こちらの記事では、新自由主義という経済理論が日本経済に与えた影響についてお話します。
新自由主義とは「政府が企業に対して行う規制を緩和・撤廃して、民間の自由で活発な力に任せて経済成長を目指す」という考え方です。
1990年代に新自由主義の経済政策を取り入れた日本では、国民の働き方や、給与の上昇率などに大きな変化が起こりました。
たとえば、大企業が過去最高収益を計上したことや、非正規雇用の増加、格差の拡大なども日本経済に新自由主義を導入したために起きた現象なのです。
この新自由主義が日本経済に、一体どのような影響を与えたのかを知ることで、今後の景気や雇用がどのように変化していくのかの理解に役立ちます。
そこで、この記事では、
「新自由主義ってどんな考え方なの?」
「新自由主義は日本経済にどんな影響を与えたの?」
以上のような疑問を持っているあなたへ向けて、新自由主義が日本経済にどのような影響を与えたのかについてを紹介していきます。
具体的に紹介する内容は以下のものになります。
- そもそも新自由主義とはなにか?
- 新自由主義が日本に導入された理由
- 新自由主義が日本に与えた影響
この記事は5分くらいでカンタンに読めて、新自由主義と現代の日本経済の関係ついて十分に知ることができますので、ぜひご一読ください。
日本に影響を与えた新自由主義とはなにか?
ここでは、そもそも新自由主義とはどのような考え方なのかを紹介していきます。
記事の冒頭でも紹介しましたが、新自由主義とは「政府が企業に対して行う規制を緩和・撤廃して、民間の自由で活発な力に任せて経済成長を目指す」という考え方です。
新自由主義の考え方を導入した国では、具体的に以下のような政策が行われます。
- 政府から民間企業への規制が緩和される
- 国家が運営していた事業を民間事業者が運営するようになる
- 社会保障費が削減される
- 大幅な減税が行われる
そして、上記の新自由主義の政策が行われた結果、社会ではどのようなことが起きるのかを書き出してみると、以下のようになります。
- 競争力がある企業の利益が増大する
- 国民の貧富の格差が拡大する
以上のような現象が、なぜ起きるのかをカンタンに説明します。
たとえば規制緩和により、企業は、それまでは禁止されていた派遣社員または非正規雇用者を雇うことができるようになります。
非正規雇用者は、正社員よりも安い給料を払えば済むので、雇えば企業は人件費を低く抑えることができます。
人件費で多くの支出が出ない分、企業は多くの利益を出すことができるのです。
また、減税により、企業の経営にかかる法人税などを低くすることで、必要な出費が抑えられて利益を増額することができます。
新自由主義は、まず大企業が大きな利益を得られるよう優遇した後、豊かになった企業の潤沢な資金が市場に行き渡れば、結果的に国民全体が豊かになるだろうという理論によって成り立っています。
しかし、現実には、企業が利益を出しやすいように優遇される一方で、規制緩和によって非正規雇用者として働くことになった人は、正社員よりも安い給料しかもらえなくなり、貧困化しているのが現状です。
現在でも、富める大企業と非正規雇用者の両者の格差が拡大し続けています。
富める人間と貧しい人間の格差拡大を容認する新自由主義は、いわば弱肉強食の経済なのです。
この新自由主義は、現在、世界中の国で導入されています。
なぜ新自由主義が世界中の国で支持をされているのか、理由を説明していきますね。
新自由主義は、市場経済を規制・管理したために経済停滞を引き起こした1980年代の欧米諸国で、解決策として提唱されました。
新自由主義が導入されるまでは、アメリカやイギリスなど欧米先進国の社会統治システムは「大きな政府」といわれる、民間に対する規制や管理が強いものになっていました。
この「大きな政府」は、公権力による民間企業・市場への規制や、社会福祉の充実などを図ることで、国民の生活を政府の責任で保証するというシステムです。
「大きな政府」という仕組みでは、国民の豊かな生活が保証されるというメリットがある反面、国家運営のために必要な支出が増大するというデメリットがあります。
1970~80年代のアメリカやイギリスなどでは、オイルショックが原因で落ち込んでしまった経済状況の中、「大きな政府」の巨大な支出に耐えることができませんでした。
