、単純な数式で表すと次のようになります。
総資産 ≧ 生涯の総支出
今後の人生に必要な全ての支出をまかなえるだけの資産を持っていれば、新たな収入を得る必要はありません。お金を稼ぐために時間を使う必要がありませんので、すべての時間を夢や理想を実現させるために使えます。
しかし、現実的には「生涯の総支出」を算出することは意外と難しいものです。なぜなら、10年後や20年後の自分がどのような生活をしているのかが分からないので、どれだけの生活コストが必要なのかが分からないからです。
さらに病気やケガ、そして老後について考えてみると、不確定な要素が多くなりますので、必要十分な金額を算出することが難しくなります。
「生涯の総支出」の算出するための3つのポイント
右側「生涯の総支出」が決まらなければ、左側「総資産」の金額を決定することができませんので、やや強引にはなりますが「生涯の総支出」を算出してみましょう。以下に3つのポイントを示しますので、これを参考にしながら実際に計算してみてください。
ポイント1:一生でかかる生活コストを算出する方法
衣食住にはじまり、子育て、趣味、旅行など、生活コストに含まれるものは非常に多岐にわたります。さらにファイナンシャルフリーダムを実現することをによって時間に余裕が生まれますので、平日の朝から晩までを会社で過ごす生活スタイルよりも多くのコストが発生します。
ここで重要なポイントは、節約することを想定した最小限の生活コストを算出しないことです。六畳一間のワンルームで一生を過ごすような生涯設計をしてはいけません。あまり高額な物件に住むことを想定することも得策ではありませんが、住居にかかるコストについては余裕のある金額を見積もっておきましょう。
衣服や食事についても同じです。何にどれだけのお金を使うのかは人それぞれ異なりますので、お洒落が好きな方は衣服の購入費用を多く設定してください。グルメな方は食費について十分に余裕のある金額を設定しておきましょう。
お金を貯める段階においては節約は必要なことですが、使う段階においては節約が大きなストレスとなりますので、趣味や旅行も含めて十分に余裕のある暮らしを想定した生活コストを算出するようにしてください。
生涯の総支出 = (毎年の生活コスト × 残りの人生)+ 育児などにかかる支出
生涯の総支出を算出するにあたっては、毎年の理想的な生活スタイルにかかるコストを計算した上で、残りの人生として想定する年数をかけるようにしてください。また、育児などの一定期間だけに集中して発生する支出については別途算出して、足し合わせるようにしましょう。
ポイント2:病気やケガという突発的なリスクに対処する方法
残りの人生を想像しながら「生涯の総支出」を算出するとき、どうしても気になるのが病気やケガなどの医療費です。あまりに不確定な要素ではありますが、ファイナンシャルフリーダムを実現するためには、医療費についても盛り込んでおく必要があります。
そこで重要になるのが「保険」です。何も起こらなければ損をしてしまうかもしれないのが保険の特徴ですが、いざ病気やケガが発生することで資産を大きく減らしてしまうリスクを考慮すれば、やはり保険をしっかりと利用することが得策です。
生涯の総支出 =(毎年の生活コスト × 残りの人生)+ 育児などにかかる支出 + 保険料
保険料については、加入する年齢によって金額が大きく変わりますので、生活コストとは切り離して計算しておくことをおすすめします。また、医療保険だけではなく、クルマや自宅などがある方については損害保険についても忘れずに加算するようにしてください。
ポイント3:長生きという人生最大のリスクに向き合う方法
食習慣の改善や、医療の発達などのさまざまな理由によって、日本人の寿命は伸びています。健康で長生きであることは人間の根源的な欲求ですが、経済的なことに限定すれば「長生きはリスク」だと考えざるをえません。長生きをするということは、それだけ毎年の生活コストがかかるからです。
2019年に金融庁が発表した「高齢社会における資産形成・管理」では、リタイアして収入のない高齢者夫婦が老後を過ごすために必要な資金が2000万円であるとの考えを示しました。2000万円という金額だけが独り歩きして大騒ぎになったため、のちに金融庁は発表を取り消しましたが、報告書の内容をみると統計データに基づいた非常に論理的なものでした。
