近年、仮想通貨の流通量は年を追うごとに増加しています。その投機的性質から、多額の利益を出した人も多いでしょう。

一方、気になるのが「税金」です。

仮想通貨が初めての投資だという人も多いと思いますが、利益額が一定額を超えると、投資から生じた損益を計算し税務申告を行わなければなりません。

「せっかく大きな利益を得たのに、こんなに税金が取られるの?」というお話もよく耳にします。

そこで本記事では、仮想通貨から生じた税金を節約する(節税)方法をご紹介します。
INDEX
  1. 仮想通貨の税金基礎知識【2019年最新】
    1. ①税率はどのくらい?
    2. ②どのタイミングで課税される?
    3. ③所得の区分は?
  2. 仮想通貨の節税方法6選
    1. ①利益確定せず、保有し続けることで節税
    2. ②ふるさと納税で利益を抑えることで節税
    3. ③個人事業主として経費計上することで節税(青色申告)
    4. ④個人事業主として経費計上することで節税(白色申告)
    5. ⑤法人化することで節税
    6. ⑥マイニングにかかる費用を経費とすることで節税
  3. 【応用編】仮想通貨案件に取り組んでいる場合
    1. ①エアドロップや仮想通貨ウォレット案件等で、配当や紹介報酬を受け取った場合
    2. ②ICO/IEOに関する課税関係
    3. ③海外で登記されている取引所の仮想通貨
    4. ④いわゆるGOXした場合
    5. ⑤資産を預けていた取引所・ウォレット案件が破綻した場合
  4. 仮想通貨の税額を計算する時の注意点
  5. 法人として仮想通貨を使用している場合には、税制改正に注意
  6. 仮想通貨からの税金を正しく節税しよう

仮想通貨の税金基礎知識【2019年最新】

仮想通貨の税金基礎知識【2019年最新

仮想通貨の節税を考える前に、仮想通貨にかかる税金を理解しておきましょう。

①税率はどのくらい?

仮想通貨に大きく関連する税金は、所得税と住民税です。特に大きく影響するのが所得税でして、税率は次のとおりです。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

所得税の税率は「累進課税」と呼ばれ、得た所得の金額に応じて税率が変わります。

また、住民税の税率は10%程度ですので、所得税と合計すると最大55%が税金でもっていかれることになりますね。

②どのタイミングで課税される?

仮想通貨の課税されるタイミングは、たとえば次のようなケースです。

  • 仮想通貨を売却した時
  • 仮想通貨で決済した時
  • 仮想通貨同士の交換をした時
  • マイニングの報酬で通貨を取得した時

簡単にまとめると、仮想通貨によって何らかの取引をした場合に、課税されることになります。

③所得の区分は?

仮想通貨取引による所得が20万円を超えなければ、所得税は課されません。

しかし、20万円を超えた場合、次のいずれかの区分として所得税が課されます。

  • 雑所得
  • 事業所得

サラリーマンが副業として仮装通貨取引を行う場合、通常は雑所得に区分されます。

しかし、事業規模で仮想通貨取引を行っていると認められる場合には、事業所得に区分されます。

仮想通貨の節税方法6選

仮想通貨の節税方法6選

仮想通貨は上記のようなタイミングで、最大55%の課税がなされます。

この税金をできるだけ節税する方法としては、次の6パターンがあります。

  • 利益確定せず、保有し続けることで節税
  • ふるさとで利益を抑えることで節税
  • 個人事業主として経費計上することで節税(青色申告)
  • 個人事業主として経費計上することで節税(白色申告)
  • 法人化することで節税
  • マイニングにかかる費用を経費とすることで節税

