お金の窓口です。
「失業保険が最大28ヶ月もらえる」「社会保険からの給付金がもらえる」など、退職者に向けての給付金申請情報が飛び交うようになりました。
さまざまな表現がございますが、中身は同じで「失業給付(失業保険)に加えて、傷病手当金(しょうびょうてあてきん)を適切に申請すれば、退職後にあわせて最大28ヶ月の給付金がもらえる」というものです。
そして、この給付金申請のサポートを行う民間企業や社労士が増えてきております。
あまり聞くことのない傷病手当金ですが、合計2年半近くの給付を受けられるのであれば、退職者には大変ありがたい制度です。
一方で、「自分で申請できるのではないか」とお考えの方もいらっしゃるかと思います。
そこで、本記事では、傷病手当金の申請に外部のサポートが必要なのかについて調査いたしました。
結論は、サポートを受けたほうがいいケースと受けない方がいいケース両方ありましたので、ご紹介させていただきたいと思います。
傷病手当金とは
傷病手当金とは、社会保険に加入している方に向けて、各健康保険組合が提供する制度です。
傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。
資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。
同一の傷病について、(受給期間は)支給を開始した日から最長1年6ヵ月間です。
全国健康保険協会より引用
上記をまとめますと、退職される方(社会保険の資格喪失をする方)の場合は
- 病気やケガで退職される方
- 退職日までに、社会保険に1年以上継続して加入している方
- 在職中から傷病手当金を受けているか、受けられる方
を満たせば受給可能な制度です。
病気やケガの対象は幅広く、「気分が憂うつ」「介護との両立で疲弊している」「交通事故」「糖尿病」「がん」「骨折」「ひどい腰痛」「ペットロス」「失恋」「適応障害」「上司の顔を見るだけで緊張する」など。
「会社に行くのが辛い・仕事に影響が出ている状態」であれば、原因がわからないものや、他人から見ればささいなこと、プライベートに関することでも対象となるようです。
日本人の5人に1人は心の病気にかかるとされておりますので、対象になる方は多くいらっしゃるのではないかと思います。
利用せずとも、「仕事が嫌だ」と感じていらっしゃる方は、制度の存在くらいは覚えておいて損はないでしょう。
傷病手当金が「申請手続きが複雑」と言われる理由
傷病手当金は申請手続きが複雑であるといわれます。
こちらに関しては、お金の窓口も同意見です。
もう少し掘り下げて、どのように複雑なのかは、原因はおおきく3つございます。
- 退職前からの細かい手続きが必要であること
- 健康保険組合により一部申請ルールが異なること
- 個人の利用状況により、追加の手続きが求められること
1つ1つ見ていきましょう。
1.退職前からの細かい手続きが必要であること
傷病手当金は、病気やケガで仕事に影響が出ている方への給付金です。
様々な状況に対応するために「何をもって病気とするのか」「何を持って仕事に影響を出ているとするのか」を判断するためのルールがございます。
たとえば、
- 退職日前日までに仕事を連続して休んでいる期間があること(土日を含めた3日~程度の休みでも可)
- 在職中から通院をしていること
- 退職日は働いていないこと など
になります。
1つ1つは知っていればできることですが、おそらく全てを自然と満たしている方は少ないのではないかと思います。
まずは、このような退職前から必要な手続きがあることを知り、申請ルールを守る事が必要です。
2.健康保険組合により一部申請ルールが異なること
そして、もっともやっかいなのが、こちらです。
たとえば、先に上げた「退職日前日までに仕事を連続して休んでいる期間があること」ですが、このお休みの期間の考え方は、所属の健康保険組合によって異なります。
一部調査したところ
健康保険組合 | 期間 |
全国健康保険組合 | 連続した3日間 |
日本私立学校振興・共済事業団(私学共済) | 連続した3日間+初日は平日(出勤日)であること |
関東ITソフトウェア健康保険 | 連続した3日間+その他の日も休むことを強く推奨 |