生涯の総支出 =
2000万円 +毎年の生活コスト ×(65歳 - 現在の年齢)+ 育児などにかかる支出 + 保険料
年金を満額で受給できることを前提としても65歳以降の人生には2000万円が必要になります。2000万円は決して小さな金額ではありませんが、これによって65歳以降の生活コストについては考慮する必要がなくなりますので「生涯の総支出」を計算するうえでは非常に便利な数字です。
なお、海外に住むなどの理由によって年金の受け取りが見込めない方については、年金に相当する額について別途費用を算出する必要があります。
「総資産」についての考え方と「不労所得」について
3つのポイントを踏まえながら「生涯の総支出」を計算してみると、どれだけ少ない金額を想定した方であっても、おそらく2億円を超える金額になったとはずです。そして、これだけの資産を築くことは不可能だから諦めようという心境になった方も多いかもしれません。
しかし、まだファイナンシャルフリーダムを諦めるのは、まだ早いです。
総資産 ≧ 生涯の総支出
ファイナンシャルフリーダムを表した数式のうち、左側の「総資産」について、もう少し具体的に検討してみましょう。実は「生涯の総支出」が途方もない金額になったからといって、その全額を用意することがファイナンシャルフリーダム達成の絶対条件ではありません。
なぜなら、お金には銀行の預金金利や投資による利回りによって増えるという特徴があるからです。つまり、投資の要素を組み込むことによって、ファイナンシャルフリーダムのための総資産のハードルは飛躍的に低くなります。
生涯の不労所得 ≧ 生涯の総支出
一度にまとまった資産を築くことは最も好ましい状態ではありますが、労働を伴わない不労所得によって「生涯の総支出」をまかなうことができれば、これも十分にファイナンシャルフリーダムと呼べる状態でしょう。
そして、宝くじで高額当選したり、事業で大成功するような一攫千金を期待することなくファイナンシャルフリーダムを実現するためには、投資と事業からの不労所得によって毎年の支出をまかなっていくことが現実的です。
では具体的にどのようにすれば、このようなファイナンシャルフリーダムを実現させることができるのかについて、解説をすすめます。
ノーリスクな給料収入で資産のベースを形成
ファイナンシャルフリーダムを手に入れるための第一歩は、サラリーマンになることから始めます。なぜなら、出社さえしていれば毎月の給料が振り込まれるサラリーマンほど、ノーリスクなお金の獲得方法は無いからです。
サラリーマンは理想とする姿からは程遠いように思えるかもしれませんが、いきなりハイリスクな投資や起業から始めることほど無謀なことはありません。まずは、あらゆる制約に縛られた状態から、ファイナンシャルフリーダムへの道を歩きはじめてください。
お金を手に入れるための時間、お金を手に入れるために付き合う人々に溢れたしがらみだらけの日々ですが、大量消費を煽る大企業の論理には乗せられず、日々の生活コストを抑えながら、給料から少しでも多くの資金を投資に回すように心掛けましょう。
サラリーマンは「トレード」ではなく「投資」に専念
なぜか世の中では「トレード」と「投資」の違いを理解できていない人たちがいます。トレードは自分の手を動かしてお金を増やすことで、投資(インベストメント)は自分の金を動かしてお金を増やすことです。
平日の朝から夜までをお金を手に入れるための時間に割いているサラリーマンにとって、トレードは不向きです。時間的に制約があるサラリーマンがトレードを行っても、決して好ましい結果が得られることはありません。
もちろんトレードによって多少の利益を得られる可能性はありますが、お金を優先するあまりに時間や体力を過度に消耗してしまっては本業のサラリーマンとしての勤務に影響がありますので、投資に専念することが理想的です。
まずは投資信託などの購入するだけで放置できる商品への投資に専念しましょう。毎月ずっとノーリスクで手に入る給料という原資を最大限に有効活用するために、投資による運用へと流し続けることで、お金を休ませることなく動かし続けるのです。
「週末起業」で限界までサラリーマンであり続ける
現在の資産を切り崩せば1年くらいの生活費がまかなえるという段階になると、サラリーマンのなかには独立して起業することを考える人が出てきます。大きなお金を得るための手段は、投資と事業のふたつしかありませんから、事業をはじめたいと思う考え自体は正しいです。
