米中貿易摩擦など世界経済に対する不安が高まる中で金投資の人気が高まっています。2019年10月時点の国内金価格の最高値は5,282円と、10年前の2倍近くまで上昇しました。
この記事では、金投資の人気が高まっている理由と投資方法について解説します。
金の魅力と用途
金は希少性と美しさから、世界各国で通貨として使用されたことがあります。ですから、今でも世界共通の通貨として認識されています、また、金自体に価値があります。国家が破綻しても紙幣のように紙切れにならないので、安心して保有できるのです。
金の主な用途は、以下の3つです。
- 宝飾
- 投資
- 電子部品
金は、宝飾や投資のほかに、電子部品への事業投資ニーズがあります。耐性や導電性に優れ、スマートフォンやパソコンにも不可欠な存在だからです。
金の供給と需要はどうなっている?
金の供給と需要はどのようになっているのでしょうか。まずは、2018年の金の供給量から見ていきましょう。
2018年の金の供給量は4,502トン。主に鉱山生産とスクラップに分けられます。
2018年の鉱山生産量は前年比2%増の3,332トン。原動力となったのはインドネシアと米国の大幅な増産でした。とくにインドネシアのグラスベルグ鉱山の品位が向上し、生産量が増加しました。※2018年のインドネシアは世界7位の鉱山生産量ですが、グラスベルグ鉱山の埋蔵量は世界2位と言われています。
次に金の需要量について確認しましょう。
2018年の金の現物需要は3,980トン。宝飾加工需要は前年比4%減の2,129トンにとどまりました。北米の大幅な需要増加が欧州とアジアの需要減少によって相殺されたからです。
一方、工業製品の金使用量は3%増加の391トン。4年ぶりの高水準となりました。
2019年以降の金の需要はどうなる!?
全体では、2018年はやや供給が多くなりましたが、専門家の間では、2019年以降は需要が供給を上回る可能性が高いという予測を立てています。その理由は、公的部門正味購入料はここ10年で最高水準となるほどに伸び続けており、今後ますますその傾向は強くなっていく見込みであるからです。
2018年の段階で、公的部門の正味購入量が536トンと、今世紀2番目の高水準となりました。新興国が金の購入を続けたことが背景です。2018年にもっとも金を買ったのはロシア。274トンの金を購入して、国の保有量として初めて2,000トンを超えました。
ウクライナ問題やシリアへのロシア関与などで米国からの経済制裁が強化されたことで、ドル資産の凍結と制裁をリスクヘッジする必要があったからです。
また、カザフスタンでも中央銀行が採掘された金を買い続けています。自国通貨はもちろん、米ドル含めたその他すべての資産よりも換金性の高い金の安定性を採用しているのです。世界情勢が安定な今、途上国を中心にこの傾向は今後も続くものと思われます。
このように、2018年はロシアを筆頭に、各国の中央銀行(公的部門)が保有する金は大きく増加し、合計すると2018年11月末で約3万3,695トン。地上在庫約19万トンの約17.7%に相当と近年最も高い割合になりました。
各国の中央銀行により金の買いは、2019年になってもますます盛んになっています。途上国だけでなく、アメリカやドイツ、イタリアやフランス、先進国も買い増しをつづけているからです。
また、中国は2019年6月に過去最大級の月間購入量を記録しています。また、自国でも金を採掘しておりますが、これらは一切輸出をしておりませんので、自国で保有していると見て良いでしょう。
中央銀行の動きが金相場に与える影響は大きく、新興国の買いが続けば金価格の大きな上昇要因になります。
金投資が注目を集めている理由
繰り返しになりますが、中央銀行が金を積極的に買っているのは、米中貿易摩擦やEU離脱問題など世界情勢が不透明になっているからです。「有事の金」と言われる現物資産である金に、各国が国家財政の安定を目的として注目しているのです。
金は利息がつかないため、保有するだけでは資産が増えません。しかし金は「有事の金」はいざという時には実物資産としての強みを発揮します。株や債券など他の資産の下落をカバーして上昇するからです
2008年の金融危機(リーマンショック)の時も、金は安定した価格をキープし、安全資産の評価を高めました。2019年時点も、米中貿易摩擦などによる世界経済に対する不安の高まりから金価格は上昇しています。
また、金価格は米ドルと逆の値動きをする傾向にあります。つまり、
- 米ドル安 金価格上昇
- 米ドル高 金価格が下落
となります。金投資をする時は、米ドルの強さを見極めることも大切です。
このような理由から、今金は大変注目を集めており、ここ10年間で2倍の価格をつけているのです。
金投資のメリット
それでは、金投資のメリットについて見ていきましょう。
信用リスクがない
株式や債券、預貯金などの金融資産の場合、国や企業などの発行体が破綻するリスク(信用リスク)があります。たとえば企業が倒産したら、その企業が発行した株式や債券の価値はなくなるのです。
一方、金は「実物資産」なので無価値になることはありません。金には発行体が存在しないからです。発行体が破綻する信用リスクとは無縁で、安全性や信頼性が抜群に高いのです。
インフレに強い
金はインフレに強い資産です。インフレとはモノの価値が上がり、現金の価値が下がることです。金は現物資産なので、インフレになると価格が上がる傾向にあります。また、戦争や紛争が起こったときも「有事の金」として人気が高まります。金を保有することで、現金や株式など保有している資産の目減りを防げるのです。
