現在アメリカと中国の間で激しく行われている、輸入品への高関税の掛け合いや特定企業に対する取引の制限。

この両国の貿易上の摩擦は、米中貿易戦争と呼ばれています。

この米中貿易戦争が長引くことによって、株価は非常に不安定になってしまいます。

とても頭の痛いできごとですね。

しかし、米中貿易戦争とは具体的にどのようなものなのか知ることで、今後のどのように投資をしていけばいいのか、ある程度の傾向を予測することができます。

そこで、この記事では、

「米中貿易戦争って、なにが原因で起きたの?」
「米中貿易戦争の影響で、これから株価はどう変動していくんだろう?」

以上のような疑問を持っているあなたへ向けて、以下のような情報を紹介していきます。

  • 米中貿易戦争が起きた原因
  • 米中貿易戦争に対するアメリカの考え
  • 米中貿易戦争の今後長期化していく

この記事は5分くらいでカンタンに読めて、米中貿易戦争が起きた原因について、十分に知ることができますので、ぜひご一読ください。

INDEX
  1. 米中貿易戦争が起きた原因
    1. 原因はアメリカの覇権を中国が脅かしていること
    2. アメリカは中国との貿易で巨額の赤字を出している
    3. 中国がハイテク産業でアメリカを追い越す可能性がでてきた
  2. 米中貿易戦争に対するアメリカの考え
    1. 中国に市場を開放してもらいたい
    2. 中国にアメリカの技術を移転させたくない
    3. 国際貿易のシステムを改革したい
  3. 米中貿易戦争は今後長期化していく
  4. まとめ

米中貿易戦争が起きた原因

米中貿易戦争 原因②訂正版

米中貿易戦争とは、一言でまとめると2018年からはじまったアメリカと中国の二国間における貿易問題のことです。

ここから米中貿易戦争が起きた原因について、以下の内容で順番に解説していきます。

  • 原因はアメリカの覇権を中国が脅かしていること
  • アメリカは中国との貿易で巨額の赤字を出している
  • 中国がハイテク産業でアメリカを追い越す可能性がでてきた

それでは、紹介していきますね。

原因はアメリカの覇権を中国が脅かしていること

米中貿易戦争が起きた原因を一言でまとめると、

「アメリカの覇権を中国が脅かしているから」です。

アメリカは、現在世界一の超大国です。

その世界一の地位を守るために、アメリカは歴史的に自分たちに国力が近づいているNo.2の国を抑え込む政策をとってきました。

例えば、経済成長著しかった1980年代の日本は、経済面でアメリカの強力なライバル国になっていました。

当時の日本は現在の中国と同じく、自国の通貨安によって、自国で製造した商品の輸出によって黒字を出し、高い経済成長を実現していました。

しかし、日本は結局アメリカよって外交圧力を受け、円高を起こし産業競争力を衰退させ、その後に失われた30年に突入してしまったのです。

その後、アメリカからの圧力を受けた日本は、バブル崩壊、そして長期の経済停滞を起こして、国内企業はグローバルな市場で勝負をする力を失ってしまいました。

同じようにアメリカは、通貨安によって自国で製造した商品を輸出して高い経済成長を実現させてライバルとなった中国を抑え込む政策をとっているのです。

中国は経済成長が著しく、現在はすでにGDP規模がアメリカの60%を超えています。

解説:GDPとは…

ある一定期間に国内で新しく生産された財やサービスの付加価値の合計額のこと

GDPが世界第2位となり、産業競争力も世界トップレベルに近づいてきている中国は、やがてアメリカを超えて世界一の覇権国になってしまうかも知れません。

強力なライバルである中国を抑え込むための対策として、アメリカは輸入商品に関税をかけ、自国を超える経済規模・産業競争力を手に入れられないように仕向けたのです。

ここから更にくわしく、米中貿易戦争が起きた原因を深掘りして紹介していきますね。

アメリカは中国との貿易で巨額の赤字を出している

中国がアメリカの経済的な地位を脅かしている大きな原因の一つが、両国間にある巨大な貿易赤字です。

アメリカには現在、巨額の貿易赤字があります。

その貿易赤字を出す原因のほとんどが、中国を相手にしたものでした。

アメリカの総務省が2018年2月6日に発表した2017年の貿易統計によると、物品に関する対中貿易赤字は1年間で3,757億ドルとなっています。(出典:外務省中国・モンゴル第二課「米中経済関係」

