
自動車保険や生命保険といった他の保険に比べて、火災保険は適用率が圧倒的に低いことをご存知でしょうか。
火事での補償はもちろん、さまざまな災害や事故などのリスクに備えることができるのが火災保険です。
しかし、実際には被害にあってもほとんどが使われていません。
「なぜそのようなことになっているのか?そもそも本当に適用率は低いのか?」
他の保険と比較、検証してみるとその理由が明確になってきました。
もしかするとあなたの火災保険も眠ったままになっているかもしれません。ぜひ最後までチェックしてください!
徹底比較!火災保険と他保険の適用率の違い
火災保険の適用率は他の保険と比べ低くなっています。では具体的にどれくらいの違いがあるのでしょうか。
ここではまず、保険として代表的な自動車保険と生命保険の適用率を見てみていきましょう。
自動車保険は適用率が100%を超える
自動車保険(人身)申請率 | |
交通事故死亡・負傷者数(※1) | 622,757人 |
対人賠償・人身傷害支払件数(※2) | 717,902件 |
適用率 | 115% |
(データ引用)※1警察庁交通局「平成28年における交通事故の発生概況」※2損害保険料算出機構 2016年度版自動車保険統計
損害保険の代表的な保険のひとつである自動車保険は、適用率が100%を超える結果となりました。今回の検証では件数の重複を防ぐため、搭乗者傷害補償の件数は含んでいません。この補償を含めるとさらに適用率は高くなります。
適用率の高い理由として、自動車事故の損害が「いつ・どこで・どれくらいの被害になったのか」がわかりやすい点があります。
- 運転中の事故がほとんどで損害を受けたことがすぐにわかる
- 事故にあった場合の損害が自分や他人の身体や命に関わる
- 事故件数が多く保険の使用が当たり前
このように、損害を受ける場面がほぼ運転中であることや、他人を巻き込む事故となること、身体に影響を及ぼす事故になることなどから当事者意識も高くなります。また、事故に遭った場合に保険を使うという認識も強いことが適用率が高い要因です。
生命保険の適用率は約80%
生命保険適用率 | |
2016年死亡者数(※3) | 130 万 7748 人 |
2016年死亡保険金支払件数(※4) | 約102万件 |
適用率 | 78% |
(データ引用)
※3厚生労働省 2016年人口動態統計より
※4一般社団法人生命保険協会 生命保険の動向2018年版
つづいて生命保険の場合を見ていきましょう。
生命保険は加入率が最も高い保険でその加入率は80%を超えます。同様に保険の適用率も79.8%と高い結果となりました。
適用率の高い理由としては、
- 命に関わる保険であり、保険金が支払われる場合が特定されている
- 身近な保険として広く知られ認知度が高い
といった点が主な理由としてあげられます。
家族が亡くなった場合の保険金は、その後の家族の経済的な支えとなることもあり、重要な役目を持ちます。
また、自動車保険同様に認知度も高く、身近な保険であることから使用率も高いようです。
火災保険の適用率は低い!
それでは「使われていない」と言われる火災保険は、他の保険にくらべてどれくらいの割合になるのでしょうか。
ここでは火災保険の主な補償内容である火災補償の場合と、支払件数の最も多い自然災害(水災)を件数と支払額をもとに検証しました。
火事でも火災保険の支払い件数は意外に少ない
火事が原因の火災保険適用率 | |
住宅火災件数(※5) | 11,354件 |
火災保険支払件数(※6) | 6,797件 |
適用率 | 59.8% |
(データ引用)
※5消防庁「2016年(1月~12月)における火災の状況」
※62016年 火災保険概況 損害保険料率算出機構
まず、火災事故の場合の適用事例です。
消防庁の発表した火災事故件数にくらべて、火災保険の適用率は59.8%と約6割に留まりました。意外にも火事での損害であっても保険金が支払われていないのです。
自然災害(水災)の支払率はわずか4%
水災が原因の火災保険支払率 | |
家屋・家財の水害被害額(※7) | 約1123億円 |
水災支払金額 (※8) | 約46億円 |
支払率 | 4.1% |
(データ引用)
※7国土交通省 平成28年水害統計調査 資産等別一般資産等被害額
※82016年 火災保険概況 損害保険料率算出機構
つづいて水災の保険料支払い率です。その支払率はわずか4.1%ととても低いことがわかります。
※火災保険では自然災害のうち「風災・ひょう災、雪災、水災」と大きく3つに分類されます。それぞれの詳細な件数データがなかったため、ここでは火災保険の水災による支払い金額と、水害の被害額で比較しています。
※国土交通省の調査対象となる水害は「洪水、内水、高潮、津波、土石流、地すべり、急傾斜地崩壊等」です。2016年は津波による被害はありませんでしたので、水災で補償される内容となります。
火災保険の支払率はなぜ低いのか
比較してみると、火災保険の支払率が少ないことがわかりました。
ではなぜ、そんなに低いのでしょうか。具体的な理由をあげて解説していきます。
火災保険では火事であっても支払われない場合がある
まず、火災事故で保険金が支払われない主な原因として考えられることは下記の2点です。
- 火災保険に加入していない
- 防げた可能性が高く、不注意などによる重大な過失が原因だった
火災保険の加入率については、2015年時点で持ち家世帯の82%が加入しており加入率は高くなっています。
しかし、賃貸の場合の加入率は不明で、任意保険という性質と火事などの事故になる可能性が低いという考えから加入されない方もいるようです。
つぎに「重大な過失」です。通常の生活をしていれば防げる可能性の高い不注意などが原因による事故のことを言います。「寝タバコ」による火事が該当するケースとして多いようです。
ちなみに、2016年の火事の出火原因では2位がタバコの火の不始末が原因による火事でした。
水災の補償をつけてるのは持ち家世帯の約半数のみ
今回紹介したなかで、最も支払率が低かったのが水災でした。要因として以下の点があげられます。
- そもそも補償プランに水災補償をつけていない
- 水災被害で火災保険が適用されるという認識が薄い
- 水災の補償範囲が細かくわかりづらい
水災の付帯率は2015年時点で火災保険契約の66%でした。火災保険の付帯率が持ち家の82%でしたので、火災保険未加入も含めた持ち家全体からすると52%となり、約半数が水災の補償をつけていないことになります。
また水災では、他の補償より補償範囲に制限が多いことも支払い金額が少ない理由です。火災保険の水災補償では、床下浸水や損害の割合が全体の30%以下の場合などは支払われない場合があります。
保険会社によって条件は違いますが制限がつくことがほとんどです。
さらに自動車保険や生命保険とくらべて事故に遭う機会が少ないこともあげられます。
火災保険に加入後、何年も入りっぱなしになっていると補償内容を忘れてしまっても不思議ではないですよね。
せっかく水災の補償内容がついていても、請求をしなければ保険金は支払われません。
そういった水災補償に対する認識が薄いことも要因のひとつです。
火災保険で使われていない補償はまだあるかも!
ここまで、火災保険が使われていない理由を、適用事例をもとに紹介しました。
一口に火災保険といってもその補償範囲は広く、火事以外のさまざまなリスクからも住まいを守ることができます。
下記の記事では、さらに詳しい補償内容や、申告漏れを防ぐ方法についてまとめました。こちらもぜひチェックしてみてください。