日本では質素倹約や清貧など、お金についての慎ましさを美徳とする傾向があります。これらはときに日本古来の文化や日本人の性質のように語られさえします。
しかし実は「質素倹約は日本の美徳」が大ウソで、政府が国民から効率的にお金を集めるための戦略だったとしたら?
そしてそれが原因で本来は殖やせるはずのお金が殖えないのだとしたら?
日本は世界でも有数の貯金好き国家ですが、これからの時代は真面目に貯金だけをしているようではどんどん損をする一方になります。
ここではあまり知られていない、お金にまつわる日本の3つの真実を通じて、投資による資産運用の必要性をより深く理解しておきましょう。
江戸時代の日本は「先物取引」の世界的パイオニア
ほとんど知っている人はいないかもしれませんが、現在投資を目的に株や貴金属、石油などで盛んに行われている先物取引を世界に先駆けて発明したのは、江戸時代の日本でした。
先物取引とは、将来の売買についてあらかじめ現時点で約束をする取引のことで、前もって価格を決めておくことで価格が変わるリスクを回避したり、そのぶんで利益を出したりできるという利点があります。
この手法を取り入れた世界初の市場が、江戸時代の大阪にあった堂島米市場です。当時の日本人にとって米は重要な食料源でもあり、納税にも使える貨幣でもありました。
そのため堂島米市場での先物取引は武士や商人たちの投資の場となり、大きく儲ける人たちも少なくありませんでした。江戸時代の日本には、すでに投資の文化が根付いていたのです。
このように一部の人々が投資で資産を作り上げる一方、江戸時代の労働者層の多くは「宵越しの銭は持たぬ」とあればあるだけのお金を使う生活を送っていました。
お金を殖やす方法を知っている一部の層はどんどんお金を殖やし、それ以外の層は何も知らず、何も考えずにお金を使っていたということです。
こうして見ると、江戸時代も今も資産のある人とない人の関係は変わっていません。老後の経済的な安心を手に入れたいのなら、効率的にお金を殖やす方法を知り、それを実践するほかないのです。
質素倹約は「お国のため」のスローガン
にもかかわらず、現在の日本にはいまだにお金はコツコツ働いて貯めるもの、質素倹約こそが一番確実にお金を増やす方法だと考える人が少なくありません。
世代によっては常識とさえ言える考え方かもしれませんが、実はこうした考え方の発端は新しく、昭和初期の戦時下に国によって刷り込まれたものなのです。
戦争をするにはお金が必要です。そこで当時の日本政府は「そうだ!国民からお金を集めればいいんだ!」と思いつきます。
その結果が、1937年(昭和12年)9月から内閣が率先して進めた国民精神総動員です。
- 「欲しがりません、勝つまでは」
- 「ぜいたくは敵だ!」
- 「日本人ならぜいたくは出来ない筈だ!」
こうした戦時標語が掲げられ、質素倹約こそが日本人にとっての美徳なのだという刷り込みが行われたのです。
「質素倹約こそが美徳」という考え方は、終戦後「お金はコツコツ働いて貯めるもの」という形に姿を変えて、刷り込まれ続けます。
戦後復興期にあたる1952年(昭和27年)には現在の金融広報中央委員会(「知るぽると」)の前身である貯蓄増強中央委員会が発足。この委員会はその名の通り貯蓄を奨励するものでした。
その最も大きな目的は、国民から集めたお金を公共投資や大企業への貸付に使うためでした。結果的にこの政策は大成功を収め、日本はとてつもないスピードで経済発展を遂げたのです。
「だから貯金をして、国の発展に貢献するべきだ」と言う人もいるかもしれません。
しかし冷静になって考えてみればわかるように、まだまだ発展途上国にすぎなかった戦後復興期の日本と、一度は世界第2位の経済大国としてアメリカと肩を並べ、今も世界第3位を維持している現在の日本とでは将来の伸びしろに大きな違いがあります。
今後の日本において「何も考えずに貯金をして年金を納めてさえいれば、貯金と年金の利回りで老後は安心して暮らせる」などという時代は、おそらく二度ときません。
だからこそ国に刷り込まれたお金の考え方を捨て、これからは自分の頭で考えて、自分のお金は自分で殖やす必要があるのです。
戦後日本が敢行した「国民預金全面封鎖」
「そうは言っても、日本の政府は国民を守ってくれるでしょ?」と考えている人もいるのではないでしょうか。
確かに日本は世界でも珍しいほど、政府による保障が充実した国です。しかしそれがいつまでも続く保証はどこにもありませんし、実際日本政府には国民のお金を半強制的に回収した歴史があります。
いったい、いつのことだかわかるでしょうか。平安時代?江戸時代?明治・大正?全て間違いです。答えは1946年(昭和21年)です。
