預金封鎖とは、その名の通り預金が封鎖されることです。預金封鎖が行われると、銀行から預金を引き出すことが出来ません。

預金封鎖は、過去にブラジルやアルゼンチン、キプロスなどで実際に行われています。多くの国で預金封鎖が過去に行われていますが、日本で預金封鎖が行われることはないと思っている方は多いのではないでしょうか?

しかし、日本でも過去に2回、預金封鎖が行われたことがあるのです。今回は、戦後に日本で行われた預金封鎖について説明します。

INDEX
  1. 預金封鎖とは?
  2. 戦後に預金封鎖をしたときの日本の状況
  3. 月の物価上昇率100%!?ハイパーインフレを招いた3つの要因
    1. 膨張する金融資産
    2. 膨張する政府債務
    3. 臨時軍事費を日本銀行が直接引き受けたこと
  4. 預金封鎖の内容
  5. 預金封鎖をした時の状況と現在との状況比較

預金封鎖とは?

預金封鎖が発表された時を表す写真

出典:2024年新札「渋沢栄一」と1946年預金封鎖「大蔵大臣・渋沢敬三(孫)」という偶然

繰り返しになりますが預金封鎖とは、銀行から預金を引き出すことが出来なくなることです。預金封鎖は、貨幣の流通量を制限したり、インフレの抑制や、国の借金の返済の原資として、国民の財産を割り当てる目的などで行われます。

預金封鎖は、一般的に銀行レベルで決めることではなく国家レベルで決められるものです。では戦後日本で行われた預金封鎖はどのようなものだったのでしょうか?

戦後に預金封鎖をしたときの日本の状況

戦後日本を表す写真

出典:日本人のための日本近現代史

戦後に行われた日本の預金封鎖は、1946年2月6日に発表され、翌日の2月17日に実施されました。

戦時中、国は国債を大量に発行し、国民に大量に買わせることで、兵器などの戦争資金を調達しておりました。

しかし、戦時中に発行した国債はあまりにも膨大なものとなり、終戦時の日本の債務は、GDPの約2倍にまで膨れ上がりました。それにつられて物の値段が上がり、強烈なインフレも引き起こしてしまっていたのです。

まさしく当時の日本は、大混乱のさなかでした。

その事態を収拾すべく、政府は預金封鎖という手段をとったのです。

なぜ、どのように預金封鎖で収拾を図ろうとしたのか?もう少し当時の状況について見ていきましょう。

月の物価上昇率100%!?ハイパーインフレを招いた3つの要因

戦後のインフレを表す写真

出典:1億円を作る投資術

戦後の混乱の中、以下の3つが大きな理由になり、日本は信じられないほどのインフレに見舞われました。

膨張する金融資産

預金封鎖を行った理由の1つ目は、金融資産が急速に膨張したことです。終戦直後、預貯金が2,377億円、国債が1,175億円ありました。

預貯金の2,377億円というのは、日中戦争勃発時の約8倍、現在の価値にすると118兆円、国債の1,175億円というのは、日中戦争勃発時の約13倍、現在の価値にすると58兆円になります。

当時の日本のGDPは、745億円(現在の37.3兆円)でしたので世界的に見ても異常な数字です。

金融資産が膨張した理由は、軍事費ねん出のために国債を乱発したことと、賃金の上昇などが要因と言われております。

例えば牛乳の値段ですが、戦前から戦後にかけて約21倍になりました。このような状況では、お金を持っていても意味ないので、闇市などの物々交換が流行りました。

膨張する政府債務

預金封鎖を行なった理由の2つ目は、国の借金が非常に大きくなったことです。繰り返しになりますが、当時の国の借金は、GDPの約2倍です、現在も日本は非常に借金の多い国でGDPの約2倍ほどの借金があります。しかし当時と現在では大きく状況が異なりました。

当時は、敗戦と膨大な国の借金によって、国民の国に対する信頼は崩壊していました。

国民は取り付け騒ぎが起こることを心配し銀行にお金を預けなかったのです。

取り付け騒ぎとは、特定の金融機関や金融制度に対する信用不安などから、預金者が預金を取り戻そうとして(=取り付け)、急激に金融機関の店頭に殺到し、混乱をきたす現象のことをいいます。取り付け騒ぎが怒ると自分の預金を下ろせなくなってしまう可能性があります。

通常、銀行から銭預金者の預金額が全額出金されることはなく、預金総額の10分の1もストックしておけば銀行運営が可能とされております。

しかし、当時の国民は取り付け騒ぎを恐れていた背景もあり、通常よりも出金額が大きくなっておりました。よって銀行にストックしておかなければならない金額もおのずと大きくなります。

そのストックを補うために、日銀は紙幣を増刷するほかなかったのです。

増刷された日本円は270億円(現在の190兆円相当)にもおよび、お金が溢れかえるようになってしまったのです。ただでさえ個人の金融資産が膨張している状況の中、お札を増刷することはさらに物価の価値があがることを意味します。