①利益確定せず、保有し続けることで節税

仮想通貨は、現金化した時点で課税されます。裏を返すと、保有している仮想通貨の時価が値上がりしていたとしても、現金化しなければ課税されません。

また先述のとおり、所得税には累進課税が採用されています。

所得が高額となるほど税率は高くなりますので、税率が高額となる可能性がある場合には、あえて利益を確定しないという意思決定も節税上は有用です。

なお、仮想通貨を使用し商品を購入するような場合には、「保有し続けている」ことにはならず課税されることになります。

また仮想通貨同士のトレードや、一度換金した仮想通貨を買い戻す場合についても、トレード時点および換金時点で課税されます。

②ふるさと納税で利益を抑えることで節税

ふるさと納税は、主に住民税の節税につながります。

こちらは個人で行うことのできる節税方法です。

ふるさと納税制度を利用し、地方に一定の金額を寄付することで、実質2,000円の出費で返礼品を受け取ることができます。

仮想通貨取引によって税金が発生した場合に限らず、一般的な節税対策として有効です。

なお、法人としてふるさと納税を行うことも可能ですが、得られる恩恵は個人と比較するとだいぶ減ります。なぜなら、法人として受け取った返礼品については、受贈益として所得計上しなければならない為です。

ふるさと納税による恩恵を受けたい場合は、個人として寄付することをオススメします。

③個人事業主として経費計上することで節税(青色申告)

個人事業主になり、確定申告を青色申告によることで、次の2つのメリットを得られます。

  • 経費の計上が認められる
  • 最大65万円の税額控除が受けられる

経費とは、たとえば仮想通貨による利益を得るために購入した書籍代やセミナー代、セミナー参加に伴う旅費交通費等が挙げられます。(一概に言うことはできないため、詳しくは税務署にご確認ください。)

仮想通貨によって得た利益から、これらの経費を差し引くことで、税額計算の基となる所得を引き下げることができるため、節税につながります。

また、青色申告には65万円の税額を控除してもらえる、という特典も付いています。

ただし、このメリットを受けるためには、次の条件が必要になります。

  • 個人事業主と認めてもらうために、開業届を行う
  • 仮想通貨取引を、事業所得として認めてもらう
  • 確定申告を行う(青色申告)

事業所得とは、所得税の区分の1つです。

仮想通貨から生じた費用を「経費」として認めてもらうためには、仮想通貨取引が「事業である」と認められなければなりません。

事業として認められるための基準は明確となっていませんが、ある程度の規模で継続して行っている事、等が条件として考えられます。

また、個人事業主として青色申告を行うために、税務署に開業届をする必要があります。

そして最後に、青色申告での確定申告です。こちらは税務署に対して「青色申告申請書」を提出する必要があります。

また、自身で税金を計算し確定申告を行わなければなりません。

④個人事業主として経費計上することで節税(白色申告)

青色申告ほどではありませんが、白色申告を選択することで次の2つのメリットが得られます。

  • 経費の計上が認められる
  • 最大10万円の税額控除が受けられる

白色申告を選択した場合、開業届を提出する必要がなくなるため、青色申告よりも手続きが楽になります。

しかし、税額控除の最大額が65万円から10万円に減ってしまうため、通常は青色申告を選択する方が多いです。

⑤法人化することで節税

仮想通貨取引事業を法人化し、法人名義で仮想通貨取引を行うことで、節税につながります。

理由は、個人と法人とで税率が異なるためです。先述のとおり、個人の場合(所得税)には最大で55%もの税率がかかります。

一方で、法人の場合(法人税)には最大でも30%程度の税率に収まるため、支払うべき税金が安くなります。

一概に「いくらから」と断言することはできませんが、利益が500万円を超えた段階で法人化が有利となるケースがあります。

その他、たとえば法人設立までに要した費用も「創立費」として経費計上することができます。具体的には、法人登記の登録免許税や、法人設立前の事務所賃借料などがあります。

