かんぽ生命保険と日本郵便局員が顧客に不利益な保険契約を行っていたことがわかり、郵便局への信頼を逆手にとった悪質なやり方だとして驚きと批判が広がっています。

不正契約では郵便局員が自分達の営業成績を良くするためだけに、多くの顧客に保険の「二重契約」や「乗り換え」を行わせていました。

その結果、貴重な保険解約金が乗り換え先の保険に使われた人、無保険になってしまった人、無駄な保険を半年も払い続けた人が多く出てしまうことになりました。

被害者は数万人にものぼるということで、大きなニュースになっています。

今回の事件はかんぽ生命保険と郵便局の問題ではありますが、どの保険会社も利益を上げるために保険の販売を強化しています。

そのため、今後もさまざまな会社で「顧客ではなく社員や会社の利益を重視した保険販売」が行われる可能性があります。

そのような提案がされたときに「おかしいな」と気づくためにも、今回の事件の内容を理解しておくことはとても大切です。

それでは、「かんぽ生命保険の不利益な契約とはどのようなものだったのか」「どのような流れで被害が拡大したのか」について詳しくみていきましょう。

INDEX
  1. かんぽ生命保険の不正販売の実態 二重契約・無保険で顧客に大きなダメージ
    1. 保険販売の郵便局員は給与体系が実績主義に
    2. かんぽ生命保険の不正契約①保険の解約をさせない
    3. かんぽ生命保険の不正契約②保険の乗り換えで新たな契約を結べず無保険に
  2. かんぽ生命保険問題の被害者は数万人規模。なぜこれほど多いのか?
  3. 自分自身で金融商品を判断できる力が必要
  4. まとめ

かんぽ生命保険の不正販売の実態 二重契約・無保険で顧客に大きなダメージ

かんぽの保険

郵便局は全国の地域に根差したやり方で、長年顧客との信頼を構築してきたという歴史があります。

しかし今回の事件では「郵便局の言うことなら大丈夫だろう」と郵便局員の言葉を無条件に信頼した結果、被害が拡大してしまいました。

勧められた商品をそのまま契約してしまうことの危険性が、今回の件で改めて認識されたかたちとなっています。

保険販売の郵便局員は給与体系が実績主義に

郵便局では給与体系が実績主義に変更されており、基本給が減らされ、残りの報酬は保険契約の成績によって決められる仕組みになっていました。

そして保険契約に関する報酬に関しては、「乗り換えの保険契約の場合は、契約手当金や営業実績が新規契約の半分」と決められていたため、社員は乗り換えの保険を「新規契約」として認めてもらえるよう、様々な不正を行っていたのです。

保険を売らなければ毎月のお給料が減り、厳しいノルマもあったということが、今回のような無理な販売をすすめた原因になったと考えられています。

かんぽ生命保険の不正契約①保険の解約をさせない

かんぽ生命保険の不正契約では、新しい保険を契約させたにもかかわらず、旧保険も解約させない「二重保険」のやり方が多く行われていました。その流れは以下のようになっています。

  1. 新しい保険を契約させる
  2. この段階で旧保険を解約すると、新しい保険が「乗り換え」と判断されてしまう
  3. 新しい保険を契約して6か月が経つと、旧保険を解約しても乗り換えと判断されないという決まりがあるため、保険も6か月継続させ、7か月後に解約させる
  4. その結果、同時に二つの保険に加入している二重契約期間が発生し、その期間は2つの保険料を支払うことになった

この場合、旧保険を解約させないために「新契約申し込み後の6か月間は、旧保険を解約できない」という嘘の説明をして販売していたということです。

かんぽ生命保険の不正契約②保険の乗り換えで新たな契約を結べず無保険に

保険の乗り換えを勧められてまず旧保険を解約したものの、健康上の理由で新しい保険への加入ができず、その結果無保険になってしまったケースは以下のような流れとなっていました。

①保険の乗り換えを勧められる

②新しい保険を「新規契約」扱いにしたいため、すぐに新しい保険を契約させず、まず旧保険を解約させる

③旧保険解約から6か月経つと新しい保険が「新規契約」となるため、無保険期間を6か月継続させ、その後新しい保険に加入させる

これらの無保険期間中に病気になった場合は、入院保険などが支払われなかったことになりますし、そもそも「無保険である」と気づいていなかったパターンも多くなっています。

また、この無保険期間の後、7ヵ月目に新規の保険に入ろうとしても、高齢者の場合は健康上の理由で審査にひっかかってしまい、加入することができないケースも多発しています。

年を重ねて病気になりやすい年代となり、保険の恩恵を今から受けようというときに乗り換えをすすめられ、それがうまくいかずに無保険となってしまった人は、非常に大きな被害を受けていると言えるでしょう。

かんぽ生命保険問題の被害者は数万人規模。なぜこれほど多いのか?

 

かんぽ生命保険

かんぽ生命保険によると、保険の乗り換えで新たな契約を結べなかった事例が約2万3900件、二重契約で半年以上2つの保険の保険料を支払っていたケースは約2万2000件、乗り換えの際に一時的に無保険になっていたケースは約4万7000件あったとのことで、被害者は数万人単位となっています。

どうしてこれほど多くの人が、郵便局員の言うことを信じて契約をしてしまったのでしょうか。それは、やはり契約者側の保険の基礎知識が不足しているからと言わざるを得ません。

日本では海外のように投資教育が行き届いておらず、金融商品に関する基本知識すらないまま、保険をはじめとした金融商品を契約してしまう人が多くなっています。

そのため、保険にしても株や証券にしても、疑問を感じずにセールスの言うことをそのまま信じて商品を購入してしまう傾向があるため、今後も同じようなことが起こってしまう危険性があるのです。

自分で金融商品を判断することができないと、今回のような被害を受けてしまうリスクが高くなりますので、少しずつでも良いので保険をはじめとした金融商品の知識をつけていくことが大切です。

自分自身で金融商品を判断できる力が必要

かんぽ生命保険の検討

かんぽ生命保険の事件では、「郵便局員が嘘をつくはずはない」という信頼に加え、金融知識がない人が多かったということが多くの被害者を生んでしまいました。

しかし、今後もどこかで同じようなことが起こる可能性があります。

もしかしたら、自分が思っていたものと違う内容の保険を、すでに契約してしまっているかもしれません。

かんぽ生命保険の件をきっかけに、今まで契約していた保険内容を改めて確認してみましょう。

思っていたよりも手厚い補償となっていて、その分高い保険料を支払っている場合もありますし、知らない特約がついているかもしれません。

自分が契約している保険のことを今一度確認して良く理解しておくことで、かんぽ生命保険のような被害を未然に防ぐことができます。

まとめ

昨今はゆうちょ銀行だけではなく、様々な保険会社が保険の販売に力を入れています。

保険セールスの説明を何の疑問も持たずに信じてしまった場合、今回のように自分の不利益になる保険契約が行われてしまう可能性があるため、決して人ごととはいえません。

今回の件でわかったことは、保険などの金融商品を人任せにしてしまうことのリスクです。

保険のセールストークを聞いて不自然な点に気付くことができていたならば、このような被害をうけずにすんだと考えられます。

これからは自分の資産は自分で守る時代です。自分の資産や生活を守るため、金融の知識や保険の知識を少しずつ身につけていく必要があります。

「何かおかしいのではないか」「この契約は本当に大丈夫なのか」と考え、判断することができるように、積極的に金融知識を身につけていきましょう。