損保ジャパンが発表した合法リストラスキームが、社員にとってあまりにも厳しい内容であると話題になっています。
多くの人が注目している理由は、今回の損保ジャパンのリストラが一般的な方法ではなかったためです。社員にとっては逃げ場がないほど厳しい、逆に会社にとってはデメリットがゼロの、ある意味画期的ともいえる手法でした。
一体その内容はどのようなものだったのでしょうか?巷で話題となっている損保ジャパンの合法リストラスキームについて検証していきましょう。
損保ジャパンが発表した衝撃的な『事実上のリストラ』
損保ジャパンえげつねえな
①200億で不人気な介護会社を買収
②4,000人のリストラ対象者に介護事業への異動通知を出す
③多くの人は移りたがらずそのまま退職
④自己都合退職なので割増退職金(1,000万/人→計400億)を支払わず済む誰だこの200億も得するスキーム考えたFAは。
— 外資系コアラ (@KoalaFinance) 2019年6月26日
損保ジャパンが発表したリストラ内容をひとことで言うと「損保ジャパンの社員を業種が違う介護関係の子会社へ配置転換し、それを受け入れない社員は自己都合で退職してもらう」というものです。
通常のリストラであれば「会社都合」となるため、損保ジャパン側は割り増しした退職金(1人当たり1000万円)を支払わなければなりません。
しかし、異動したくないという理由で退職すると自己都合退職となるため、社員は退職金の割増金を受け取ることができず、「職を失い、退職金も少ない」という厳しい状況に置かれてしまうのです。
損保ジャパンは社員が「異動が嫌だから辞めます」と言ってくれるだけで、割増金の1000万円を支払う必要がなくなります。
今回のリストラ対象は4000人ですので、社員を自己都合退職に追い込むやり方で、会社は約400億円を節約できることになる見込みです。
社員にとってみれば、定年まで働いていない状態で退職金を受けとるため、「定年退職時にもらうはずだった退職金」よりも少ない額となってしまいます。また、それを埋めるための割増金もありません。
それに加え、自己都合で退職した場合は失業保険をもらうまでには約3ヶ月間待たねばならないなど、社員にとっては自己都合で会社を辞めるとデメリットが多くあります。
そのような状態では、家族の生活を支えていくことも難しくなると言わざるを得ません。
家族のために介護の子会社に移っても年収は大幅減
一般的に考えて、今まで損害保険に関わってきた人達が、突然介護の現場で働くことは、精神的にもかなり辛いと想像できます。
今までスーツを着て金融業界でがんばってきた人達が、おむつ替えや食事の介護などをしろと突然言われても、「それは無理に決まっている」と誰しもが思うはずです。
しかし、
- リストラ対象の年代は家族を養っている場合が多いこと
- 職を辞めても次の職を見つけられるようなスキルがある人が多くはないこと
などから、家族の生活や子供の養育費を考え、異動を了承する人も多いと考えられます。
ただ、家族のために耐えて介護会社への異動を了承したとしても、今までと同じというわけにはいきません。介護業界の平均給与は金融業界よりも格段に低いため、介護の子会社に移ったあとの給与も大幅に減ってしまうのです。
今回のニュースでは「1人当たり250万円の人件費削減」と報じられているため、煮え湯を飲んで介護の職場に移ったとしても、年収が250万以上減るという厳しい状況になります。
しかも、介護業界の平均給与は300万~400万のため、転籍後にいっそう給与を減らされてしまう可能性も大きく、特に家族を養っている社員にとっては八方ふさがりの状態となっています。
勝ち組の大手企業の社員が天国から地獄へ
損保ジャパン、採用を強化しつつ、4,000人の人員整理も行います。メガバンクに続き、金融業界のスリム化が進行していますね。 pic.twitter.com/6GtwZB52rk
— 新宿好き (@shinjuku1999) 2019年6月27日
損保ジャパンは売上高が2兆円以上あり、東京海上日動火災に次いで業界第二位の損害保険会社です。
転職サイトを運営するグローバルウェイの調査「保険業界の年収」によると、業界での給与はアフラック生命保険に次いで第二位となっており、40歳以上の社員はほぼ1000万超えの給与と言われるほどで、損保ジャパンは名実ともに「誰もがうらやむ勝ち組企業であった」と言えるでしょう。
しかし、今回の「グループ企業への配置換え」という間接的リストラ政策により、高年収の勝ち組だった損保ジャパンの社員が、
- 金融からまったく畑違いの介護の仕事をしなければならなくなる
- 介護業界の給与水準になるため、年収は半分以下に激減
- 辞めれば自己都合で少ない退職金しかもらえない
という状況に追い込まれています。
このようなことから、これからは大企業に働いていたとしても、自分や家族の生活を守ることが難しい時代になってきたと言えます。
リストラは極秘裏に進められて突然発表されるため、明日は我が身かもしれません。
損保ジャパンだけではない!大企業のリストラは着々と進んでいる
今回の損保ジャパンのリストラ計画は非情なやり方ではありますが、「損保ジャパンがそれほど追い込まれている」と考えることもできます。
