こちらの記事では、投資信託とその歴史についてお話します。
2019年6月3日に金融庁から”将来、年金給付額が下がるから個人で資産形成と貯蓄をしておくように”という内容の報告書が公表されました。
報告書に書かれているように、これからの時代には個人でも投資活動をして貯蓄を増やさなければなりません。
しかし、これまで投資をしたことがない多くの人にとっては、どんな方法で資産を増やしていけばいいのかわからないものだと思います。
そこでいま、注目されている資産運用法の1つが投資信託(とうししんたく)です。
投資信託は専門知識がなくても、投資活動に参加できる、とても優れた仕組みです。
現在投資信託の購入を検討している方や、まだ検討中の方も、投資信託が誕生した理由を知っておくことで、商品についての理解や判断に役立てることができます。
そこで、この記事では、
「そもそも投資信託ってどんな仕組みなの?」
「投資信託は何の目的でつくられたものなの?」
以上のような疑問を持っているあなたへ向けて、投資信託の誕生から現在までの歴史と仕組みについて紹介していきます。
具体的に紹介する内容は以下ものもです。
- そもそも投資信託とは?
- 投資信託が誕生した理由
- アメリカの投資信託の歴史
- 日本の投資信託の歴史
この記事は5分くらいでカンタンに読めて、投資信託の歴史や、つくられた目的について十分に知ることができますので、ぜひご一読ください。
そもそも投資信託とは
投資信託とは、結論から言うと、不特定多数の人から集めた資金を一つにまとめて、投資の専門家である運用会社に運用させ、得た利益を出資した人たちに分配する仕組みのことです。
投資信託では、集めた資金をどのような対象に投資するかは、それぞれの投資信託の運用会社の方針に基づき専門家が判断します。
投資信託の商品購入後に、専門家たちの運用がうまく行って利益を得られることもあれば、反対に運用がうまくいかずに投資した額を下回って、損をすることもあります。
投資信託では、自分が持っている資金で投資商品を購入させて、専門家という他人に運用させますが、生じた損益はすべて商品を購入した投資家が背負うことになります。
投資信託は、銀行の預金などとはちがい、元本が保証されている金融商品ではないのです。
投資のために使用するお金のこと
日本国内の投資信託の市場規模は年々増加しています。
投資信託の純資産額の合計は、2000年には53.1兆円、2009年には95.2兆円となっていますが、2019年には214.3兆円となっており、年を追うごとに増加していっていることが分かります。(出典:投資信託協会「投資信託の主要統計ファクトブック」)
次から、なぜこの投資信託という仕組みが生み出されてたのか、その歴史を紹介してきますね。
投資信託が誕生した理由
ここから、投資信託が誕生した理由を、歴史を追って紹介していきます。
具体的には、以下の内容です。
- 中産階級の投資家が大資本家と同じくらい利益を出すため
- 外国への投資に個人が参加できるようにするため
それでは、順番に紹介していきますね。
中産階級の投資家が大資本家と同じくらい利益を出すため
投資信託が誕生した理由は、大金を所持していない中産階級の投資家が、大資本家と同じくらい大きな利益を出すためです。
世界初の投資信託は、1868年のイギリスで創設された「The Foreign and Colonial Government Trust(フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト)」(以下トラストと呼ぶ)だとされています。
世界で最初の投資信託が何かについては諸説あります。
1863年にイギリスで誕生した
- International Financial Society of London(インターナショナル・ファイナンシャル・ソサエティ・オブ・ロンドン)
または、
- London Financial Association(ロンドン・ファイナンシャル・アソシエーション)
以上のいずれかが最初に設立された投資信託なのではないかという意見も存在しています。
このトラストが設立当初に作成された目論見書には以下のような文章が記載されています。
「このトラストの目的は、中流階級の投資家にも大資本家と同様な利益を享受できるようにすることにある」
この一文は当時非常に画期的なものでした。
当時19世紀後半では、証券投資ができるのは限られた大資本家のみでした。
しかし、1868年にトラストが誕生したことにより、中流階級の人々が投資に参加する機会ができたのです。
世界初の投資信託であるトラストの目的には、外国への投資に個人が参加できるようにするためというものがありました。
この点について、次からくわしく解説していきますね。
外国への投資に個人が参加できるようにするため
世界で最初に設立された投資信託であるThe Foreign and Colonial Government Trust(以下トラストと呼ぶ)の目的には、外国への投資に個人が参加できるようにするためというものがありました。
イギリスからの投資を受けた国は、19世紀後半以降、大きく経済成長をして発展していくことになります。
イギリスの中流階級から集められた資金が、外国の発展に大きく貢献することになったのです。
ちなみにこのトラストは、創設から151年経ったいまも運用が継続されています。
トラスト設立当初の19世紀後半には、政府債などの「債券」が主要な投資対象でした。
国や企業が投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券
一方、現在では企業が発行している「株式」が主要な投資対象になっています。
企業が事業に必要な資金を調達するために、発行しているもの
投資家は株式を買って企業に事業資金を提供することで、利益の一部を受け取る権利を得る
イギリスで誕生した投資信託は、アメリカに輸入され発展することになります。
次から、アメリカの投資信託の発展の歴史を紹介していきますね。
アメリカの投資信託の歴史
ここから、アメリカの投資信託の歴史を紹介してきます。
