海外投資をする際に、多くの方が注目されるのは利回りかと思いますが、投資判断には他にも色々な比較要素があります。

例えば人口、人口ピラミッド、治安、GDP成長率、地価の推移、民主主義国家か社会主義国家かというのも、立派な比較要素です。これらは投資の方針によっても変動するため、全てを把握することはできません

しかしだからと言ってこうした比較要素を一切気にせずに投資をしていいというわけでもありません。そこでここでは、どのような方針で投資をするにしても、最初に見ておくべき指標を2つ紹介します。

金融商品を選ぶ際はもちろん、不動産などその他の商品を見ていく際にも間違いなく参考になる指標ですので、ぜひとも知っておきましょう。

INDEX
  1. 経済自由度指数
  2. 国債信用格付
  3. 信用の高さと利回りの高さはトレードオフではない
  4. まとめ

経済自由度指数

ウォール街

一つ目の指標は経済自由度指数です。

これは米国の大手シンクタンク「ヘリテージ財団」と、世界的な影響力を持つ経済紙『ウォール・ストリートジャーナル』によって作成されている指標で、世界各国の経済や金融に関する12項目をもとに各国を100点満点で点数化したものです。

採点項目
  • 財産権の保護
  • 汚職の少なさ
  • 司法の有効性
  • 政府支出
  • 税負担
  • 財政の健全性
  • ビジネスの自由度
  • 労働の自由度
  • 通貨の自由度
  • 貿易の自由度
  • 投資の自由度
  • 金融の自由度

この指標は国家単位の指数なので、その国が投資に適しているかを判断する場合に使います。経済自由度指数は毎年発表されています。試しに2019年のランキングを見てみましょう。

順位 国名
1位 香港
2位 シンガポール
3位 ニュージーランド
4位 スイス
5位 ニュージーランド




12位 アメリカ合衆国
13位 オランダ
14位 デンマーク




30位 日本
31位 オーストリア




100位 中国
101位 パプア・ニューギニア

参考:ヘリテージ財団

2018年の世界GDPランキングはアメリカが1位、2位が中国で、そこから大きく離れて日本が3位でした。しかし経済自由度指数で見ると、アメリカは12位、日本は30位、中国に至っては100位となっています。

つまり、単に経済規模が大きければ投資に適しているというわけではないということです。

日本においては国の財政の健全性が要改善項目としてあげられていますが、中国の場合は汚職や司法の有効性、通貨の自由度などが改善するべき項目としてあげられています。

また共産主義国家は、政府の決定権が強大です。そのため、政府の方針が変わると国全体の状況まで大きく変わります。そうなれば投資商品の価値も、資本主義国家ではあり得ないような振れ幅で変動してしまいます。

経済自由度指数はこのような観点からも採点されているため、投資する国を選ぶ際の重要な指標になってくれるというわけです。

ちなみに、2019年版の経済自由度指数で1位を獲得した香港は、25年連続で世界一に君臨し続けています。資産運用の目的で香港を訪れる日本人が多いのは、このためです。

国債信用格付

ランキング

二つ目に紹介する指標は国債信用格付です。

これは世界最大手の信用格付会社S&P Global Ratings(スタンダード&プアーズ・レーティングス)、Moody’s(ムーディーズ)などによって作成されているもので、国債に対して行われる信用性の高さに応じたランク付けのことを指します。

信用格付のシェアはこの2社が90%を占めているため、この2社が公表している格付を見ておけば、その国の国債の信用度を測ることができます。

例えばS&P Global Ratingsが発表している、2019年の各国の国債(ソブリン債)の格付けは以下のようになっています。

国名 ランク(自国通貨長期)
日本 A+
アメリカ合衆国 AA+
中国 A+
シンガポール AAA
ルクセンブルク AAA
ベトナム BB
ロシア BBB

参考:S&P Global Ratings

信用性はAAAに近づくほど高くなり、B→Cとアルファベットが進むに連れて低くなります。

金融商品として国債がやりとりされる場合、それらを提供する金融機関側と購入する投資家側の情報格差をなくすための、わかりやすい指標の1つとなります。

なお、信用格付は企業単位でも行われています。例えば三井住友銀行がMoody’sによって与えられているランク(長期)はA1、みずほ銀行も同じくA1で、三菱UFJ銀行もA1と、かろうじてAランク台にとどまっているにすぎません。

これは現時点では、資産を預けておいても心配ないといったレベルです。「日本の銀行に預けておけば絶対安心」と考えている人は少なくありませんが、実は「絶対安心」とは決して言えないのが現状なのです。

金融商品を購入する際は、最終的に国だけでなく企業単位・商品単位で判断することになるので、こうした信用格付をあらかじめ把握しておく必要があります。

信用の高さと利回りの高さはトレードオフではない

天秤

「要は、信用力が高い商品は利回りが低いってことですよね?」

「8%くらいの利回りを出そうと思えば、経済自由指数の低い国や信用格付の低い企業でリスクをとって投資をしなきゃいけないんですよね?」

経済自由度指数や国債信用格付についての話をすると、決まってこうした質問を受けます。確かに信用と利回りにはある程度の関連性があります。

例えば2018年8月をきっかけに破綻寸前の様相を呈しているトルコの通貨リラは、完全に価値がなくなってしまうリスクもあるものの、一方で経済が持ち直した場合に利回りが非常に高くなる可能性も秘めています。

しかし、常に信用と利回りがトレードオフの関係にあるわけではありません。

経済自由度指数1位の香港や、オランダやマン島など国債信用格付けAAAの国であっても、日本の金融商品に比べて圧倒的に利回りが高いというものはいくらでも存在するからです。

例えばアメリカは日本よりも信用格付が高くなっていますが、アメリカ国債は日本の国債よりも利回りの高い金融商品です。

  • 日本10年国債:利回り-0.063% 格付け:A1(Moody’s)
  • アメリカ10年国債:利回り2.474% 格付け:Aaa(Moody’s)

つまり、わざわざハイリスクを取らなくても、ある程度の利回りは確保できるということです。

確かに利回り30%以上のハイリターンな投資を目指すのであれば、信用格付下位クラスのハイリスク案件を選ぶ必要があります。

しかし利回り10%以内のバランスの良い投資を目指すのであれば、日本よりも信用の高い国の国債、日本企業よりも盤石な海外企業株など、堅実かつ一定上の利回りを確保できる選択肢がいくらでもあるのです。

まとめ

  • 経済自由度指数
  • 国債信用格付

この2つの指標を把握していれば、どの国の金融商品を選ぶべきかという判断が格段にしやすくなります。

それさえ決まれば、あとは金融商品ごとの仕組み・手数料・保証内容・日本語対応の有無・積立か一括か・どこに投資先するのかなど、自身の方針に照らし合わせて細かく掘り下げていけばいい、ということになります。

また「経済自由度指数」「国債信用格付」を見れば、必ずしも日本が投資に適している国ではないということもわかるはず。

それがわかれば、「海外投資ってなんとなく不安」と考えるよりも「国内だけに投資している方が危ない」ということにも気づけます。

漠然とした不安が原因で海外投資に一歩踏み出せなかった人は、これを機に前進してみてはいかがでしょうか。