第二次大戦中、日本は外国や国民から多額の借金をしていました。これを返そうとした日本政府は新しい税金を徴収して、これを返済に充てようと思いついたのです。
それが現金や土地を含めた財産に税率をかける財産税です。これだけでも十分恐ろしい話ですが、この財産税を課税するまでに日本政府がとった手続きは、もっと恐ろしいものでした。
当時はクレジットカード決済などありませんでしたから、基本は現金商売です。そのためお金を銀行に預けず、自宅で保管している人が大半でした。
これでは国民の財産が把握できず、課税もできません。そこで政府は「新円切替に伴って、今使っているお金は使えなくなる。だから一度銀行に財産を預けて、新円に両替するように」というお触れを出しました。
当然国民は慌てて銀行にお金を預けます。そこで日本政府が発動したのが国民預金全面封鎖です。こうして一部の預金を除いて、国民は銀行から自分のお金を引き出せなくなりました。
ここで日本政府は止めと言わんばかりに財産税を導入します。
誰がどれだけの財産を持っているかをはっきりさせ、しかもそれを自由に使えない状態にしたうえで、その財産から税金を徴収したのです。その際の税率は以下のようなものでした。
課税価格 | 税率 |
10万円超-11万円以下 | 25% |
11万円超-12万円以下 | 30% |
12万円超-13万円以下 | 35% |
13万円超-15万円以下 | 40% |
15万円超-17万円以下 | 45% |
17万円超-20万円以下 | 50% |
20万円超-30万円以下 | 55% |
30万円超-50万円以下 | 60% |
50万円超-100万円以下 | 65% |
100万円超-150万円以下 | 70% |
150万円超-300万円以下 | 75% |
300万円超-500万円以下 | 80% |
500万円超-1,500万円以下 | 85% |
1,500万円超 | 90% |
最高税率は90%。課税に至るまでの手続きからして、もはや国家ぐるみの略奪です。
今の日本の政府は国民から1,000兆円以上の借金を抱えています。その額は年々膨らんでおり、一向に減る気配がありません。
このような状況下で、100%日本政府を信じきることができるでしょうか。「日本は破綻しない」と自信を持って言えるでしょうか。
繰り返しますが、国を信頼して任せていれば老後の生活が保障される時代はもうすでに終わっています。私たち一人一人が、自分のためにお金について学び、資産を運用する時代なのです。
まとめ
預貯金を国が活用することで経済が発展し、それが利回りという形で還元されるのであれば問題はありません。実際高度経済成長期の日本はそのような状況でした。
しかし今の日本は少子高齢化や労働人口の減少などの問題を抱えているため、これからの日本にかつてのような利回りは期待できません。むしろ破綻の危険性の方が高いと言えます。
「質素倹約は日本の美徳。だから貯金をするべき」という考え方は、国の都合から生まれたものであり、歴史的事実でも遺伝的事実でもありません。
自分の将来をより楽しいものにしたいのであれば、こうした思い込みからは卒業し、もう一度ゼロからお金について学び、考える必要があるのです。
お金の窓口ではそのために必要な情報を発信しています。ぜひ他の記事にも目を通していただき、お金を賢く殖やす方法を知るきっかけにしていただければと思います。
日本の大手銀行は、2019年10月末現在、預金をしているだけで手数料をとる「口座維持手数料」の導入を検討しています。
まさかと思うかもしれませんが、実は欧米やスイスでも導入する金融機関は増えてきているんです。
銀行がマイナス金利などによる利益減など厳しい状況にあることを考えると、実際に導入される可能性は十分あります。
そうなれば、ますます預金をする意味はなくなります。
とはいえ、無条件に全ての口座に口座維持手数料がかかるというわけではなさそうです。というのも各国の口座維持手数料には、以下のような条件が設定されているからです。
ウェルズ・ファーゴ(アメリカ) | 預金残高1,500ドル未満の個人口座に対して毎月10ドルの手数料 |
クレディ・スイス(スイス) | 預金残高200万フランを超える口座に0.75%の手数料 |
コメルツ銀行(ドイツ) | 毎月最低1,200ユーロの入金がない場合に月9.90ユーロの手数料 |
こうした条件の差が国内の銀行でも生まれた場合、今のような「どこに預けても同じ」という状況はなくなり、「貯金をするなら○○銀行がお得」といった時代になります。
そうなれば、なおさらお金についての勉強が一般教養になるはず。今から勉強しておくのが得策と言えるでしょう。