となっておりました。
特にこの退職前の申請ルールを満たせなかった場合は、退職後にやり直しができません。
周囲に申請したことがある方がいても、同じ健康保険組合に加入していない場合は、参考にならないケースがあります。
3.利用状況により、追加の手続きが求められること
3つ目は個人によって追加手続きが必要となるケースです。
特に近年はコロナによる失業などで利用者が増えていると思われます。限られた財源で給付する健康保険組合側としては、慎重にならざるを得ないのでしょう。
審査が厳しくなったり、臨時の経過報告(再審査)などを求められることがございます。
ありのままを報告すればよいのですが、こちらにも一定の審査基準はあり、書くべきことが書けていなければ、本来は支給対象者であっても支給打ち切りになる可能性もございます。
「真面目だけど、口下手な方が損をする」のと同じようなものですね。
特にこの2と3の理由により、ネット上にある個人の体験談を頼りに申請する場合は、自身に当てはまるか注意が必要になります。
また、失業保険を含めて制度は日々変わっておりますので、「いつの体験談」「いつ投稿された動画であるか」にも注意が必要です。
申請サポートが必要な場合・不要な場合
いよいよ本題です。
申請サポートがあれば、これまでに上げた「不安要素」を全て排除してくれます。自身の加入する健康保険やご状況にあわせたサポートを受けることで、対象であれば安心して給付を受け続けることができます。
一方で、これまであげた注意事項を把握していただいた上で、調べるなどすれば対応できるのではと考える方も少なくないでしょう。
そこで、サポートが必要な方・必要でない方をご紹介させていただきます。
サポートが必要・受けたほうがいい場合
サポートを受けたほうがいい場合は、以下の場合です。
- 気分が憂うつ、過度なストレス、うつ病など。外傷以外で申請する場合
- 失敗なく確実に受給をしたい場合
- 自分の判断に自信がない場合、判断力が低下している場合
- 長期間の療養が必要と判断した場合
特に1番に関しましては、骨折などの外傷であれば、おおよその治療期間の見当がつきます。見当がつくことで、前向きでいやすくなります。
一方、いわゆる精神的なものが原因である場合ほど、必要な休養期間のばらつきが大きく、個人差がございます。いつ治るかが分からない場合は、不支給になる要因を取り除くことで、ストレス要因が1つなくなり、回復にもつながります。
このように、確実に受給したい場合・受給失敗によるデメリットが大きい場合は、利用をおすすめします。
サポート事業者のなかには、健康保険の切り替えのような退職後に必要な手続きもフォローしてくれる場合もあります。そういったストレスや不安要素がなくすことも大切です。
また、自身ではなく、身内の方が申請する場合は、見てくれる方・相談できる方がいるだけでも安心につながるかと思います。
給付額に対しサポート費用が妥当だと感じれば、積極的に活用していきましょう。
サポートが不要(なくても良い)場合
反面、サポートが不要な場合は以下のとおりです
- 外傷を理由に申請する場合で、大きな怪我でない場合
- 自身の判断に自信がある場合
たとえば腕の骨折であれば、比較的時間はかからず、治療期間の個人差もそこまで大きくありません。
治療期間が明確で、かつ短期間のケガであれば、最悪の場合、失業給付期間だけでも治療をすることもできます。
ひとことでいうと「100%自分で申請できる自信がある」「もらえたら嬉しいが、最悪もらえなくとも良い場合」は、サポートがなくても良いといえます。
一方、軽度の外傷であったり、判断に自信があっても、「給付金は確実にもらっておきたい場合」はサポートの利用をおすすめします。
まとめ:自分の状況をみて判断しよう
傷病手当金は、健康保険組合が用意した制度ですので、自身で申請できるようになっております。
一方、本来の申請目的は、しっかりと休養を行って社会復帰に備えることです。
「給付を受けて退職したいか」「休養期間が長くなる可能性があるか」「もしくは長期間給付を受けて準備したいか」「給付がなくてもいいか、確実に受けたいか」
など、今の自身の状況をふまえて判断していきましょう。