
手元にあるまとまったお金を投資に回そうと考えたとき、悩んでしまうのが「一度にまとめて投資してしまうか(一括投資)」「あえて少しずつ投資するか(積立投資)」ではないでしょうか。
このうち一括投資には「上級者がやるもの」という定説があります。
しかしやり方さえ間違えなければ、一括投資は上級者でなくても十分成果を出せる投資手法です。
むしろ一括投資にしかないメリットもたくさんあるので、まとまったお金が手元にある場合は、一括投資をしたほうが高いパフォーマンスを出せる可能性が高いんです。
ここでは一括投資の3つのメリットを解説するとともに、知っておくべき2つのデメリットについても解説します。
一括投資のメリット
積立投資に比べてリターンが大きい | 10年単位の長期投資で、かつ投資先を間違えなければ、統計的にも一括投資のほうが儲かる。 |
原則、追加の予算が必要ない | これから入ってくるお金を自由に使うことができるので、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上がる。 |
手元のお金を早く運用に回せる | 早い段階でまとまった金額の投資ができるので、同額の積立投資よりも儲けが出やすい。 |
一括投資のメリットは上表の3つ。以下ではそれぞれについて、グラフなどを使いながら説明していきます。
積立投資に比べてリターンが大きい
「一括投資は上級者向け」は本当か?長期投資の視点で考えてみたで詳しく解説しているように、一括投資は積立投資に比べて大きなリターンが期待できることがわかっています。
投資顧問会社「アライアンス・バーンスタイン」は、手元にあるまとまったお金を一括投資に回して10年間運用した場合と、そのお金をあえて小分けにして積立投資をした場合の比較をしました。
その結果、10年後の資産額は最大値、上位25%、下位25%、最小値いずれにおいても、一括投資のほうが高かったのです。
原則、追加の予算が必要ない
一括投資は、文字通り一括で投資をするため、そのあと資金を追加する必要がありません。
もちろん「運用し続ければ老後資金を作ることができる金額」であることが大前提ですが、それさえ満たしていれば、節約をして資金を確保しなくてOKです。
したがって、今後入ってくる給料やボーナスについては、自由に使うことができるのです。
これは想像以上にQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を引き上げてくれます。
これまで投資の資金のために毎月3万円を節約していたとしたら、そのお金でとびきり美味しいものが食べられます。
毎月5万円だったら、もっと快適な賃貸に引っ越すこともできるでしょう。
「そんなに贅沢して大丈夫なのか?」と思うかもしれません。
しかし一括投資で成果を出していれば、今贅沢をしても老後資金は確保できます。
だから何の問題もありません。
一括投資における「原則、追加の予算が必要ない」というメリットは、このようにQOLをアップさせる効果があるのです。
手元のお金を早く運用に回せる
手元の600万円を一括投資する場合と、600万円をあえて毎月5万円の積立投資していく場合との最も大きな違いは、機会損失の有無です。
資産運用はよく「お金に働いてもらうこと」と表現されます。
手元の600万円を一括投資するということは、600万円のお金全員が初めから働いてくれるということです。
いっぽう、600万円をあえて毎月5万円の積立投資していくということは、はじめの月は600万円のうちたった5万円のお金しか働いてないということです。
この違いがもたらす最終的な運用成果の差は無視できません。以下のグラフと表をご覧ください。
投資方法 | 年利5%で30年後まで運用した結果 |
600万円を一括投資し、30年後まで運用する。 | 約2,530万円 |
毎月5万円を10年間積立投資したあと、その後20年間運用を続ける。 | 約2,010万円 |
一括投資と積立投資のグラフが一度も交わることなく、最終的には500万円以上もの差をつけて一括投資が圧勝しています。
これが機会損失のもたらす影響です。
一括投資のメリットは、手元のお金をサボらせず、きっちり働いてもらえる点にもあるのです。
一括投資のデメリット
まとまったお金がないと旨味は小さい | なるべく大きな金額を投資しないと、一括投資のメリットは小さくなる。 |
「失敗」した場合の損失が大きい | 投資金額が大きいので、たった1%の損でも損失額が大きくなる。 |
3つのメリットに対し、一括投資のデメリットは上表の2つです。
以下でより詳しく見ていきましょう。
まとまったお金がないと旨味は小さい
当然ですが、一括投資は100万円より300万円、300万円より500万円と、投資金額が大きくなるほど旨味も大きくなります。
逆に言えば金額が小さくなるほど、旨味が小さくなってしまうのです。
以下のグラフは100万円、300万円、500万円それぞれを一括投資して、その後30年間、年利5%で運用した場合の資産額の推移と、30年後の結果をまとめたものです。
投資金額 | 年利5%で30年後まで運用した場合 |
100万円 | 約430万円(+330万円) |
300万円 | 約1,290万円(+990万円) |
500万円 | 約2,160万円(+1,660万円) |
スタート時点では100万円と500万円の差は400万円ですが、30年後には1,700万円以上に開いています。
所感として、余剰資金が300万円以下である場合は、無理に一括投資はせず、積立投資を選択肢に入れておくのもよいかと思います。
投資に回してもいい資金が500万円以上ある場合は、一括投資を積極的に検討していくといいでしょう。
したがって、一括投資をするのであれば、無理のない範囲で、なるべく大きな金額を準備することをおすすめします。
「失敗」した場合の損失が大きい
コツコツと投資金額を大きくしていく積立投資に比べ、一括投資は一度に多額の投資をします。
すると資産の価値が1%減ったときの損失額が、どうしても大きくなってしまいます。
例えば総額50万円を積み立てたときに1%の損失が出ても、金額にすれば5,000円程度にすぎません。
しかし500万円積み立てていれば、1%の損失が5万円です。
こんなふうに言うと「やっぱり一括投資はリスクが高いんだ!」と思うかもしれません。
しかし【投資の基礎シリーズ04】初心者にぴったり!投資のリスクを抑える「分散投資」のすすめで解説したように、リスクを抑える分散投資には3つのルールがあります。すなわち、
- 資産(投資対象)を分散して投資する。
- 地域を分散して投資する。
- 時間(時期)を分散して投資する。
の3つです。
一括投資はこのうち「時間(時期)を分散して投資する」をしないというだけで、資産(投資対象)と地域はきっちりと分散します。
そのため常識の範囲を超えてリスクが高くなることはないのです。
これについては「老後資金のための一括投資」シリーズの最後に記事、一括投資でもリスクは抑えられる!手堅く、大きく勝つための絶対条件とは?で詳しく解説しますが、一括投資で失敗した場合のリスクを過度に恐れる必要はありません。
まとめ
こうして一括投資のメリットとデメリットを見てみると、メリットのほうが大きく、デメリットは投資の仕方によって十分カバーできることがわかります。
手元にあるまとまったお金、具体的には500万円以上を投資に回すのであれば、一括投資が正解だと言えるでしょう。
とりわけ、「老後資金のための一括投資」シリーズの次の記事、あなたは当てはまる?積立投資より一括投資が向いている人4つのタイプに当てはまる人になると、これらのメリットが最大化されます。
老後資金を準備するにあたって、一括投資に興味があるという人は、ぜひ次の記事にも目を通してみてください。