ネットにも本屋にも「節税」の文字はあちこちで目にします。
「サラリーマンのための節税」「フリーランスのための節税」「経営者のための節税」などテーマはさまざまです。
一方2019年8月、Facebookの日本法人が東京国税局から約5億円の申告漏れを指摘されたことが明らかになりました。
意図していたかどうかは別として、「脱税」をしていることが発覚したのです。
「節税」と「脱税」、その違いは大きく税法を守っているかどうかにあります。
すなわち、税法にのっとって税金を少なくすることを節税。税法に違反して故意に税金を少なくするのが脱税です。
ここではこの節税と脱税の違いについて詳しく解説するとともに、そこからさらに一歩踏み込んでサラリーマンの節税・脱税についても解説します。
節税と脱税の違いとは?
主要な税金は「所得」で決まる
節税と脱税は、いずれも所得の金額を減らすことで税金を安くすることを目的にしています。
「所得」と聞くと「収入」を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、この2つは微妙に意味が違います。
収入とはサラリーマンで言うところの額面、年収などを指します。
所得とは収入から必要経費を差し引いたものです。ただしサラリーマンの場合は必要経費を計上することができません。
そこで代わりに「給与所得控除」などの制度が設けられており、定められた金額を差し引いた(控除した)金額が所得となります。
なぜ所得が減ると税金が安くなるのか。
それはサラリーマンの主要な税金である所得税と住民税、企業の主要な税金である法人税が所得を基準に決められるからです。
例えば所得税は「累進課税」と言って、所得の金額に応じて5〜45%の間で税率が変動します。
住民税はすべての人に平等に課せられる「均等割」と、所得の金額に応じて課せられる「所得割」を合計して決められます。
法人税の税率は企業の運営形態によって変動しますが、所得の一定の割合が税金として課せられる点は同じです。
だから所得を減らせば減らすほど、税金が安くなるというわけです。
節税と脱税って具体的に何をするの?
しかし所得を減らすと言っても、わざわざ給料を安くしてもらったり、取引量を絞って売上を縮小したりするわけではありません。
給料や売り上げはそのままで、税金だけを安くしなければ得にはならないからです。
下表で節税と脱税、それぞれの例を見てみましょう。
これを見ると、ルールの範囲内で税金を安くするのが節税で、ルールに違反し、悪意を持って税金を安くするのが脱税だということがわかります。
したがって、節税と脱税の共通点・違いをまとめると以下のようになります。
- 共通点:所得の金額を減らすことで税金を安くするための対策
- 違い:法律の範囲内の対策なのか、法律に違反する対策なのか
補足:脱税・申告漏れ・所得隠しの違い
今回は、法律に違反するものを脱税とご紹介しましたが、厳密には、金額の大きさや悪質さにより、脱税ではなく「申告漏れ」「所得隠し」と判断されることもございます。
それぞれの違いは下記のようになっております。
いずれにしても、違法行為として、ペナルティ(追徴課税)を課されます。
そもそもサラリーマンは基本的に脱税できない
「でも税金のルールなんてよくわからないから、自分が守れているのかどうかもわからない」と思った人もいるかもしれません。
でも大丈夫。なぜなら基本的にサラリーマンは脱税をしようとしてもできない仕組みになっているからです。
脱税は先ほどの例でも見たように、「売上」「仕入」「経費」の3つの要素のうち、どれかを意図的に操作して所得を減らす行為です。
サラリーマンにはこれら3つの要素のうち、一つとして操作できるものがありません。
サラリーマンの売上とも言える給料は会社が決めるものなので操作できませんし、仕入や経費にあてはまるような仕事に関係のある出費は会社のお金でまかなうものですから、自分では操作できません。
税務署が国民の所得を把握している割合を、業種別に「トーゴーサンピン(10・5・3・1)」と表現することがあります。
給与所得者約10割、自営業者約5割、農林・林業・水産従事者約3割、政治家約1割の内訳で税務署は所得を把握している、という意味です。
サラリーマン=給与所得者は100%所得を把握されているのですから、脱税をするのはほとんど不可能なのです。
だからサラリーマンは「知らない間に法律の決めたルールを破って脱税してしまわないだろうか」なんて心配をする必要はないのです。
節税対策には実にさまざまな方法があります。ぜひとも活用して、払いすぎた税金を取り戻しましょう。
まとめ
本当は払わなきゃいけない税金を、なんとかごまかして払わずに済むようにするのが脱税。
本当は払わなくていい税金を、いろいろな手続きを通じて返してもらうのが節税。
脱税は完全にクロですが、節税は基本的にシロです。
サラリーマンは所得を会社、そして税務署にほとんど把握されているため、脱税をすることはできません。
したがっていわゆる「サラリーマンができる節税」というのは、おおむね全てシロなのです。
だからサラリーマンは心置きなく節税に勤しんでOK。
毎日たくさん頑張って稼いだお金を、本当は払わなくていい税金に取られているのを見過ごしてはいけません。
お金の窓口で紹介しているような方法を使って、きちんとお金を取り戻していきましょう。