この額は、2008年のリーマンショック以来の莫大な赤字で、特に対中国の赤字額は過去最大のものになりました。

貿易赤字を減らすことを公約として当選したトランプ大統領の政策として、アメリカは中国から輸入される製品に最低10%、最大で25%の関税をかけることにしたのです。

これに対して、中国も対抗策としてアメリカから輸入される製品に最低10%、最大で25%の関税をかけました。

しかし2019年6月現在、アメリカが25%の関税をかける中国からの輸入品総額は5,500億ドルです。

逆に2019年6月現在、中国が25%の関税をかけるアメリカからの輸入品総額は1,100億ドルしかありません。(出典:参議院企画調整室「米中貿易摩擦の行方と世界経済への影響 」

もともと、米中両国の貿易では、アメリカの方が輸入額が大きく、中国は輸入額が少ない状態でした。

このことから、アメリカとしては、お互いに25%の関税をかけ合った場合に、より損害がでるのは中国の方だと判断でき、貿易戦争を仕掛けることができたのです。

中国がハイテク産業でアメリカを追い越す可能性がでてきた

米中貿易戦争でアメリカは、中国製品に高い関税をかけているだけではなく、華為(ファーウェイ)のような世界トップクラスの技術力を誇る通信企業との取引を制限しています。

その理由は、中国がハイテク産業でアメリカを追い越す可能性がでてきた」からです。

中国は現在、「中国製造2025」というハイテク産業の振興政策を進めています。

「中国製造2025」は、中国がハイテク分野で国内外の市場を支配するという目的を実現するための政策で、次世代通信規格「5G」やロボット、新エネルギー車など、あらゆる最先端技術で世界トップの地位に立つために策定されました。

中国製造2025では、中国政府が重点的に発展させていくと決めたハイテク産業分野の企業に対して、巨額の補助金を投入することになっています。

政府が出す補助金によって開発資金を手に入れた企業は、国際的にも強力な競争力を持ちます。

そして、世界トップレベルの国際競争力を持ったハイテク企業は、やがてアメリカと競合します。

最終的には、中国企業がアメリカが持つハイテク分野でのシェアを奪い、近い将来に追い越してしまう可能性があるのです。

ハイテク産業のシェアで中国が世界一になってしまうと、アメリカにとっては、

  • 自国や同盟国の安全保障を保てなくなる
  • 中国に世界一の覇権国の地位を奪われる

以上のようなリスクに直面してしまいます。

例えば、もしアメリカやその同盟国が、自国の通信インフラのシェアを、中国共産党政府とつながっている可能性が高い華為(ファーウェイ)などに握られてしまうと、盗聴やサイバーテロを招く危険性が極めて高くなってしまうのです。

