さて、ここまでは、老後の資産を投資で形成するための基礎知識・心構えをお送りさせていただきました。

ここまでの内容を基に老後に向けた資産形成を行っていただくことも、十分可能でございます。

ここからは、金融リテラシーの高い国の投資家が一体何に投資しているのか?それはなぜなのか?をご紹介していきます。

これらを知って活用することができれば、投資初心者でも国内のベテラン投資家並みの結果を出すことも可能です。

もちろん、投資初心者であっても実践可能な形でまとめておりますので、ぜひ勉強されてみてください。

では、さっそくですが、日本人が投資を始めるとなると、たいていの場合「とりあえず日本国内に投資しておこう」と考えるはずです。その理由は主に以下の2つでしょう。

  • 日本は世界第3位の経済大国だから安心だ。
  • 日本なら自分が国内にいるし、情報も手に入りやすいから安心だ。
  • なんとなく、日本が安心

しかし今の日本の金融機関やそこでラインナップされている金融商品をよく見てみると、実は問題だらけだということがわかります。到底「日本は安心だから」と言えるような状況ではないのです。

もちろん日本に投資することが、イコール間違いではありません。しかし日本の金融商品や金融機関が抱える問題を知らずに投資をするのは、あまりにもリスクが高すぎます。

ここでは数多くある問題のうち、特に知っておくべき3つについて解説します。日本国内への投資や日本の金融機関の利用を検討する前に、まずはこの3つを知っておきましょう。

INDEX
  1. 「日本への投資」ばかりの金融商品ラインナップ
  2. 「海外投資」を縮小・劣化させる業界構造
    1. 世界に比べて圧倒的に少ない選択肢
    2. 限られた商品を劣化させる業界の構造
    3. 劣化していない商品を見つける「目」と「鼻」が必要
  3. 顧客の資産を食い物にする「回転売買」
    1. 金融庁が問題視する「回転売買」
    2. 購入手数料を目的とする業界の悪慣習
  4. まとめ

「日本への投資」ばかりの金融商品ラインナップ

日本の金融機関の金融商品ラインナップは、日本への投資を前提としたものが大半です。

もちろんある国の金融機関が自国に投資する金融商品を数多く扱うのは当然です。しかし問題は、日本の経済の先行きが不安だらけだという点にあります。

  1. 少子高齢化による総人口と労働人口の減少。
  2. 総人口減に伴う円安進行と物価上昇。
  3. 労働人口減少に伴う生産能力の低下。
  4. 生活の困窮に伴う消費縮小。
  5. 消費縮小に伴う経済の縮小。

日本の少子高齢化は周知の事実ですが、これは総人口と労働人口(現役世代)の減少につながります。日本円はドルと違って日本以外で使える国はありません。

そのため日本人が減るということは、すなわち日本円を欲しがる人が減るということです。

モノの価値も通貨の価値も、欲しがる人が多いほど価値が上がり、少ないほど価値は下がります。したがって人口減が進めば円の価値は下がります(円安)。

日本は世界中から食品や資源を輸入していますが、価値の下がった円で輸入するとなれば、円の価値がまだしも高い2019年現在よりも高い価格で輸入しなければなりません。

輸入のコストが上がれば、それは商品価格に反映されます。日本国内の物価は上昇し、国内には節約ムードが漂うでしょう。結果、日本の経済は縮小していくというわけです。

これでも「日本は安心だ」と言えるでしょうか。

このような状況にある国に対して、自分の将来を左右する資産形成のためのお金を投資するというのは、自殺行為とさえ言えます。

にもかかわらず、金融機関のラインナップには日本を投資対象とした商品がずらり。これが問題なのです。

本当に効率的な資産運用を目指すのであれば、日本国内以外にも目を向けて、より投資に適した国への投資を検討するべきでしょう。

「海外投資」を縮小・劣化させる業界構造

香港

もちろん日本の金融機関でも、海外に投資する商品を購入することはできます。しかし現在の日本の金融業界の構造は、海外投資を縮小・劣化させるものと言わざるを得ません。

以下ではその原因となっている圧倒的な選択肢の少なさと、限られた商品を劣化させる業界の構造について見ていきましょう。

世界に比べて圧倒的に少ない選択肢

みなさんは「ETF(Exchange Traded Funds)」という投資商品を知っているでしょうか。

日本語では「上場投資信託」と訳されており、非上場を前提とする投資信託とは違い、証券会社を通じて証券取引所に注文を出して買付や注文を行います。

最大の特徴はTOPIXや日経平均、ダウ平均株価といった「指数」に連動して運用が行われる点。専門家でなくとも値動きの要因がわかりやすいため、長期にわたる資産運用に適した金融商品とされています。

日本取引所グループのレポートによれば、2019年時点で東京証券取引所に上場しているETFは全部で230銘柄。この数字を見て「そんなにたくさんあるのか!」と思った人もいるかもしれませんが、それは勘違いです。

というのも、2017年の日本証券経済研究所のレポートによれば2016年11月末時点の世界のETFは4,791銘柄存在しているからです。日本ではそのうち約21分の1しか選択肢がないのです。

