日本国内だけでも、投資信託は数千本もの商品があります。

このなかから手数料が妥当で、パフォーマンスが高く、かつ自分の投資方針に合った投資信託を見つけ出すのは簡単ではありません。

したがって、投資信託選びには基準が必要です。

「投信スコア」は投資信託を選ぶ際に役に立つ基準の一つです。

ここでは投信スコアの定義や強み、代表的なスコアのほか、投資信託選びに活用する際の注意点について解説します。

INDEX
  1. 投信スコアの強みは「客観性」にあり
    1. 投信スコアとは?
    2. 「人気ランキング」の問題点と投信スコアの強み
  2. 代表的な4つの投信スコア
    1. 楽天オリジナルファンドスコア
    2. リッパー・リーダーズ
    3. モーニングスターレーティング
    4. QUICKファンドスコア
  3. 「投信スコアが高い=誰にでも適している」ではない
  4. まとめ

投信スコアの強みは「客観性」にあり

虫眼鏡でこちらを見る男性

投信スコアとは?

投資信託の良し悪しを判断するのは簡単ではありません。

確かに、TOPIXや日経平均株価に連動するよう運用されるインデックス型の商品であれば、目標とする指標の動きにきちんと連動しているかどうかで判断できます。

しかし各種指標の動きを上回る運用を目指すアクティブ型の商品の評価には、より複雑な判断が必要になります。

そこで役に立つのが、投信スコアです。

投信スコアは金融機関や投資信託評価会社などが出している評価値で、収益率や元本保全性などの項目に基づいて決定されます。

「人気ランキング」の問題点と投信スコアの強み

ランキング

投信スコアの強みは、評価対象となる投資信託の過去の実績に基づいて、客観的に算出されている点にあります。

ネット証券などのサイトには必ず「人気投資信託ランキング」があります。

ランキングのカテゴリには「買付金額」「値上がり率」「値下がり率」などが並んでおり、順位を基準に投資信託を選ぶ人も少なくありません。

しかし残念ながら、これらの人気ランキングは投資信託選びにおいては何の基準にもなりません。

というのも、たとえば「買付金額ランキング」で上位にランクインしている商品は、単に金融機関が積極的にセールスをしている「金融機関が儲かる商品」である可能性があります。

また「値上がり率」「値下がり率」のランキングも1週間〜1ヶ月程度の期間で順位が決まるため、5年、10年、15年といった長期でどうなるかが全くわかりません。

これに対して投信スコアは、投資信託の良し悪しに確かな影響力を持つ数値をもとに、客観的に算出されるように作られています。

したがって人気ランキングと比べると、本当の意味で「良い投資信託」を見つけやすいのです。

代表的な4つの投信スコア

数値分析のイメージ

では投信スコアにはどのようなものがあるのでしょうか。

以下では代表的な4つのスコアについて特徴を紹介します。

ただし専門的な用語や概念が出てくるため、要点だけを理解したい人は飛ばしてもらっても構いません。

楽天オリジナルファンドスコア

2015年から運用され始めた、楽天証券独自の投信スコアです。

同じカテゴリのなかでより効率的な運用実績を持つファンドを見える化することを目指して作られたスコアで、1年、3年、5年、10年の評価期間毎に5段階の星の数で評価が示されます。

株式、債券、バランスなど投資する資産をもとに投資信託をカテゴリ分けし、各カテゴリ内で平均リターンを算出。

平均に対してどの程度リターンを出せたかという「超過収益率」と、平均リターンを下回るリスクである「下方偏差」に基づいてスコアを決定します。

評価は相対評価で、満点の5つ星のつく商品は上位10%のみ、4つ星が上位10〜25%、3つ星が25〜50%に設定されています。

したがって2つ星以下は分類平均以下の上位50〜100%の商品につけられます。

リッパー・リーダーズ

アメリカ国旗

リッパー・リーダーズは米国の投資信託情報サービス会社リッパーが提供している投信スコアです。

40年以上の実績を持ち、カテゴリも400種類以上と細かく分けられており、投資家や投資アドバイザーのアドバイスをもとに、世界86カ国(2018年3月末時点)の投資信託に評価をつけています。