ファイナンシャルフリーダムを勝ち取るには、多少なりとも自分の事業を持つという過程が必要です。
しかし、サラリーマンというノーリスクな給料収入がある身分を捨てて、いきなり事業主として独立することは非常にハイリスクです。経済産業省が公表している「開業年次別 事業所の経過年数別生存率」を見れば、そのリスクの高さには誰しもが納得します。
年次ごとの生存率 | 100社が起業した場合の残数 | |
1年目 | 62.3% | 63社 |
2年目 | 75.9% | 48社 |
3年目 | 79.5% | 38社 |
4年目 | 81.2% | 30社 |
5年目 | 83.8% | 26社 |
6年目 | 83.5% | 22社 |
7年目 | 85.2% | 18社 |
8年目 | 85.7% | 16社 |
9年目 | 86.0% | 14社 |
10年目 | 86.8% | 11社 |
たった1年で約4割が廃業し、10年後には約1割しか残らないというハイリスクな挑戦は、サラリーマンにとっていかに無謀なことであるのかが分かります。
このため、サラリーマンが最初に取り組むべき事業の選択肢は、退社して完全に独立することではなく、月々の給料収入を確保しながらの週末起業に留めるべきです。あまり時間とコストのかからないものから、少しずつ事業の勉強をするつもりで取り組んでください。
「スモールM&A」で週末起業を加速させる
週末起業として取り組んでいる副業が軌道に乗り、いよいよ副業だけで独立できると感じるようになっても、まだぎりぎりまで給与所得を受け取れるサラリーマンの立場を維持しつつ、スモールM&Aに取り組むことをおすすめします。
スモールM&Aは、サラリーマンが給料や貯蓄から捻出できる程度の資金を使って行う小規模な企業買収のことで、ゼロから副業を育てる時間を節約できることに加え、すでに行っている副業に新たな事業を合併させることで、事業の規模を一気に大きくすることができます。
詳しいスモールM&Aの解説や、具体的なスモールM&Aの事例については別の記事(「サラリーマンの投資の新潮流「スモールM&A」が静かなブームになっている理由」)にまとめていますので参考にしてください。
スモールM&Aはインターネット社会が成熟したことで誕生した新たなビジネススタイルであるため、まだ歴史が浅いものですが、ファイナンシャルフリーダムを実現するには強力な武器となりますので、是非とも活用をおすすめします。
マイホームとマイカーには絶対に手を出さない
ファイナンシャルフリーダムを手に入れる初期のステップでは、収入を増やすことよりも支出を減らすことの方が効果的ですので、マイホームとマイカーの購入は好ましくありません。
古いサラリーマンの価値観ではマイホームを持つことが人生の最大の目標とされていた時期がありましたが、現実的には人々のライフサイクルにおいて住むべき家の大きさは変化していきますので、その都度で最適な大きさの家を賃貸する方が経済的な合理性が高いです。
- 独り暮らしならワンルーム
- 2人で住むのなら1DK
- 子供ができたら1LDK
- 子供が大きくなったら2LDK
- 子供が家を出たら1DK
このように家族の人数によって家の大きさを変えていくことが重要なのです。
これはマイホームに限らずクルマにも言えることで、今後のシェアエコノミーの発展が予想される時代には、わざわざ自己所有の家やクルマを持つことのメリットは、あまり大きくありません。お金の使い道は必要最小限になるようにしましょう。
支出を抑えてコンパクトな生活を送るためにはマイホームやマイカーが必要ではないと解説しましたが、もうひとつ重要なポイントがあります。
マイホームやマイカーは単純に購入単価が高いだけではなく、これらを購入したことによって生活コスト全体を引き上げるという特徴があります。例えば、マイホームがあるから家具が必要になり、リフォーム代金がかかり、マイカーがあるからガソリン代がかかり、修理代がかかるなどの副次的な費用を発生させます。
家とクルマに関しては、銀行や住宅メーカー、自動車メーカーが莫大な資金を投入して”もつべき理由”を提示していますので、さまざまな誘惑が待っています。長期的な視点を持って誘惑に打ち勝つようにしてください。
