
こちらの記事では、「年金」の誕生から現在での歴史を紹介してきます。
年金は、現代に生きる私たちの退職後の暮らしを安定させるためには、なくてはならない貴重な収入源です。
しかし、あなたは、そもそも年金とは何なのかを正確には知らないのではないでしょうか?
そこで、この記事では、
「そもそも年金は何のためにつくられたの?」
「年金制度の歴史を知りたい」
このような疑問を持つあなたに向けて、年金の誕生から現在までの歴史を順番に紹介していきます。
具体的に紹介する内容は以下のものになります。
- そもそも年金とは?
- 年金の歴史
この記事は5分くらいでカンタンに読めて、年金の歴史について十分に知ることができますので、ぜひご一読ください。
そもそも年金とは?
年金の歴史を解説する前に、そもそも年金とはどのようなものなのかを、改めて確認できるようにカンタンに紹介してきますね。
年金は、加齢や障害などで、自立した生活が困難になるリスクに備えるために生み出された仕組みです。
年金は、あらかじめ決められた金額の保険料を納めることで、必要なときに給付を受けられるように設計されています。
仮に、年金の制度がなかった場合には、私たちは自分自身の老後もしくは障害を負ったときの生活のために、自分で貯金をして備えなければなりません。
しかし、数十年の人生の間に、経済の状況や社会のあり方がどのように変化するかは分からず、自力だけで備えようとしても、必要な額の貯蓄ができない場合が多くあります。
国民一人ひとりが老後や障害を負ったときに、安心して生活できるようにするためには、お金を給付する制度をつくって社会全体で対応した方が効率的なのです。
現在、日本でもらえる年金には、国が制度として定めている「公的年金」と、私企業や団体が制度をつくっている「私的年金」の2つが存在します。
公的年金と私的年金の2つがあることで、老後や障害を負ったときに、安心して暮らすことができるのです。
次からは、年金がどのように生み出され、現在はどのように運用されているのかを、歴史を順番に追って解説していきますね。
年金の歴史
ここから、年金の歴史を紹介していきます。
紹介していく順番は、以下の通りです。
- 創設期(戦前~戦中)
- 成熟期(戦後~高度経済成長期)
- 改革期(バブル崩壊~現在)
それでは、順番に紹介していきます。
創設期(戦前~戦中)
日本でもっとも古い年金は、1875年に発足した軍人への恩給制度です。
一定年数勤めてから、退職もしくは死んだ公務員・軍人またはその遺族に対して、国家から与えられた金銭のこと
恩給は現在の年金とは異なり、当時は軍人など一部の立場の人にしか支払われないものでした。
しかし、日本の社会が発展していくにつれて、年金をもらえる人たちの範囲が拡大していきました。
民間人に向けた年金は、1939年に制定された「船員保険法」によるものが日本で最初のものになります。
船員保険法によって支払われる年金の対象者は、船員(船の上で働いている乗組員)と、その家族でした。
民間人に向けた最初の年金の対象者が船員であった理由は、戦時体制下で船員の確保が緊急課題になっていたからです。
船員が引退した際の所得保障や、亡くなった際の遺族保障を充実させることで、老後の不安を取り除いて安心感を与え、生産活動に専念させて戦力増強につなげる目的が当時の政府にはあったのです。
1942年に施行された「労働者年金保険法」によって、他の職業に属する男性肉体労働者を対象にした労働者年金保険の制度が開始されました。
この労働者年金保険法も、船員保険法にならって、より多くの労働者に老後に対する安心感を与えて、効率的な戦力増強を図ろうという目的から始まったものです。
その後ほどなくして、1944年には労働者年金保険は「厚生年金保険」に改称され、年金の給付対象者が男女の事務職や女性労働者にも拡大されました。
第二次世界大戦前・戦中から本格的に開始された日本の年金制度は、戦後にさらに発展して、国民の生活を豊かなものにしていきます。
次からは、年金制度が発展した、戦後から高度経済成長期の歴史を紹介してきます。
成熟期(戦後~高度経済成長期)
第二次世界大戦後には、前述で紹介した厚生年金保険制度が全面的に改正されました。
この改正によって、
- 低所得者でも最低限額の年金が支払われるようになる
- 徴収する年金保険料を会社側と労働者側で半分ずつ納める
以上のような、現在まで続く年金給付の仕組みが形作られていったのです。
1950年代中に厚生年金制度などが充実することで、会社員や公務員に対する年金給付の制度は整備されていきました。
一方で、この時代にはまだ、自営業者に対する公的年金の制度については、老後に給付がされるような体制は整備されていませんでした。
1960年代に高度経済成長の時代に入ると、自営業者についても、老後の社会保障が必要だという世論が強くなっていきました。
1960年代の日本の経済成長率が年平均10%を超えて、諸外国を上回るスピードで経済成長を遂げたこと
そして、1961年には自営業者を対象とした「国民年金制度」が創設され、いわゆる国民皆年金制度が実現しました。
国民皆年金が急速に普及した背景には、戦後に若年層が都市部で働くようになったことがあります。
