火災保険への加入時や更新時、気になるのが保険料です。長期に渡って支払うことになる火災保険料は、やはり払い損になってしまうのでしょうか?
結論からいうと元は取れます。
では、どういった事故で支払金額がいくら程度になるのでしょうか。実際に火災保険の補償内容から事故例に至るまでを紐解いて解説します。
これから加入する方も、すでに加入中の方もぜひ参考にしてみてくださいね。
火災保険の事故件数と支払金額が多い災害は?
火災保険の支払いはどのような事故が多く、どれぐらいの金額が支払われているのでしょうか。
その詳細を調べました。
火災保険の事故件数トップは自然災害
事故件数 | ランキング | 平均支払額 | ||
事故種別 | 事故件数(件) | 事故種別 | 事故事例と支払金額例 | |
水災・風災・雪災など | 21,025 | 第1位 | 火災 | 火災による全損時の建物平均お支払保険金
1,199.4万円 |
漏水などによる水濡(みずぬれ) | 4,057 | 第2位 | 漏水などによる水濡(みずぬれ) | 天井裏の水道管が破損し水濡れ損害が発生した。
71.1万円 |
不測かつ突発的な事故(破損・汚損など) | 2,864 | 第3位 | 水災・風災・雪災など | 集中豪雨で自宅が床上浸水した。
152.7万円 |
落 雷 | 2,810 | 第4位 | 盗難による盗取・損傷・汚損 | 泥棒が入って窓ガラス、ドアが 破損した。
91.9万円 |
建物外部からの物体の落下・飛来・衝突など | 1,719 | 第5位 | 落雷 | |
盗難による盗取・損傷・汚損 | 1,583 | 第6位 | 建物外部からの物体の落下・飛来・衝突など | |
火 災 | 926 | 第7位 | 不測かつ突発的な事故(破損・汚損など) | 物を運んでいるときにバランスを崩しドアに当たりドアが破損した。
26.9万円 |
※出典:損保ジャパン 2012年度個人用火災総合保険 保険金支払実績より
火災保険で保険金が支払われる事故件数として多い原因は、意外にも火災ではありません。トップになっているのは水災・風災・雪災という自然災害です。2012年では、その件数は約21,000件もの数で2位の4,057件とくらべても圧倒的です。
近年では、長雨やゲリラ豪雨などの影響での水災や、台風などの風災、大雪などの雪災も増加しています。それぞれの災害には年ごとにばらつきがあるものの、自然災害としてまとめると例年最多です。
注目したいのは、2位の漏水などによる水濡れ被害です。人口の高齢化とともに住宅も高齢化が進み、給排水設備などの老朽化も深刻さが増しています。
戸建てであれば自宅のリフォームのみで改善を図ることができます。しかし、マンションの場合には自宅のみとは限りません。上階の他室から水が漏れてくる可能性もあり、全体的な修繕が必要となる場合もあります。
火災保険の支払金額トップは火災
火災の事故件数は年々減少傾向にありますが、一度の事故で全焼してしまうケースも珍しくありません。全焼した場合の被害支払金額は、平均して約1,200万円とやはり支払金額も高額になります。
支払件数トップの自然災害も、その件数の多さから被害額も3位となっており、件数・金額ともに多いのが特徴的です。
しかし件数・支払金額で総合的に順位が高かったのは、漏水などによる水濡れ損害です。
件数は自然災害に比べて大幅に少ないものの、修復などにかかる費用が全体に及ぶケースが多いことから支払い金額が平均して高いという特徴があります。
検証!火災保険の支払金額
火災保険の支払金額で火災保険料のもとはどれぐらい取れるのでしょうか?具体的にはどんな内容となるのか、例をあげて解説していきます。
ケース1 戸建ての場合
戸建てのシミュレーション条件は下記となります。
都内在住で、構造は最も保険料の高い構造とされるH構造です。
建物、家財の補償をセットし、地震保険にもそれぞれ加入。地震保険の保険金額は火災保険で設定した保険金額の最大50%までという決まりがあるため、それぞれ最大の保険金額で設定しました。
所在地 | 東京都 |
建物構造 | H構造 |
建物の保険金額 | 1,000万円 |
家財補償 | 500万円 |
地震保険(建物) | 500万円 |
地震保険(家財) | 250万円 |
保険期間 | 10年 |
続いて火災保険の補償内容です。基本補償となる部分は保険会社によって違いがあり、オプションで選択することが可能な場合もあります。
ここではほぼすべての補償リスクをつけています。
補償リスク | |
火災、落雷、破裂・爆発 | 〇 |
風災・ひょう災、雪災 | 〇 |
水災 | 〇 |
盗難 | 〇 |
水濡れ | 〇 |
騒じょう | 〇 |
外部からの落下、飛来等 | 〇 |
破損・汚損など | 〇 |
それでは実際にシミュレーションしてみましょう。
- 10年分の保険料 相場平均額:316,000円(※1)
- 事故例 集中豪雨で 自宅が床上浸水した: 1,527,000円(※2)
差額=121.1万円
近年、長雨やゲリラ豪雨などの自然災害が増加。都市部でも一定の雨量を越えてしまうと、処理しきれず下水から溢れ浸水する被害も増えています。