アメリカは、このようなリスクを回避して、自国が世界一の覇権国としての地位を保つために、華為(ファーウェイ)などのハイテク企業との取引を制限したのです。

米中貿易戦争に対するアメリカの考え

米中貿易戦争 原因③

ここから、米中貿易戦争に対するアメリカの考え・政策の方向性を解説していきます。

具体的には、以下の内容です。

  • 中国に市場を開放してもらいたい
  • 中国にアメリカの技術を移転させたくない
  • 国際貿易のシステムを改革したい

それでは、順番に紹介していきますね。

中国に市場を開放してもらいたい

アメリカは、中国に対してアメリカ製品のさらなる輸入拡大と、アメリカ企業参入のための市場開放を要求しています。

現在は、AmazonやFacebookなどのアメリカの大手企業などは、中国市場から排除されています。

例えば中国市場では、ネット通販の分野では、Amazonの代わりに中国企業のアリババがシェアを独占しています。

また、メッセージアプリの分野ではFacebookの代わりに中国企業のテンセントがつくったwechatがシェアを独占しています。

アメリカは、中国の「外国には自国製品を輸出して巨額の黒字を出しているのにもかかわらず、外国企業のサービスを参入させない」という態度に強い不満を持っています。

アメリカには、なるべく中国に対して、アメリカ企業のサービスや製品を販売させる機会をつくってもらい、貿易赤字を減らしたいという考えがあるのです。

中国にアメリカの技術を移転させたくない

アメリカが中国に持つ不満として挙げられる大きな要素に「他国企業が製造拠点を中国に置くときに、技術を中国企業に移転させなければならない」というものがあります。

中国が急速に世界トップレベルの技術開発力を手に入れたのも、この他国企業の技術を中国に強制移転させるという、国際的に見れば不平等で不公正なルールによるものです。

アメリカは自国の産業シェアを中国に奪われないようにするために、この技術移転の強制という不公正なルールを禁止させる目的で両国間での交渉を進めました。

その結果、中国はアメリカに譲歩する形で、2019年3月5日に「外商投資法」を制定して強制的な技術移転を禁止する条項を設定しました。(出典:日本貿易振興機構「外商投資法が成立、2020年1月1日から施行」

国際貿易のシステムを改革したい

アメリカは、中国の国際的な台頭を抑止するために、WTOを中心とした既存の国際貿易体制を改革しようと考えています。

解説:WTOとは…

1995年1月1日に設立された貿易に関する国際機関

  • 貿易に関連する国際協定を定める
  • 設定された協定の実施・運用を行う
  • 新たに出現した貿易課題への取り組みを行う

以上のような活動をして、多国間貿易体制の構築に貢献している

アメリカは、中国がWTOを中心とした多国間貿易体制を利用することで、自国が多大な不利益を被ったと主張しています。

WTOの中では「発展途上国」と規定された国は、「特別かつ異なる待遇(S&D)」という貿易自由化の義務の一部が緩和・免除される枠組みが適用されます。

発展途上国として位置づけられている中国は、この枠組を利用して、他国が市場に参入できなくなるような保護貿易をし続けられたのです。

アメリカは中国に対抗するために、2018年9月25日に、ニューヨークで開催された日米欧の通商閣僚会合で、WTO改革の共同提案を行うことで合意しました。

共同提案には、中国を意識して、自国の特定産業を優遇する制度を導入した国へ罰則などを盛り込む予定になっています。(出典:日本関税協会「日米欧の三極貿易大臣会合、WTOの改革に向けて合意(三極会合)」

米中貿易戦争は今後長期化していく

米中貿易戦争 原因④

米中貿易戦争は、すぐには解決せずに今後長期化していくと見られています。

アメリカは、中国に国際的な覇権を握らせないように、今後も交渉をして譲歩を迫ります。

しかし、アメリカの中国に対する要求は、中国の市場を「現在の国家資本主義体制を変革して徹底的に自由化するように」というものです。

解説:国家資本主義とは…

市場原理に基づいて企業が競争する自由主義型の資本主義とは異なり、国家が市場に介入して経済活動を主導する資本主義のこと

中国の市場が完全自由化すると、中国共産党による独裁体制が不安定になってしまいます。

中国側は、中国共産党による体制維持をすることが大前提になっています。

なので、中国にとって、国家資本主義体制を変革することは不可能なことなのです。

アメリカによる市場の自由化要求と、中国の国家資本主義体制の維持という相反する目的が衝突しているのが、現在の米中貿易戦争の実態です。

両国とも以上の目的については、一切妥協することがないので、現状では米中貿易戦争が終結する見通しは立っていません。

以上のことから、結論から言うと今後も米中貿易戦争は解決せずに長期化していくと予測できます。

まとめ

ここまで、以下の内容をお伝えしました。

  • 米中貿易戦争が起きた原因
  • 米中貿易戦争に対するアメリカの考え
  • 米中貿易戦争の今後長期化していく

この記事で紹介したように、今後も米中貿易戦争は長期化していくと予測されています。

米中貿易戦争は、今後いつ収束するのか見通せない状況となってるなか、両国の突然の関税引き上げなど大胆な政策によって株価は乱高下しています。

米中両国がいつ、どのようなタイミングで市場に影響を与える行動をとるのかは予測できないことなので、今後かなりの長期間が、投資への判断が難しい時期になるといえるでしょう。