高度経済成長期には、戦前・戦後直後のように、親と子がともに暮らして、自分で親を支えるという生活習慣がなくなりました。
なので、当時年金制度に未加入だった世代の生活が不安定化する恐れがあったのです。
消失してしまった親と子の支え合いの代替策として、国民皆保険という仕組みが必要になったのです。
当時の国民皆年金制度は、以下の役割を担っていました。
- 国民年金…自営業者の老後を安定させる
- 厚生年金…会社員の老後を安定させる
- 共済年金…公務員および教職員の老後を安定させる
当時は、国民皆年金といっても、男性会社員が厚生年金に加入している場合は、その妻は任意加入でもよいとされていました。
理由は、厚生年金は国民年金よりももらえる金額が多いために、会社員の夫が制度に加入している場合には、その妻が加入する必要はないと考えられていたからでした。
しかし、時代が経つにつれて、熟年離婚の数が多くなったことから、制度の見直しが議論されるようになりました。
なぜなら、夫が厚生年金に加入している家庭で、熟年離婚が起こると、配偶者である妻が老後に無年金状態となっていたからです。
この問題や、当時予想されていた本格的な高齢化社会の到来に対処するために、1985年に制度の再編がなされました。
1985年の年金制度改革によって、厚生年金に加入している男性会社員の配偶者である妻は、国民年金に強制加入することになりました。
また、以前は、国民年金と厚生年金は、それぞれ別々のものとして扱われていきましたが、改革以後には、以下のような変化が起きました。
- 国民年金…20歳から60歳までのすべて者が加入する年金→保険料を払っている人全員がもらえる
- 厚生年金…会社員として一定期間勤めていた者が、国民年金に上乗せしてもらえる年金
- 共済年金…公務員、教職員として一定期間勤めていた者が、国民年金に上乗せしてもらえる年金
以上3つの年金が、表示したような位置づけとなったことによって、現在の公的年金制度の仕組みが完成することになったのです。
高度成長期が終わり、日本経済が停滞した1990年代以降のバブル崩壊以後から現代にいたるまでにも、年金制度は存続しますが、少しずつ改革されました。
次からは、バブル崩壊から現在までの時期の年金制度の改革の歴史を紹介していきますね。
改革期(バブル崩壊~現在)
バブル崩壊後、日本経済が停滞してからも、社会の変化に合わせて年金制度はいくつかの改革をすることになりました。
ここでは実際に行われた改革のうち、代表的なものを取り上げて紹介していきます。
まず、バブル崩壊後から現在までの改革で特徴的なのは2004年のものです。
この2004年にどのような変更がされたのかを説明してきますね。
2004年の改革では、まず、保険料上限を法律で決めて、給付はその上限の範囲内で賄うという仕組みができあがりました。
また、同年の改革で、マクロ経済スライドというシステムが導入されたことも、制度における特徴的な変更です。
マクロ経済スライドとは、そのときの労働人口の増減や平均寿命の伸びなどに合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。
これらの2004年の改革は、日本社会で少子高齢化が進む中で、毎年国民に負担させる保険料水準が上がり続け「将来の保険料負担額がどこまで上昇するのか?」という懸念があったことから行われました。
この改革によって、将来の現役世代の保険料負担が重くなることを防いだのです。
しかし、マクロ経済スライドが導入されたことによって、国民にとってのデメリットも生まれてしまいました。
実際にマクロ経済スライドが実施されたことによって、国民年金の給付額が大きく低下してしまったのです。
理由は、日本社会で進行している少子高齢化によって、年金を給付する高齢世代が増加しており、逆に納付する現役世代の人口が減少しているからです。
政府は、少子高齢化による財源不足を解消するために、退職後にもらえる年金の支給開始年齢を、現在の65歳から75歳に引き上げることを検討しています。【引用】(内閣府:年金制度改革案の貧困リスク改善効果の比較https://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/wg2-5kai/pdf/7.pdf)
元気な高齢者に支えてもらう年金制度改革に改造しようとしているのです。
政府の試算によると、近い将来には、国民年金と厚生年金の両方をもらっても、老後に安定して生活するには2,000万円分が足りないとされています。
これからの時代には、老後に貧困にならず安定した生活を送るために、足りない2,000万円を、自分の力で稼いで蓄えなければなりません。
まとめ
ここまで、以下の内容をお伝えしました。
- そもそも年金とは?
- 年金の歴史
記事本文で紹介したように、年金は、加齢や障害などで、自立した生活が困難になるリスクに備えるために生み出された仕組みです。
しかし、少子高齢化が進んだ現在は、私たちがもらえる年金の金額は下がり続けています。
また、支給の開始年齢も将来的には、現在の65歳から75歳に引き上げられる可能性が非常に高いのです。
これからの時代に、老後に安定した生活を送るためには、年金だけに頼らずに、自分で資産形成をして貯蓄を増やさなければなりません。