臨時軍事費を日本銀行が直接引き受けたこと

預金封鎖を行なった理由の3つ目は、臨時軍事費を日本銀行が直接引き受けたことです。戦後の混乱を収めるために、政府は終戦のため契約打ち切りになった軍事産業への補填や元軍人(約740万人)に退職金を払うなどのために巨額の臨時軍事費を支払うことにしました。

元軍人への支払額は戦時中の1945年1月~7月で165億円であったのに対し、戦後の8月と9月の2か月間で194億円、更に年末までの5か月で273億円支払いました。

政府は、臨時軍事費を支払うために、国債を発行しました。通常、国債を発行する場合、国債を引き受けるのは、民間の銀行です。しかしこの時、国債を引き受けたのは、日本銀行でした。

民間の銀行は保有する預金残高以上に国債を買うことは出来ません。しかし日銀が国債の引き受けをすることになると、日銀は無限に国債を買うことが出来ます。なぜなら、日銀は、お金を刷ることが出来るからです。

無尽蔵にお金を刷ることにより大量の国債を日銀は引き受けました。当然、貨幣の流通量は爆発的に増えることになり、インフレを引き起こすことになります。

膨張する金融資産、膨張する政府債務に加え、この国債の日銀引き受けが決定打となり、日本は、月に100%も物価上昇するハイパーインフレになりました。

預金封鎖の内容

戦後の預金封鎖の内容を表す写真

出典:投資で銀の人生

そこで、政府はインフレを抑えるために、預金封鎖を実行することになりました。

名目上はインフレの抑制のためでしたが、当時の大蔵大臣である渋沢栄一が後年語っていたように、国の債務の返済や格差の是正を行いたいという意図もあったそうです。

格差の是正に関しては、当時の日本は地主や財閥など一部の人が、大部分の資産を持っていたため一般国民の不満があったといわれています。不満が政府に向くことを恐れていた部分もあったのでしょう。

預金封鎖を行うにあたって、政府は新円への切り替えを実施しました。これまでの円(旧円)は使えなくなるため、新円に交換するために銀行にお金を持ってきてくださいと発表したのです。当然国民は、使えなくなる旧円を持っていても仕方がないので、国民は生活用の現金からタンス預金まで、一斉に銀行に預けます。

政府はまず新円切り替えを行って、全ての現金を銀行に集めた上で、預金を封鎖しました。その後、家族の人数などに応じて、毎月1人いくらまでしか出金できないなど、出金制限という形を取りました。

出金制限をかけることによって、現金の流通量を減らし、お金の希少性を高めようとしたのです。

また預金封鎖と合わせて資産への課税も行われました。

資産への課税は、預金だけでなく土地などの不動産も対象にしました、保有する資産の額によって累進課税をかけたのです。

財産税は以下の通りです。

課税価格 税率 課税価格 税率
10万円超~11万円以下 25% 30万円超~50万円以下 60%
11万円超~12万円以下 30% 50万円超~100万円以下 65%
12万円超~13万円以下 35% 100万円超~150万円以下 70%
13万円超~14万円以下 40% 150万円超~300万円以下 75%
15万円超~17万円以下 45% 300万円超~500万円以下 80%
17万円超~20万円以下 50% 500万円超~1,500万円以下 85%
20万円超~30万円以下 55% 1,500万円超~ 90%

(当時の10万円は5,000万円相当、1,500万円は75億円相当。当時の価値に500倍をかけて現在の価値として計算。500倍の根拠は、現在の小学校教諭の給料が当時の約500倍のため)

預金封鎖と資産への課税を行ったことで、多くの人が資産を失うことにより、お金の価値が上がり、インフレは、抑制されていきました。

また、没収した資産で国の借金を返済することも出来ました。

資産税の導入で、富裕層に破壊的なダメージを与えることになったので格差も是正されることになりました。しかし格差が是正されたといってもみんなが裕福になるのではなくみんなが貧しくなって解消されたのです。

インフレの抑制、国の借金の返済、格差の是正という目的を達成することは出来ましたが、日本国民に計り知れないダメージを与えることにもなりました。

預金封鎖をした時の状況と現在との状況比較

戦後預金封鎖を行った時の状況を表す写真出典:日本の戦後の預金封鎖の事例を紐解く~新円切り替えからの資産課税の歴史~

現在の日本の状況と当時の状況を比べると、似ているところがたくさんあります。まず国の借金ですが、預金封鎖を行なった時の日本と同様にGDPの2倍以上あります。

また一部の富裕層に資産が集中しているところも共通しております。

直ちに、現在の日本で預金封鎖が行われるとは思えませんが、可能性はゼロではありません。

預金封鎖は、なんの前兆もなく実施されます。もし預金封鎖が行われたら多くの方は、資産の大半を持っていかれてしまいます。

預金封鎖に対抗するために、日本円のみで資産を持つのではなく外貨に分散することや、海外に直接資産を持つことも必要かもしれません。

預金封鎖が行われなくても日本は世界一の借金大国です。日本円の価値が暴落する可能性はあるのです。

日本円の価値が暴落しても資産を守るために外貨に分散することはこれからの時代必要なのかもしれません。