投資のリターンで生活費をまかなうノーリスクな独立
ファイナンシャルフリーダムを獲得するためには、必ずどこかの時点でサラリーマンという身分を捨てて独立しなければなりません。経済的な安定を求めるのであればサラリーマンを続けるのも悪くない選択肢ですが、やはりファイナンシャルフリーダムとは程遠い状態であることは否めません。
ここで大きな問題となるのは、いつどの時点でサラリーマンを辞めて独立するのかについてです。
一般的に独立するタイミングは、サラリーマン生活が嫌になったという逃避的な理由か、あるいは、サラリーマンを辞めて事業に全力を注ぎたいという情熱的な理由によって決められます。
しかし、独立は人生を左右するイベントですから、逃避や情熱などの感情的な理由によって判断するべきではありません。極めて客観的な数字的な根拠によってハードルを設け、条件をクリアしたときに独立することをおすすめします。
サラリーマンが独立を決める最高の条件は、投資信託などの分配金によって全ての生活コストがまかなえている状態を作ることです。しかし、これは少しハードルが高すぎますので、現実的には投資に限定せずに副業も含めた収入が、サラリーマンとしての給料を上回ることを条件とします。
サラリーマンの給料 < 投資・副業による収入
もちろん、給料を上回る収入があると言っても、生活コストの全てを補えるだけの十分な収入でない場合には独立することはできません。収入を上げることに加え、コストを下げる努力を継続させてください。
独立によって「時間のフリーダム」を手に入れる
サラリーマンを辞めて独立することだけでは、まだまだファイナンシャルフリーダムまでの道のりは遠いですが、まずは「時間のフリーダム」を手に入れることができます。
独立して自分で事業をスタートさせてみると、サラリーマンだった頃よりも長時間ずっと働き続けなければならない状況に陥ることが多くありますが、それでも自由な時間に仕事をして、自由な時間に休むことができますので、時間の全てを自分の意思で使うことが可能になります。
多くのデパートや娯楽施設は平日の方が人が少ないですから、プライベートを充実させるためには平日の1日や2日を休みにすることをおすすめします。また、長期休暇についてもサラリーマンが一斉に休む大型連休を避けることで、航空券やホテル宿泊費が安くなりますので、お得に旅行をすることができます。
これは「休暇分散化」と呼ばれる仕組みですが、サラリーマンが中心の社会である日本では実現が難しいものです。ファイナンシャルフリーダムを目指す方には「時間のフリーダム」を体感するためにも、他に先んじて「休暇分散化」を採用していただきたいです。
休暇分散化とは、省庁を超えた副大臣による会合「観光立国推進本部」が提唱している、日本の地域(ブロック)ごとに大型連休の日程をずらそうとする施策です。
観光地での混雑を避け、経済を活性化させる狙いがあり、2010年ごろから導入に向けた取り組みが行われているものの、実現には至っていません。
ただし、自由を手に入れるということは責任を伴いますので、いかに効率よく時間を使うのかについては全て自己責任になります。サラリーマンのように出社していれば給料が得られる報酬形態ではありませんので、タイムマネジメントには十分に配慮しましょう。
リスクの高すぎる「本業」を作らず、「副業」をいっぱい作る
ファイナンシャルフリーダムを手に入れるために行う事業は、あくまで投資の延長線上にあるものです。事業によって名声を得たり、一攫千金を狙うものではないことを忘れないようにしてください。
このため、ひとつの事業を大きくすることを目指すのではなく、「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言に従ってリスクを分散化させるために多くの副業を作ることをおすすめします。サラリーマン時代に副業として取り組んでいた程度の大きさの事業を、いくつも持つことが理想的です。
「卵は一つのカゴに盛るな」とは、卵をひとつのカゴに入れておくと、もしカゴを落としてしまったら全ての卵が割れてしまうことから、すべての資産を1カ所にまとめることのリスクを警告する投資の格言です。
いわゆる分散投資のメリットを示しているものですが、投資だけでなく人生のさまざまな事柄において適用が可能な教えです。