1973年に起きた第四次中東戦争の影響で、世界の主要な産油国であるアラブ諸国が、原油の減産と大幅な値上げを行ったことにより、輸入国が失業、インフレ、貿易収支の悪化など経済的な打撃を受けた事件
そして、慢性的な経済停滞や財政赤字、さらに高い失業率に悩まされ続けることになります。
「大きな政府」のもとでは、この経済的な苦境を抜け出すことができないと判断した当時の欧米諸国の政府は、以前から経済学者によって提唱されていた新自由主義の導入を決定しました。
イギリスでは、1980年代から当時のマーガレット・サッチャー政権によって、電気、水道、ガス、医療、社会保険などの生活に必要なインフラや、教育といった分野は次々と民営化されました。
また、財政支出の中で大きな負担となっていた社会保障費の大規模な削減も行われました。
新自由主義政策の影響で、イギリスの産業は金融業を中心に利益率の増加、効率化の推進というメリットを得ましたが、同時に格差の拡大が進み、多くの国民が貧困化しました。
また、同時代のアメリカでも新自由主義を導入した当時のロナルド・レーガン政権によって、民間企業への規制緩和、減税、社会福祉の削減が行われました。
「レーガノミクス」と呼ばれた、レーガン政権によるこれら一連の新自由主義政策で、結果としてアメリカ社会は、大企業・富裕層は豊かになり、一方で一般国民の所得低下が進むことになります。
大企業や富裕層がこれまでよりも豊かになり、多くの国民が貧困化するという特徴を持つ新自由主義は、1990年代以降の日本でも経済政策として導入されることになりました。
次からは、日本に新自由主義が導入された理由を解説していきます。
新自由主義が日本に導入された理由
ここでは、日本経済に新自由主義の考え方が導入された理由を紹介していきます。
結論から言うと、新自由主義が日本に導入された理由は「日本企業の国際的な競争力を上げるため」です。
1990年代以降に、世界経済のグローバリゼーションが進行したことにより、中国などの外国が国際的に強い競争力を持つようになりました。
人やカネ、モノが国を超えて活発に移動して、世界の産業や経済市場の統合が進む現象のこと
例:日本の企業が人件費の安い中国に工場を建てて製品の生産をするなど
他国企業の台頭によって、1980年代まで世界中で高いシェアを誇っていた日本企業の国際競争力は相対的に低下していくことになったのです。
日本企業の競争力低下に危機感を覚えた財界は、国内経済の新自由主義化を政府に対して強く要請しました。
理由は、経済を新自由主義化することによって、労働者に支払う給料のコストカットなどができるようになり、結果的に大企業が多くの利益を出し、競争力の向上につながるからです。
日本経済の新自由主義化は、2000年代の小泉政権時代に本格化します。
小泉政権下で行われた新自由主義的な改革は、現在の日本経済および、日本社会に暮らす国民に非常に大きな影響を与えました。
次からは、経済の新自由主義化が日本全体に与えた影響を解説していきますね。
新自由主義が日本に与えた影響
ここからは、新自由主義という考え方が日本社会に与えた影響を紹介していきます。
具体的には以下の内容です。
- 大企業が巨額の利益を出せるようになった
- 公共サービスが民営化された
- 雇用が不安定になった
それでは、順番に紹介していきますね。
大企業が巨額の利益を出せるようになった
2000年代以降に、小泉純一郎政権が行った規制緩和政策によって、大企業が自由に経済活動するための環境がつくられました。
小泉政権下での派遣法改正によって、それ以前は禁止とされていた、製造業などの日本経済を牽引してきた分野での派遣労働ができるようになりました。
非正規雇用で働く派遣労働者は、一般的に正社員よりも安い賃金で働くことになります。
賃金の安い非正規雇用者を雇うことによって、人件費をコストカットできた大企業は、巨大な利益を出すことができるようになったのです。
先に豊かになった大企業の余剰利益を一般の企業や国民に還元して経済を回そうという、この新自由主義的な規制緩和政策は、結果として大企業自体の利益拡大には貢献しました。
しかし、その反面に、安い賃金で働く国民のもとには富が還元されず、貧富の格差拡大を招いてしましました。
