スモールM&Aとは、サラリーマンなどの個人が副業やサイドビジネスとして経営できる程度の小規模な事業を買収することです。これまでM&Aと言えば大企業が行うものであると考えられてきましたが、このところサラリーマンを含む個人がM&Aを行うケースが増えてきています。

  • 少額の資金であること
  • 副業の範囲内であること
  • 将来的な独立が見えること

これらがサラリーマンがスモールM&Aに強い関心を持つ主な理由です。少額の資金で副業として始めることができる気軽さに加えて、将来的な独立を見据えた人生設計の一環として取り組めることも挙げられます。

スモールM&Aとはどのような投資あるいは事業であるのかについて詳しくご紹介します。また、将来の独立を検討されているサラリーマンや個人の方に向けて、具体的にスモールM&Aを始めるための具体例をいくつかご紹介します。

この記事は「「ファイナンシャルフリーダム」への王道!完全なる経済的自由を手に入れる方法を解説」の補足として、詳細な解説を行うために執筆したものです。

INDEX
  1. 「スモールM&A」とは一体どんな投資なのか?
    1. スモールM&Aのリスクとリターンについて
  2. スモールM&Aがサラリーマンにとって最適な理由
  3. ブームのきっかけは民泊アプリ「エアビ―(Airbnb)」
  4. これから実践する「スモールM&A」の具体例を3つ紹介
    1. アフィリエイトサイトをM&Aして「スモールIT起業」
    2. コインランドリーをM&Aして「スモールリアル起業」
    3. 後継者がいない農地をM&Aして「スモール農業」
  5. サラリーマンの投資の新潮流「スモールM&A」まとめ

「スモールM&A」とは一体どんな投資なのか?

スモールM&Aとは

スモールM&Aがどのような投資であるのかを知るために、みなさんが最も関心のある資金の規模に注目しながら解説をはじめます。

サラリーマンが副業としても取り組めることから、スモールM&Aに必要な資金は決して多くありません。もちろん、M&Aの対象となっている事業ですから既に動いている会社や案件が投資対象となりますので、事業の規模によって価格には大きな差がありますが。

スモールM&Aで投資の対象となるのは、おおむね100万円前後から1000万円までの価格帯です。平均的なサラリーマンよりも所得や貯蓄が多い方が、スモールM&Aを実践しています。金融商品として取り扱われている株式や投資信託よりも多くの資金が必要である一方、不動産投資と比べれば少ない金額で、スモールM&Aを始めることができます。

投資対象 はじめに用意したい資金(目安)
外貨預金 数千円~
投資信託 10万円~
FX(外国為替証拠金取引) 30万円~
株式投資 30万円~100万円程度
スモールM&A 100万円~1000万円程度
不動産投資 2,000万円~

スモールM&Aのリスクとリターンについて

投資としてスモールM&Aを見るときには、やはりリスクとリターンについて正確に理解しておくことが重要です。

リスク ハイリスク

  • 事業の転売が難しい(換金性が低い)
  • 業績によっては赤字になる
リターン ハイリターン

  • 業績によって大きく企業が成長する
  • 複数事業の組み合わせで伸びる

一般的な投資と比べると、スモールM&Aのリスクは非常に高いです。特に、少しずつブームになっているとはいえ、事業の売買市場は十分に確立されているとは言えませんので、事業をやめて転売したいと考えたときの換金性については、他の金融商品と比べ物にならない低さです。

また、事業として経営を行いますので、収益が上がらないという可能性だけでなく、赤字となって追加資金が必要になることもあります。投資した金額以上の資金を必要としない投資と比較すると、投資予算について計画が組みにくく、リスクが高いです。

ただし、リスクが高いということはリターンも自ずと高くなります。買収した事業の業績についてはオーナー個人の能力によるところが大きいため、スモールM&Aで手に入れた会社が思わぬ収益を生む企業へと成長して、数百倍の利益を可能性さえあります。

スモールM&Aは1件の買収に限定されるわけではなく、複数の案件を買収することで独自のサービスを提供する事業へと成長させるような戦略的な経営スタイルも採ることができます。

スモールM&Aがサラリーマンにとって最適な理由

みずほ総研が2018年に行った調査によると、従業員が副業をすることに前向きである企業が2割に達しました。一方、副業を望んでいるサラリーマンは4割を超えています。まだ、会社と従業員の意識には大きな差が見られますが、サラリーマンにとって副業が身近な存在となってきています。

投資にかかる必要資金については前の項目で解説した通りで、サラリーマンであっても決して実現が困難な金額ではありません。銀行からの融資が前提となっている不動産投資とは単純には比較できないものの、100万円程度の資金であればサラリーマンでも準備することは可能でしょう。

しかし、サラリーマンがスモールM&Aを行っている理由は、資金的な手軽さだけではありません。副業解禁の流れを追い風としながら、将来的な独立のための準備として事業を持つことを選択する方が数多くいます。

スモールM&Aが好まれる理由
  1. 既に動いている事業を買い取ることによって、ゼロから事業を立ち上げるよりも失敗するリスクが少なくなる。
  2. 買収する事業の業績や収支状況によっては、すぐに収益を上げられる事業もある。
  3. スモールM&Aで手に入れた事業で得た経験を、本業で活かせる可能性がある。
  4. M&A費用は経費として計上可能(個別の処理については税理士に相談が必要)

スモールM&Aは事業買収によって自らが事業のオーナーとなって経済活動を行うものですから、実務や経営判断などの時間を割く必要があります。一般的な金融商品と比べると、随分と手間のかかる投資対象です。