スモールM&Aなどを活用しながら、相互にメリットを生むような複数の小さな事業を手掛けることを目指しましょう。もしもひとつの事業が失敗してしまっても、他の事業による収益によって生活を維持することができ、スムーズに再挑戦をおこなうことができます。
独立後は節税対策に関する知識も徐々に増やしていくことが大切です。自営業者向けの節税対策について別の記事(「スグできるのに忘れがち!自営業者必見 ”経費以外”の節税対策3選」)にまとめていますので、参考にしてください。
投資や資産の「海外移転」を進める
海外に目を向けてみると、日本とは全く異なる種類の投資がいくつもあります。金融庁によって厳しく監視されている日本の金融機関が取り扱う金融商品は、安全性が非常に高い一方で、収益率では見劣りしてしまうものが多いです。
このため、投資を含めた資産運用については将来を見据えて少しずつ海外移転を進めることをおすすめします。
資産の海外への移転先としては、やはり香港が最有力候補となるでしょう。日本から最も近いタックスヘイブンであり、世界基準で評価されている金融商品が数多くあります。英語が苦手であったり、はじめて海外投資を行う方にとってもサポート体制が充実していますので、安心して運用を開始できるのが香港の魅力です。
香港での資産運用についての初級から上級までの全ての情報を網羅した記事(「香港で投資を始めるための基礎知識を分かりやすく詳細解説」)を別途掲載していますので、資産の海外移転を始める際には参考にしてください。
海外での資産運用は、リターンが大きい一方で、それに伴うリスクも大きいですから、最初からまとめて資産を移転させるのではなく徐々にボリュームを増やしていくようにしましょう。やはり、「卵は一つのカゴに盛るな」の教えを守ることが大切です。
日本国内の不動産投資には絶対に手を出さない
マイカーやマイホームを持たないことのメリットについては既に解説しましたが、投資用の不動産についても日本国内に所有することは避けるべきです。
まず、少子高齢化が進む日本では人口が減少しますので、不動産の需要が下がることが明らかであり、投資対象として魅力的ではありません。また、地震などの自然災害が多いため、不動産投資のリスクが高いことを考慮すると、十分なリターンを得ることは難しいです。
日本の不動産の動向調査を続けている一般社団法人「日本不動産研究所」の2019年10月のレポート「第41回不動産投資家調査」によると、現在が不動産収入(家賃収入)のピークであると考える投資家が全体の約半数を超えています。
東京オリンピックが行われる2020年の夏が、日本の不動産投資が下降局面へと向かう転換点になりそうです。
参考:日本不動産研究所
また、不動産投資には一定の労働が伴うため、ファイナンシャルフリーダムを目指すという観点からも、あまり適切な投資対象であるとは言えません。
そして最も重要なのは、次の項目で詳しく解説する「ファイブフラッグ・セオリー」や「非居住」などの要件との相性が悪いことです。日本国内に不動産を保有することは税金の点で大きなデメリットがあります。
まとまった資金を手に入れると不動産投資を行うことが、これまでの資産運用の定番コースでしたが、すでに時代が変化していますので日本国内の不動産投資には手を出さないようにしましょう。
投資だけで生活をする本物の投資家になる
いよいよファイナンシャルフリーダムまで残りわずかです。これまで取り組んできた事業を転売するなどして、投資からの収入だけで生活をする本物の投資家へと移行していきます。
1年間の総支出 < 総資産の5‐8%
リスクを分散しながら投資によって得られる収益は、おおむね総資産の5%から8%程度です。もっと欲張れば12%程度まで収益率を引き上げることが可能ですが、それだけリスクの高い商品に投資しなければなりませんので、無理は禁物です。
こうして投資によって得られた収入によって、1年間の総支出をまかなうことができれば、ほぼファイナンシャルフリーダムを手に入れたといえます。ただし、継続的に毎年の総支出をまかない続けることが必須ですから、長期的な視点に立って少しずつ投資先についてメンテナンスをすることを怠らないでください。
投資家になって「場所のフリーダム」を手に入れる
投資信託などの金融商品を中心とした投資家になることで「場所のフリーダム」を手に入れることができます。つまり、世界のどこにいても収入に変化はなく、場所に囚われない生活ができる状態となります。