今はfreee等、法人設立に必要な資料作成をサポートしてくれるサイトがありますので、無料で活用すると良いでしょう。

なお注意点としては、創立前の経費を除き、すべて法人名義で行うべきという点です。

個人名義で行った取引を、法人として行ったものとして申告した場合、脱税に該当します。

あくまで法人として行った取引にのみ、法人税が課されるので注意しましょう。

また、法人化には初期費用として法人登記費用がかかります。

その他法人税を計算するために税理士を雇う必要もあり、ランニングコストがかかります。

⑥マイニングにかかる費用を経費とすることで節税

仮想通貨のマイニングに参加することで報酬が得られますが、この報酬に対しても税金がかかります。

サラリーマンの方が副業でマイニングを行う場合、報酬が20万円を超えてしまうと確定申告が必要になり、実際に税金を支払う義務が発生します。

一方で、マイニングにより報酬を得るために支払った費用は、経費として認められる可能性が高いです。

このマイニングにかかる費用を経費として計上するために、青色申告または白色申告により確定申告することで、節税につながります。

【応用編】仮想通貨案件に取り組んでいる場合

【応用編】仮想通貨案件に取り組んでいる場合

近年はシンプルな仮想通貨の保有・売買以外にも、仮想通貨を取り入れた案件があります。

ケースにより、保有売買のときとは異なる形で、課税される場合があります。

なお現時点ではいずれも取引事例が少ないため、個人的見解に留めます。

①エアドロップや仮想通貨ウォレット案件等で、配当や紹介報酬を受け取った場合

配当や報酬を受け取った時点で課税対象となります。

日本円や他の通貨に買い替えたタイミングではないのでご注意ください。

受け取った時点での時価にて、雑所得に計上されます。そのため通貨価値が受け取ったときよりも大幅に下落した場合、配当に資する税金額が現時点での配当通貨の価値をうわまわる可能性もあります。

②ICO/IEOに関する課税関係

ICOやバイナンスなどの取引所が主催したIEO経由で仮想通貨を購入した場合です。

ICO/IEOについては、当該仮想通貨を売却した時点で課税されます。

計算方法は次のとおりです。

(ICO/IEO売却単価-ICO/IEO取得時単価)×送金数

③海外で登記されている取引所の仮想通貨

取引所がどの国にあるかではなく、利用者の居住権が日本にある場合は日本の税法に乗っ取り課税されます。よって、税務申告が必要となります。

④いわゆるGOXした場合

現行は基本的に経費計上、または雑損控除として所得からマイナスすることができます。

ただしケースバイケースですので、税理士等に確認すると確実です。

⑤資産を預けていた取引所・ウォレット案件が破綻した場合

④と同等かと考えられますが、様々なケースが想定されますので一概に申し上げることはできません。税理士に相談されることをおすすめします。

仮想通貨の税額を計算する時の注意点

仮想通貨の税額を計算する時の注意点

仮想通貨は、流通からまだ歴史が浅いため、税金計算に関する情報も少ないのが現状です。

そのため、情報の少ない中で税務申告を行うことで、脱税行為に該当してしまう可能性があります。

また税金計算は複雑なので、申告をする前に税理士に相談、無料の税額計算サイトを利用等すると手間が省けます。

ここでは、無料で税額計算を行えるWebサイトを、3つだけご紹介します。

  • 個人の税金計算@かいけいセブン
  • Guardian
  • Keiry

節税と脱税は大きく異なります。法律により認められた範囲で、正しく節税を行いましょう。

法人として仮想通貨を使用している場合には、税制改正に注意

法人として仮想通貨を使用している場合には、税制改正に注意

すでに法人化している方は、税制改正に注意しましょう。

平成31年4月の税制改正により、仮想通貨に関する法人税法が改正されてます。

特に以下の内容が改正されているため、必ず確認しておきましょう。

  • 活発な市場が存在する仮想通貨の、期末時価評価額
  • 活発な市場が存在しない仮想通貨の、期末時価評価額
  • 譲渡損益の認識時点
  • 一単位あたりの帳簿価額の算出方法
  • 未決済の仮想通貨信用取引の処理
  • 棚卸資産からの除外

詳しくは、国税庁Webサイトを確認しておくことをオススメします。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/index.html

仮想通貨からの税金を正しく節税しよう

仮想通貨からの税金を正しく節税しよう

仮想通貨から生じる税金を節税する方法は、次のとおりです。
  • 利益確定せず、保有し続ける
  • ふるさと納税を活用
  • 青色申告で経費計上
  • 白色申告で経費計上
  • 法人化する
  • マイニングにかかる費用を経費計上

特にオススメなのは、青色申告による65万円の税額控除です。やや手間がかかりますが、65万円の税額控除は大きなメリットですよね。

仮想通貨の税金を正しく計算し、正しく節税しましょう。