価値が世界共通で換金しやすい
金は通貨としての側面もあるので、他の実物資産に比べて換金しやすいといえます。
たとえば不動産の場合、買う時はともかく、売るときに困る時があります。不動産価格が下落しているときや不景気の時は、買い手が容易に見つからないのです。
一方、金の価値は世界共通で認められているので、買い手が見つかりやすいというメリットがあるのです。
金投資のデメリット
さまざまなメリットがある金投資ですが、以下のようなデメリットもあります。
配当や利子がない
株や債券、預貯金は利息や配当がでますが、金はそのような利益を得ることができません。金価格が上がった時に売却するしかないのです。また、金は預貯金のように元本保証ではありません。金価格が下がれば元本割れする恐れもあります。
紛失や盗難リスクがある
金の現物を保有する場合は、紛失や盗難リスクがあります。そのため、保管場所や費用が必要です。また、金を保有するコストだけでなく、購入や売却するときの手数料がかかります。
金投資の方法
金に投資するには、主に次の4つの方法があります。
金地金
特徴
金の延べ棒など、保存しやすい形に固めたもの。インゴットとも呼ばれます。金現物の輝きを手元で実感できますが、購入金額が数十万~数百万円かかります。また、安全な保管場所の確保が必要です。
どういう人向き?(投資スタイル)
500グラム未満の場合は、バーチャージ(手数料)がかかります。500グラムの価格は、約284万円(2019年11月19日時点)。まとまった資金を投資する人向きです。
また、金地金の売却益は総合課税ですが、5年以上保有した場合、譲渡益を2分の1に減額して計算することが認められています。金地金を長期保有すると税制面でのメリットもあるのです
どこで買える?
金地金は、金属メーカーや地金商・銀行・商社などで購入できます。購入価格と売却価格の差が売買手数料で、売買手数料は1~2%程度と販売会社によって異なります。
純金積立
特徴
毎月一定額ずつ積み立てで金を購入します。一度積み立ての設定をすると、自動的に投資を続けることが可能です。一定の量になれば現物の金に引き出せるケースもあります。
買い付けた金は、取り扱い会社が保管(保護預り)してくれるので安心です。
どういう人向き?
積立購入することで、高値づかみのリスクを避けることができます。取扱会社によっても異なりますが、月1,000~3,000円から投資できるので、少額から金の定額投資をしたい人におすすめです。
どこで買える?
貴金属商や商社・銀行・証券会社などで純金積立できます。ただし、数百円から数千円程度の口座管理料に加え、購入金額の1.5~5%程度の購入手数料がかかります。
金貨
特徴
外国政府が発行する投資用の金貨。メイプルリーフ金貨(カナダ)、ウィーン金貨ハーモニー(オーストリア)、カンガルー金貨(オーストラリア)などが有名です。デザイン性が高いので、観賞用としても楽しめます。
ただし、金貨にキズをつけてしまうと、買収価格が下がるので注意が必要です。
どういう人向き?
2万円程度から購入できます。金地金などと比べて、少額から金投資したい人におすすめです。
どこで買える?
地金商、貴金属商、コインショップ、商社などで購入できます。販売価格と買取価格の差額(スプレッド)がコストになります。スプレッドは7~11%と販売会社によって異なります。
金の投資信託やETF(上場投資信託)
特徴
金価格に連動するETF(上場投資信託)で、株式と同じように市場で売買ができます。換金性が高く、金のバー(現物)に転換できるETFもあります。
どういう人向き?
売買方法が株式と同じなので、証券会社に口座がある人は気軽に購入できます。銘柄にもよりますが、1口4,000円程度から買えます。
どこで買える?
金ETFは証券会社で購入できます。株式市場に上場している銘柄であれば、すべての証券会社で購入可能です。コストには、信託報酬と売買手数料があります。信託報酬は年率0.4%程度、売買手数料は証券会社や購入金額によって異なりますが、ネット証券などでは1%以下の手数料で購入可能です。
金を扱う業者への事業投資
特徴
金の採掘業者・卸業者・販売店などを行う企業へ出資する方法です。直接金を保有するわけではありませんが、良い投資先に恵まれれば、シンプルに金を保有するよりも遥かに大きな利益が出ます。反面、競争力のない企業に投資してしまったり、投資詐欺に合ってしまった場合は、大きな損失を抱える場合があります。
どういう人向き?
金の価格上昇以上に大きなリターンを得たい人。資産を増やしたい方。逆に利益を挙げずとも資産を保全したいという方には向かないでしょう。金への投資ブームに乗っかりたいという方にはおすすめです。
どこで買える?
各事業者がそれぞれ募集する形になります。
まとめ
今回は、金投資の方法とメリット・デメリットについて解説しました。金は利息や配当などがつきませんが、有事の金や安全資産としての特徴があります。紛争などが起きて株式市場が下落しても金は上昇する傾向にあるからです。
預貯金や株式の中に金を組み入れ、ポートフォリオ(資産の組み合わせ)の安定を図ることができます。金に投資する方法は、主に次の5つです。
- 金地金
- 純金積立
- 金貨
- 金ETF
- 金を扱う企業への投資
資金量や投資目的によって最適な投資法を選び、資産保全としての金投資をするようにしましょう。