公共サービスが民営化された
2000年代以降の日本では、新自由主義化した他国と同じように、それまで国家が担当していた様々な事業・サービスを民間事業者が運営できるように転換してきました。
この国家が担っていた事業が民間事業者によって運営されるように転換する政策を「民営化」と呼びます。
民営化をする目的は「事業の効率化」「サービスの向上」「税金の納入による国民負担の軽減」などがあります。
日本で民営化された事業としては、郵便局、高速道路の建設・運営会社などが代表的な例です。
国が運営に関わっている事業は、いくら利益を出しても従業員は同じ給料をもらい続け、さらに解雇もされないので、提供するサービスの質がたとえ悪くても業務が改善されないという問題点を抱えていました。
しかし、民営化がされることによって、より多くの利益を出せば、従業員の給料反映されるなどの恩恵があります。
また、民営化された組織は、自力でサービスを向上しなければ事業の運営を続けることができなくなるので、適当なサービスを提供するのではなく、サービスの受け手に評価されるために、業務を改善し続けるようになるのです。
日本では、現在まで、かつての国有企業を民営化する動きが続いています。
雇用が不安定になった
新自由主義的な経済政策を受けて、一般国民の雇用は、結果的に不安定なものになりました。
2000年代にできた小泉政権下で行われた規制緩和政策によって、企業が非正規雇用者を従業員として雇うことができる分野が大幅に拡大しました。
非正規雇用者は、正規で雇用されている従業員よりもカンタンに他業種に移って働ける分、賃金が少なく、また保険に加入できないケースもあり、労働環境は不安定なものになっているのが現状です。
本来は、非正規雇用者とは、衰退している産業から新しく成長していくであろう産業へ、多くの労働者を移動させて経済成長を達成する目的で生み出された側面があります。
実際に、正社員よりも支払う給料の安い非正規雇用者を活用することで、競争力のある企業の収益は増大しました。
しかし、非正規雇用で働いている人の給料は現在まで依然として低いままで、また保険にも加入しづらいなど、困窮している人が多いのが現状です。
一部の大企業の経営者層や社員、そして投資家と、非正規雇用者の間には、同じ社会に所属しながら、収入面においては大きな格差が生まれてしまいました。
そして、小泉政権の規制緩和政策以降、非正規雇用者の数は拡大し続けます。
現在では日本国内の労働者の5人に2人が非正規雇用者として就労しているのです。(出典:総務省統計局「労働力調査 平成30年平均」 )
新自由主義的な政策によって、雇用が不安定化した現在の社会では、良質な雇用を提供する職場に就職する、フリーランスとして働く、投資で収益を出すなど、自分の努力で金銭を稼いで身を守らならなければなりません。
まとめ
ここまで、以下の内容をお伝えしました。
- そもそも新自由主義とはなにか?
- 新自由主義が日本に導入された理由
- 新自由主義が日本に与えた影響
バブル崩壊以降の長い不景気を打開する方法として2000年代に導入された新自由主義的な政策によって、結果として一部の大企業の利益を著しく増加させることに成功しました。
しかし、同時に豊富な給料と社会保険を提供され、会社によって生活を守られていた正社員の雇用枠は減少して、逆に非正規雇用者が増加することになりました。
非正規雇用者は正社員に比べ給料も少なく、保険も受けにくいなど、不安定な生活を強いられているのが現状です。
そして、収入の低い非正規雇用者は、日常生活で多くの商品を購入するような消費活動を行えません。
消費活動を十分に行えない非正規雇用者を増やしたことは、約6割が個人個人の消費によって成り立っている日本経済の停滞を招いた一因であるともいわれています。
正社員として働いている人の生活も、経済が停滞してしまっては上向くことはありません。
正社員、非正規雇用者ともに、現状の社会で豊かになるためには、自分の力で他に収入源を持って稼がなければならないのです。
雇用される以外で、自分の力で稼ぐ手段として投資などがあります。
投資については、当サイト「お金の窓口」で紹介している記事やセミナーでくわしく学ぶことができるので、ぜひ活用してみてください。