サラリーマンを辞めて独立したことで「時間のフリーダム」を手に入れ、さらに「場所のフリーダム」を得ることによって、自分の行動を制限するものがほぼなくなります。
場所の制限がなくなることで、生活コストの高い東京などの大都市に居住する必要がなくなります。また一方では、生活が不便な地方での暮らしを捨てて、利便性の高い大都市へと拠点を移すことも可能になります。さらに、冬場には常夏の南国リゾートで過ごすなどという暮らしさえも選択することができるのです。
どのような生活を理想としているのかは人それぞれですが、時間と場所の制限がないことによって生活スタイルは大きく変わることでしょう。
5本の旗”ファイブフラッグ・セオリー”とは
場所に囚われない状態を活用することによって、節税メリットを生むことができます。このメリットを最大限に活用して、納税額を限りなくゼロに近づけることを目指す理論が、ファイブフラッグ・セオリー(5本の旗理論)です。
1本目の旗:「国籍」を持つ国
2本目の旗:「資産」を運用する国
3本目の旗:「自宅」を持つ国
4本目の旗:「事業」をする国
5本目の旗:「休暇」のための国
旗というのは国のことを表しており、これらの5本の旗(国)を使い分けることによって、税金が課税されない状態を作ることを目指しています。投資家にとっては収益率を上げることに加えて、納税額を減らすことも重要な活動のひとつですので、ファイブフラッグ・セオリーの考え方は非常に重要です。
全ての旗を立てて完全に納税額をゼロにすることは難しいものの、いかに支払うべき税金を少なくするのかという点では、ファイブフラッグ・セオリーから学ぶべきものは多いです。
とても重要な理論であるため、詳細については別の記事(「ファイブフラッグセオリー。税金がゼロ。全てを非課税にする生き方とは。」)にて解説しています。リンク先の記事を参考にしてください。
「まだ節税するほどの大金を持っていない」という自己認識によって税金対策を行わない方がいますが、納税額は個々の収入に応じて決定されるものですので、資産や収入の大小を問わず、常に節税の意識を持つことが重要です。納めるべき税金は納めることが大切ですが、少しでも資産を残すためには税金対策を心がけましょう。
日本の「居住者」と「非居住者」とは
日本の課税システムは「属地主義」を採用しています。これは国籍ではなく居住している場所を重視することで、納税義務があるかどうかを判断するものです。つまり、日本の「居住者」であれば、日本での納税義務が発生するということです。
日本は世界的に見ても税率が高い国のひとつですから、できれば日本の「非居住者」となって、日本での課税を免れることが好ましいです。日本での活動によって得られた収益に対する源泉所得税など一部の税金を除いては、「非居住者」となることで納税の義務がなくなります。
しかし、日本の税務当局は可能な限り多くの税金を集めることが主たる活動ですから、簡単には「非居住者」であると認めてくれません。
一般的な認識では「非居住者」だと思われるような状態であっても、法律や判例に照らし合わせてみると「居住者」だと判断される事例が多くあります。別の記事(「間違いだらけの日本の非居住!日本の居住でなくなるための要件とは」)にて、勘違いされがちな「非居住」に対する認識について情報をまとめていますので、参考にしてください。
海外の居住地の選択に当たっては、1カ所に限定して居住する必要はありませんので、夏には南国リゾート、冬にはウィンタースポーツが楽しめる国など、季節ごとに移動を続けることもできます。ファイブフラッグセオリーと非居住の条件を上手く組み合わせながら、最良の居住地を見つける旅に出ましょう。
「投資」は長期かつ複利に集中させて死ぬまでの資産形成
投資によってファイナンシャルフリーダムが実現させるためには、とにかく死ぬまでの全ての支出をまかなえる状態であることを確定させなければなりません。投資による収益が一時的なもので、数年後には生活に困るようであればファイナンシャルフリーダムには程遠いです。
投資の利益を最大化させるための方法は、長期で運用することと、複利の効果を活かすことの2つです。現在から死ぬまでの生涯の全ての生活コストに足りる資産を作るには、これら2つの効果を活かすことが必須です。