低コスト低リスクで不動産に投資ができる「REIT(不動産投資信託)」も、上場しているREITが世界全体で878銘柄ある中で、日本には60銘柄弱しかありません。

確かに世界の上場REIT市場において、日本は第2位の市場規模を誇ります。

しかし第1位のアメリカはその10倍近くの規模を誇っていることを考えると、やはり日本で資産形成を考える人にとっての選択肢は狭すぎると言うほかありません。

限られた商品を劣化させる業界の構造

高層ビル

このような状況に加えて、日本の金融業界の構造は限られた海外の投資商品を劣化させる性質を持っています。その理由は大きく2つ。

一つは商品規制による作り変えが必要だから、もう一つはコストがかさんでしまうからです。

海外の金融商品をそっくりそのまま日本国内に持ち込めるケースは、実は滅多にありません。たいていは何かしら日本の規制に引っかかるところがあり、それを日本のルールに合わせて作り変える必要があります。

この作り変えが商品のパフォーマンスアップにつながれば何の問題もありませんが、残念ながらたいていの場合はパフォーマンスの劣化につながるのです。

また海外の金融商品を日本に持ち込む際には以下のようなコストがかかります。

  • 作り変えのためのコスト
  • 外国語から日本語に翻訳するためのコスト
  • 日本の金融機関が仲介に入ることによるコスト

これらのコストは運用によって出た利益から差し引かれます。つまり投資家側の利回りを下げることでまかなわれるのです。

これによって利回りにして数%ものパフォーマンスの劣化につながっていると言われています。

劣化していない商品を見つける「目」と「鼻」が必要

このような状況に投資家が対応するためには、「劣化」していない海外投資商品を見つける「目」と「鼻」がなければなりません。

これは投資やお金の勉強を積み重ねなければ身につくものではないため、ある程度の時間と労力が必要になります。

顧客の資産を食い物にする「回転売買」

金融庁が問題視する「回転売買」

頭を下げるサラリーマン

2019年1月、愛知県に本社を置く証券業界準大手の代表格「東海東京証券」の会長が3月末の退任を発表しました。

この出来事は業界内で様々な憶測を呼びましたが、その一つが「金融庁から転売買についての指摘が入り、その責任をとって退任したのではないか」というものでした。

回転売買とは金融機関が金融商品の購入手数料を目的に、顧客に対して次々に新しい商品を勧める営業手法です。

日本では当たり前の慣行として横行していたやり方でしたが、近年金融庁は「顧客本位ではない」として監視を強化しており、その監視の網に東海東京証券画かかったのではないか、というわけです。

購入手数料を目的とする業界の悪慣習

不敵な笑みを浮かべる男性

「購入手数料ってそんなにかかるものなの?」と思う人もいるかもしれません。

三菱UFJ国際投信のレポートによれば、日本の投資信託の販売手数料は単純平均で2.79%、最も多いのが3.00%とされています。

もちろん、それに見合ったリターンがあればこの程度の手数料は問題にはなりません。

しかし、回転売買が行われるのであれば話は別です。

というのも東海東京証券に限らず、日本の金融機関では以下のような販売方法がとられることが珍しくないからです。

  1. 大手証券会社などが、金融商品が作る。
  2. 新商品を全国各店舗で一斉に販売を行う。
  3. 3〜6ヶ月で売上が落ちついてくると、その時の流行に応じて新たな商品が開発する。
  4. 再び新商品を販売していく(回転売買)。

結果、金融機関の営業マンの提案を鵜呑みにして商品を買い替え続けると、3〜6ヶ月のサイクルで3%程度の購入手数料がかかることになります。

100万円なら3万円、1,000万円なら30万円、1億円なら300万円です。

これが1年に2〜4回必要になるうえ、保有期間が短いのでほとんどの商品で解約手数料も発生します。したがって、よほど爆発的なパフォーマンスを発揮する商品でない限り、手数料が重なることで資産が目減りしていくのです。

一方この手法を取っていれば、金融機関は顧客の資産が殖えたかどうかに関係なく利益が上げられるので、短期のトレンドを意識した商品開発が多くなります。

その結果として、長期運用を前提とした商品の割合が少なくなっているのも、日本の金融商品の大きな問題の一つです。

このような損失を回避するためには、自分たちの利潤を追求する金融機関の窓口では商品を購入するのをやめ、自分の知識に基づいて投資を行えるようになる必要があります。

まとめ

決して、日本を悪く言うつもりではないですし、今後改善されて行ってよくなっていくことを願うばかりです。

しかしながら、日本の金融機関や金融商品は、投資初心者が投資をするに最適な環境あるとはお世辞にも言えない状況です。

長期で運用するのも難しく安定的な投資先の割合も低いとなると、老後の資産形成の難易度は跳ね上がってしまいます。

この問題を回避するためには、次の4つを自分の投資の方針に据える必要があります。

  1. 日本国内以外にも目を向けて、有力な外国への投資を検討する。
  2. 環境の良い海外の金融機関の利用も検討する。
  3. 「劣化」していない海外投資商品を探して購入する。
  4. 金融機関の窓口担当者の言いなりにならず、自分で判断できるようになる。

「これは私には難しい」そう思われたかもしれません。

しかし、「日本だけでなく海外にも投資する商品を選ぶ」というエッセンスの一部を取り入れるだけでも、最初の一歩としては十分です。

そこから先の具体的な方法に興味がある方は、この続きのシリーズで一緒に学んでまいりましょう。

【老後の資産形成特集08】海外投資はどこでするべき?英語は大丈夫?

老後の資産形成特集

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