近年、IT化やAIの発達により人間が行うべき仕事の量が減り、少ない社員数でも同じパフォーマンスを上げることができるようになってきています。
そのようなことから、損保ジャパンだけではなく、多くの企業が「人材を多く抱えすぎている」ということを問題視しています。
実際、大企業のリストラは2018年から進んでおり、有名な大企業がリストラを行ってきています。
東芝 | 7000人 |
---|---|
ルネサス | 1000人 |
パイオニア | 3000人 |
日産 | 4800人 |
三井住友FG | 5000人 |
富士通 | 2850人 |
みずほ | 19000人 |
MUFG | 10000人 |
JDI | 1200人 |
損保ジャパン | 4000人 |
このように、一昔前は花形と言われてきた企業ですら、プライドを捨てて生き残るために大規模な人件費削減を行っています。
一見勝ち組で安定しているように見える会社でも、明日はどうなるかわからない「不透明な時代になった」ということができるでしょう。
損保ジャパンのリストラスキームが今後広がる可能性も
損保ジャパンのリストラ方法は、社員にとっては厳しいものでしたが、『リストラスキーム』としては非常に洗練されています。「誰が考えたかはわからないが、見事なものだ」という意見があるのも事実です。
損保ジャパンは今回のリストラ計画に先駆けて、介護会社『ワタミの介護』を約210億円、『メッセージ』を約350億円の合計約560億円で買収しています。
しかし、今回のリストラ計画で
- 社員の移動による人件費の削減が毎年約100億円以上
- 支払わなくてもすむ退職金割増金400億円
が損保ジャパンとしては浮いた計算になり、介護会社の買収でかかった莫大な投資をたった2年で回収できる計算となっています。
人件費を削減したい多くの企業は、
- 企業側にリスクがない、非常に効率的なリストラスキーム
としてこのやり方に非常に注目しており、今後このリストラ手法を取り入れる企業が増えてくる可能性があります。
損保ジャパンのリストラスキームは違法ではないのか?
損保ジャパンのリストラスキームは社員や家族の人権を無視したような、今後の生活を全く考えていないものであったため、「違法なのではないか。ブラックなのではないか」と考えている人もいるようです。
しかし、このリストラスキームは社員にとっては厳しいものではありますが、法律的には問題が無いとの見方が強いです。
介護会社は買収されて、グループ会社の一員となっているため、今回の介護会社への異動も、日ごろから行われている人事異動の延長線上にあります。
どの企業も「転勤」や「部署異動」「子会社への出向」は日常茶飯事であり、今回の介護子会社への異動も、それと同じであるため、違法性はないとのことです。
当たり前は存在しない 先を見据えて備える人が勝つ
今回の損保ジャパンのリストラでは、家族を持っている人は、より厳しい状況に置かれています。
子供の教育費がまだまだかかる40代、50代でリストラされたり、給与が大幅に減ったりしたら日々の生活はもちろんのこと、満足な教育を受けさせてあげることもままならなくなります。
その結果、進学のための塾に充分な費用をかけてあげられない、行きたい学校に行かせてあげられないなど、子供の将来にも影響が出る可能性もあるのです。
突然そのような厳しい状況に置かれてから備えを始めたとしても「時すでに遅し」です。
今は、大企業で働いていれば安泰という時代から少しずつ変化が起こっている段階です。
その変化をいち早く感じ取っている人は自分や家族を守るため、自分のスキルを磨く、万が一の時のために資産を運用するなどして、将来を見据えた備えを始めています。
これからは時代の変化に対応しようと真剣に考えていく人が勝ち残る時代であり、少しでも早く行動に移す必要があります。
まとめ
銀行やメーカーが相次いで人員削減を行っているように、企業も生き残るために必死にならなければならない状況に少しずつ追い込まれてきています。
また、日本の景気状況も良いとはいえず、消費税やアメリカの金融政策などにより今後の見通しも厳しいため、「企業にとってメリットしかない合法リストラスキーム」を実施する企業が今後も増える可能性が高まってきています。
「退職までお給料は少しずつ上がり、最後に多くの退職金をもらってやめる」といった、今までの『当たり前』や『常識』が通用しない時代になっているということをしっかりと理解しておかねばなりません。
これからは自分の能力やスキルを高め、何かあったときに自分や家族がある程度生活していける資産づくりが急務と言えるでしょう。
お金の窓口では、何が起こるかわからない時代でも家族を守るための、『実際の行動』をお伝えします。
損保ジャパンが4000人削減、というニュースが流れていますが、本学就職支援センターの前に置かれている某新聞就活PR版には、こんな広告も載っており、いろいろと考えさせられる。 pic.twitter.com/APzQPVOfgk
— 国立研究開発法人原田知世研究機構 (@norinori1968) 2019年6月24日