評価期間は3年、5年、10年の3種類が設けられています。評価基準は下表の通りです。

総合収益性 基準価額の変動を計算し、独自のカテゴリー(リッパー分類)に基づいてランキングをもとに算出する数値。
収益一貫性 同一カテゴリ内のリスク、リターンのランキングをもとに算出する数値。
元本保全性 毎月の損失だけに注目したランキングをもとに算出する数値。
経費率 運用コストと信託報酬の合計をもとに算出する数値。

モーニングスターレーティング

投資信託評価会社であるモーニングスターが作成している投信スコアです。

評価期間は3年、5年、10年の3種類。

同社が独自に算出する「モーニングスターリターン」「モーニングスターリスク」に基づいて、楽天オリジナルファンドスコアと同じ5つ星形式で評価が決まります。

相対評価である点も同じで、上位10%以内が5つ星、上位10〜32.5%が4つ星、上位32.5〜67.5%が3つ星、上位67.5〜90.0%が2つ星、90%以下は1つ星です。

QUICKファンドスコア

レーダーチャート

QUICK資産運用研究所が提供し、新生銀行や松井証券が活用している投信スコアです。

投資対象の資産別に15のカテゴリーに分類し、そのなかで以下の5つを基準に評価をつけています。

リスク 運用方針に対応したリスクになっているか。
リターン リスクに見合ったリターンになっているか。
下値抵抗力 下げ相場になった際に、基準価額の落ち込みを抑えられているか。
コスト コストに見合ったリターンになっているか。
分配金健全度 元本を取り崩してまで投資家に分配金を支払っていないか。

これらの基準は全て10段階で評価され、投資信託毎にレーダーチャートで表示されます。

ほかの3つのスコアと違い、評価期間を設けず、一つの投資信託に一つだけスコアがついている点が特徴です。

「投信スコアが高い=誰にでも適している」ではない

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投資信託の良し悪しを客観的に評価できる投信スコアですが、投資判断の基準にする場合には注意が必要です。

第一に投信スコアによって評価方法が違うため、評価も一定ではないという点です。

ここまで見てきたように、投信スコアには色々な種類があって、それぞれが異なる評価方法を使っています。

そのため同じ投資信託でも、楽天オリジナルファンドスコアでは高い評価を与えられていても、QUICKファンドスコアでは評価がやや下がるといったケースもあります。

したがって自分が評価方法に納得できる投信スコアを選ぶ必要があります。

第二に「投信スコアが高い=自分に合った商品」ではない点です。

たとえば毎月分配型の投資信託が高評価を受けることもありますが、資産を殖やしたいなら「毎月配当型」は絶対買うな!でも解説しているように、長期運用を目指す人には毎月配当型は向いていません。

またハイリスクハイリターンの商品が高評価を受けることもありますが、これも資産が少なかったり、高齢だったりと許容できるリスクが小さい人には向いていません。

したがって、投信スコアを投資信託選びの基準として活用するためには、評価方法を理解する力、自分に合った投資信託の分類を見極める知識や経験が必要不可欠なのです。

くれぐれも「投信スコアが高いから買う」といった判断をしないよう、注意しなければなりません。

まとめ

投信スコアはある投資信託について、プロが下した評価を表すものです。

そのため自分にあった投資信託を、数千本ある中から見つけ出すための判断基準として活用することができます。

しかし評価方法の違い、投信スコアだけでは自分の投資方針に合っているかどうかを判断できないといった問題を抱えているのも事実です。

使いこなすには相応の知識や経験が必須で、投信スコアだけを基準に投資信託を選ぶと、思わぬ失敗をする可能性があります。

そのため、投信スコアはあくまで数千本の中から候補を絞り込むためのフィルターとして利用し、そこから先は自分の知識や経験で吟味していくといった手順を踏む必要があるのです。

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自分の力で確実に資産を作っていきたい人は、ぜひほかの記事も参考にしていただければと思います。