この段階では、毎年の支出をまかなうだけの収入を投資によって得られていますが、さらに余裕のある資産を築くためには余剰資金を長期かつ複利の運用へと集中させるように心掛けてください。
日本人の投資家にとって最も身近で手を出しやすい長期の複利運用といえば、やはり香港のIFAを利用することになります。香港での投資を少しずつステップアップさせていく方法については別の記事(「HSBC香港のステップアップ活用術!ゼロから始めて上級者へ!」)に情報をまとめて掲載していますので、参考にしてください。
海外の金融機関は、長期で付き合いをすることによって徐々に信用を蓄積させていくことも大切です。まずは銀行口座を作成することからはじめましょう。
ファイナンシャルフリーダムを手に入れたらビジネスは娯楽
お金について一切の不安のないファイナンシャルフリーダムを達成しても、多くの人たちが投資だけに専念するのではなく、事業などのビジネスを継続しています。しかし、そのビジネスはお金を儲けることが目的ではない娯楽に近いものです。
貧困者支援や若者支援などの社会的に意義のあるビジネスや、ハイリスクでほぼ収益が期待できないビジネスなど、お金によるリターンではなく、自分自身が楽しむことがビジネスの主体となります。
趣味や娯楽としてビジネスに取り組むことには違和感を感じられるかもしれませんが、ファイナンシャルフリーダムを手に入れた人たちにとっては、夢や理想を実現するための方法として「社会起業家」と呼ばれるような生き方を選んでいるにすぎません。
世の中の有名な経営者に対して「あんなにお金があるのに、どうしてビジネスを続けているんだろう?」と不思議に感じることがあるかもしれませんが、ファイナンシャルフリーダムを達成した人たちにとっては、お金を社会に還元することや、お金の見返りを求めない取り組みをすることは、最高の娯楽なのです。
社会起業家とは、世の中にある社会問題を解決するためのアプローチとして、事業という手段を用いている経営者たちのことです。
事業という仕組みはお金を儲けるための手段として資本主義のなかで成熟してきましたが、多くの人と共にプロジェクトを行ったり、政府や社会に対して影響力を持つための主体として、社会起業家たちは「事業」を利用しています。
世の中の有名な経営者に対して「あんなにお金があるのに、どうしてビジネスを続けているんだろう?」と不思議に感じることがあるかもしれませんが、ファイナンシャルフリーダムを達成した人たちにとっては、お金を社会に還元することや、お金の見返りを求めない取り組みをすることは、最高の娯楽なのです。
お金を得ることが目的ではないビジネスほど楽しいものはありません。
ファイナンシャルフリーダムへの王道まとめ
ファイナンシャルフリーダムを実現することは決して容易なことではありません。しかし、現代の資本主義社会において夢や理想を叶えるためには、お金に縛られない状態を作ることがとても重要です。
お金、時間、場所という行動を制限する全ての物事から解放されたとき、自分が何をやりたいのかを考えながら、コツコツと資産を積み上げていきましょう。また、これらの過程では知識と経験が得られますので、さらに人生が豊かなものとなっていきます。
現代は「行き過ぎた資本主義」と表現されるような常に競争が求められる社会で、ずっと頑張り続ける必要があるものの、その見返りは十分ではありません。多くの富は一部の資産家や大企業によって独占されているため、個人が経済的に豊かになることは難しいのです。
ファイナンシャルフリーダムに至るまでには10年単位の準備が必要になります。まだ20歳になったばかりの若者であっても、現実的にお金について一切の心配がない状態を作る頃には30歳を超えています。また、現在の年齢や家族などの条件によっては、完全なる経済的な自由を獲得することが難しい方もいらっしゃることでしょう。
それでも、ファイナンシャルフリーダムを達成したいと考えるときには、年齢などの条件をネガティブに捉えるのではなく、現在の状況を活かしていかに資産を築くのかについて考えることが重要です。そして、まずは10年後のあるべき姿として目標を定めて、じっくりと計画を進めてください。
事業と投資というリスクを上手くコントロールして、人生を豊かなものにしましょう。ファイナンシャルフリーダムを実現したあとの人生は、とても楽しいものです。