火災保険では水災補償をつけることで、雨や台風などを原因とした水害に備えることができます。
床上浸水した場合の修繕費用は多額になるケースが多く、経済的負担も大きいのが特徴的です。
ケース2 マンションの場合
マンションの場合は構造がマンション専用の構造であるM構造に割り当てられます。
その他の条件は建物と同様です。
所在地 | 東京都 |
建物構造 | M構造 |
建物の保険金額 | 1,000万円 |
家財補償 | 500万円 |
地震保険(建物) | 500万円 |
地震保険(家財) | 250万円 |
保険期間 | 10年 |
続いて、火災保険の補償内容を選びます。
マンションの場合、建物が比較的頑丈なことが多く、高層階などでは水災のリスクも軽減します。
そのため、補償リスクから水災を外すという人も多いですが、河川や災害の恐れのある裏山が近くにあるなどの場合は水災補償もセットしておくと安心です。
お住まいの環境に合わせて選択するようにしましょう。
ここでは水災もセットしたプランでシミュレーションをします。
補償リスク | |
火災、落雷、破裂・爆発 | 〇 |
風災・ひょう災、雪災 | 〇 |
水災 | 〇 |
盗難 | 〇 |
水濡れ | 〇 |
騒じょう | 〇 |
外部からの落下、飛来等 | 〇 |
破損・汚損など | 〇 |
- 10年分の保険料 相場平均額:144,425円(※1)
- 事故例 物を運んでいるときにバランスを崩し、 ドアに当たりドアが破損した。:支払い保険金 269,000円(※2)
差額=約12.4万円
今回の損害は「破損・汚損」の補償リスクに含まれるケースです。
普段日常生活の中で起こりうる比較的小さな事故であっても、火災保険の補償対象となる可能性があります。
自然災害や水濡れにくらべると、事故件数としては少なくなっています。しかし火災保険の補償対象となる認識がなく、請求されていないケースも多いのが実情です。
ケース3 マンション(漏水などによる水濡れ)の場合
最後のケースは事故件数・支払金額ともに2位となった漏水などによる水濡れ損害の場合の支払い事例で検証してみましょう。
条件はケース2と同様です。
- 10年分の保険料 相場平均額:144,425円(※1)
- 事故例 天井裏の水道管が 破損し水濡れ損害が 発生した。:支払い保険金 711,000円(※2)
差額=約56.6万円
漏水などの水濡れの場合には、天井部分だけでなく、床や家財まで損害を受ける場合が多く、被害額も膨らむ傾向にあります。
※1 シミュレーション参考:保険比較サイトi保険※2 支払金額例:損保ジャパン日本興亜「平成28年 8月改定個人用火災総合保険」より
火災保険で補償を選ぶポイントは?
戸建てとマンションでは被害を受ける災害リスクや損害部分にそれぞれ違いがあります。また、立地や住環境によっても予想される災害は変わります。
では、どのような環境でどういった補償を選べばよいのでしょうか?火災保険の補償内容の選び方を解説します。
戸建ては自然災害がマスト
戸建て住宅の場合、最も多く被害が予想されるのが台風などによる自然災害です。
川沿いや海沿いのような水辺の近くであれば水災、雪の多い地域では雪災の補償内容が必須になります。また水辺の近くではない場合でも、裏山がある場合は注意が必要です。長雨の影響からくる土砂災害が起こる可能性が充分考えられます。
また、住宅地でもゲリラ豪雨などで下水から水があふれ床上浸水になるといった都市型の水害も。自治体の発行しているハザードマップを参考に補償内容を検討しましょう。
台風や竜巻などの災害では、建物に影響を及ぼす大きな被害となることもあります。どこまでが補償対象となるのかも確認しておきましょう。
マンションは漏水や水濡れ事故に備える
マンションで多いリスクとしては漏水などによる水濡れ損害です。
漏水した場合などは、同じマンション内で加害者と被害者という立場ができてしまいます。損害を補償するリスクはもちろん、トラブルに発展しないためにも「個人賠償責任」や「水濡れ原因調査費用」といった特約もつけることをおすすめします。
一方で、戸建てに比べ建物が頑丈なマンションの場合、水災の補償は必ずしも必要ではありません。高層階に住んでいるなど、床上浸水になるリスクが低い場合には不要です。
ただし、住まいの周辺に河川や裏山があるなどの場合は、被害を受ける可能性も充分考えられますので、住環境に合わせた補償内容を選択しましょう。
火災保険をムダにしないためにも専門家へ相談してみよう!
今回の記事では、実際に損害を被ったときに火災保険で元が取れるのかを検証してみました。
例としてあげた事例はほんの一部です。素人目には何ともないように思えても、専門家から見ると火災保険の補償対象となる被害であることもしばしばあります。
自腹で修復したあとでも、専門家に相談したことで保険金が支払われたケースも珍しくありません。
ぜひ専門家に相談して火災保険を有効活用しましょう!
戸建てやビル、工場など、火災保険加入済みの物件をお持ちの方はこちらをご覧ください。
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