投資信託の仕組みは、第一次世界大戦の終戦後に当たる1920年代にアメリカに輸入されました。
この時代に、アメリカで中流階級が投資信託を購入する文化が発展したのです。
中流階級の国民が投資信託を購入する文化が発展した背景を知っていいただくために、まず投資信託が根付き始めた1920年代のアメリカ社会とはどのようなものだったのか、カンタンに紹介してきます。
1920年代のアメリカは、急激な経済成長によって「狂騒の20年代」といわれるほど金銭的・物質的に豊かな国になっていました。
また、当時のアメリカは、世界最大の経済大国となっています。
この時代のアメリカの国民は、自動車やラジオなど、一般国民がそれまで手に入れることができなかった高価な道具を日用品として使えるくらいに豊かになっていました。
多くの国民が生活に余裕のある「中流階級」として、多くのお金と物を消費するようになったのです。
当時のアメリカ社会の豊かさは、例えるなら1980年代のバブル期の日本をイメージすればよいかと思います。
以上が、投資信託が根付き始めた1920年代のアメリカ社会の状況です。
この時代のアメリカでは、お金に余裕ができた中流階級の人たちが投資についても関心を持ち、積極的に投資信託を購入するようになったのです。
ここまで、1920年代のアメリカでは中流階級による投資信託の購入が根付いたことを紹介しました。
この時代のアメリカで、現在でも取引されている多様な投資信託の商品が開発されるようになりました。
次からは、我が国日本では、どのように投資信託が発展していったのかを紹介していきます。
日本の投資信託の歴史
ここから、日本の投資信託の歴史を紹介していきます。
日本の投資信託の発展のきっかけは、一般的に見ると1951年に施工された証券投資信託法(後の投資信託法)の誕生からと言われています。
証券投資信託法は、太平洋戦争終戦直後の落ち込んだ国内経済の復興資金を、民間人から調達しようという理由からつくられました。
この法律が制定されたことによって、戦前まで財閥が独占していた日本の投資市場に民間人が参入できるようになったのです。
一族で、ある分野の企業を独占して経営している団体のこと
戦前の日本では三井、三菱、安田、住友などが有名
証券投資信託法の施行以降は、市場が停滞するたびに投資信託が市場活性化の有効な手段として利用されていきました。
また、証券投資信託法の制定と同時期に起きた朝鮮戦争によって、投資市場の民主化の流れは加速するようになります。
朝鮮半島で戦争をしているアメリカ軍が物資調達のため、日本に各種の物資製造を大量発注したことで国内経済は復興に向かい、投資をするだけの余裕が生まれたのです。
この朝鮮戦争の特需発生以降に、日本では民間人が気軽に投資ができるようになります。
経済復興を果たして、高い経済成長を実現していた1970年代には、大蔵省(現財務省)令によって、投資信託を利用して海外への投資をすることが解禁されました。
このころ投資信託は、1973年に日本の為替市場が変動相場制に変わったことによる為替リスクの回避にも活用されるようになりました。
日本が世界トップクラスの経済的繁栄を果たした1980年代には、株式市場も活発になり、投資信託の残高も10年間の間に、約10倍の58兆円にも上るようになりました。
しかし、1980年代は証券会社によって投資信託が悪用されたケースも多かった時代だったのです。
1980年には、高い経済成長を果たす中で発生した税収不足を補うために「中期国債ファンド」が誕生します。
かつて日本に存在した、中期国債を1円以上1円単位で購入できる投資信託
元本割れしないことを重視していた
※中期国債とは償還期間が1年超5年以下の国債のこと
※ファンドは、投資家や富裕層から集めた資金を運用する投資のプロのこと
この国策によってつくられた中期国債ファンドは、売却すれば多額の手数料を手に入れることができました。
中期国債ファンドの「多額の手数料が手に入る」という性質に目をつけた証券会社などの金融機関が、自分たちが手数料を稼ぐために投資信託の設定を乱発するようになりました。
やがて金融機関は、手数料を稼ぐだけでなく、運用していたが損失を出した株式を自社で運用しているファンドに投入するようになりました。
投資信託の購入者にとって、ファンドに運用益を出してもらい、利益を還元することを求めています。
なので、自分たちの目の見えないところで損失を出した株式を組み込まれることは、当然あってはならないことです。
投資信託の購入者の信用を失いかねない、このような行為は、現在は法整備が進み、規制されるようになりました。
日本の経済が低迷した2010年代の現在は、投資信託は年金を補完する商品として注目されるようになっています。
現在の投資信託商品は、従来の債券に加えて不動産や原油などに投資するタイプのものなど、投資対象が多様化しているのが特徴です。
いまでは、投資信託を運用する会社は約90社存在しており、数千本の投資信託が運用されています。
まとめ
ここまで、以下の内容をお伝えしました。
- そもそも投資信託とは?
- 投資信託が誕生した理由
- アメリカの投資信託の歴史
- 日本の投資信託の歴史
投資信託は資産家ではない中流の人が投資活動に参加できるようにするためにつくられた仕組みです。
投資信託の登場によって、一部の大資本家や専門家だけが投資をするという常識は大きく変化しました。
この記事で紹介したように、投資信託の商品を購入することには、
- 個人で少額からでも投資活動に参加できる
- 投資についてあまりくわしくない人の代わりに専門家が運用してくれる
以上のようなメリットがあるのです。
巨額の投資資金や専門的な知識を持っていなくても資産を増やしていけるのが投資信託なのです。
投資信託は、年金給付金額が下がり、納付した分の金額がもらえない可能性が高い今後の社会で、個人で資産形成をするための有効な手段として注目されていくでしょう。
また、投資ですので、運用成績は商品によって異なります。
投資信託は、国内の取扱の商品だけで、全部で6,000種類以上ございます。
その他の記事で投資信託の見極め方や選び方も取り扱っておりますので、自分にあった商品を見つけていきましょう。