ただし、どのような事業を選択するのかによって割くべき時間にも大きな差があり、月に数時間程度のメンテナンスで済むものや、毎日数分だけは必ず時間がとられるもの、季節ごとに数日の作業が必要なものなど、実にさまざまです。

このように個々人の資産と時間の余裕に合わせて、大きな負担を感じない事業を選択することができるのが、サラリーマンにとってスモールM&Aが最適な理由です。当初の計画よりも資金や時間がかかってしまうリスクを伴いますので、十分に余裕のある事業からはじめることがスモールM&Aに取り組むにあたっての注意点となります。

ブームのきっかけは民泊アプリ「エアビ―(Airbnb)」

エアビ―物件

日本でスモールM&Aが頻繁に行われるようになったのは、民泊のマッチングアプリとして有名なエアビー(Airbnb)が普及してからのことです。

エアビが日本に登場してすぐの頃は、まだ民泊に関する法整備や監視体制が十分ではなかったため、アパートやマンションの1室を賃貸して、民泊向けに貸し出すことが流行しました。

初期費用として敷金や礼金、そして1か月分の家賃さえあれば事業を開始することができ、まだ競合が少ないために高い収益を生む副業としてサラリーマンが取り組んでいたのです。

現在では民泊に関する法整備が進み、許認可が必要になったため、サラリーマンが始めるには少しハードルの高いものとなってしまいましたが、エアビの流行をきっかけとして「ホテルのような事業でも副業として出来るんだ」と多くのサラリーマンが感じるようになりました。

IT技術とインターネットの発達によって、以前であれば大規模な設備投資が必要だった事業であっても、意外と簡単に始められる世の中になっています。

これから実践する「スモールM&A」の具体例を3つ紹介

スモールM&Aの具体例

スモールM&Aブームの火付け役とも言えるエアビーの民泊事業は既に、サラリーマンが取り組むのにはハードルの高い事業となってしまいましたが、これからでも実践が可能なスモールM&Aは数多くあります。

どのような事業がスモールM&Aに適しているのかを知っていただくために、具体例を3つご紹介させていただきます。

アフィリエイトサイトをM&Aして「スモールIT起業」

アフィリエイトM&A

ブログやウェブサイトに企業の広告を掲載することによって収益を得るアフィリエイトサイトは、インターネットのなかだけで完結する事業です。

アフィリエイトサイトM&Aの概要

買収予算10万円~
かかる時間:週3時間程度~
資金回収にかかる期間:半年~
おすすめの方:パソコンでの作業に慣れている方

サイトの内容を更新するのにはパソコンを使った方が便利ですが、サイトのアクセス数や収益を確認するだけであればスマホだけでも十分です。

アフィリエイトサイトの売買については徐々に市場が確立されつつあります。サイト売買を専門に扱う事業者がありますので、まずは会員登録を済ませて、どのような案件が取り扱われているのかを確認してみましょう。

サイトの評価(デューデリジェンス)のポイントは、コンテンツの豊富さとアクセス数です。アクセスについてはTwitterやFacebookなどのSNSに依存しておらず、Googleからの検索流入が多いサイトの方が優れています。

通常、ウェブサイトの構築には膨大な時間とエネルギーが必要にあります。このため、ゼロからサイトを立ち上げるのではなく、既に一定レベルまで仕上がっているサイトをスモールM&Aすることで、初期の苦労を味わうことなく、サイト運営だけに集中することができます。

サイト運営の実務

スモールM&Aでサイトを買収したあとに取り組むべき実務には、次のようなものがあります。

  • 広告の出稿
  • サイトに掲載されている広告(アフィリエイト)の見直し
  • コンテンツの見直し
  • 新たなコンテンツの拡充
  • サイトのデザインの一新
  • サーバーやドメイン代金(年間1万円程度~)の支払い

サイト買収後には一切なにもせずに放置するということも選択肢のひとつです。この場合には、サイトが表示される状態を維持するために、サーバーとドメインの代金だけを支払い続ける以外には実務はありません。

スモールM&Aは、IT技術やインターネットの発達によって誕生したものですので、やはりウェブサイトなどのインターネットとの相性が良いです。サイトよりも少し難易度が上がりますが、スマホ向けアプリも売却案件として出回っていますので、スモールM&Aの対象として検討する価値があります。

コインランドリーをM&Aして「スモールリアル起業」

コインランドリーM&A

IT技術とは無縁のところにもスモールM&Aの対象となるようなビジネスが数多くあります。例えば、コインランドリーもスモールM&Aの対象と捉えることができます。

コインランドリーM&Aの概要

買収予算250万円~
かかる時間:毎日30分程度~
資金回収にかかる期間:1年~
おすすめの方:継続的に日々の業務ができる方

コインランドリーの運営に必要な設備は、洗濯機と乾燥機しかありません。マンションが数多く建っている住宅街がベストな立地ですが、田舎町のコインランドリーでも意外と収益性が高いです。

コインランドリーの実務

スモールM&Aでコインランドリーの運営権を買収後には、次のような実務が発生します。

  • コインランドリー施設内の清掃
  • コインランドリーのお金の回収
  • 新規の機材の購入と設置
  • 監視カメラなどの防犯対策

これらの業務を全てサラリーマンが副業として行うことは現実的ではありませんので、清掃を担当する従業員を雇う人件費などのコストが発生します。

実際にコインランドリーを何軒も買収した方に話を聞いてみると、都心では少量の洗濯に対応している洗濯機、田舎では布団洗いに対応している洗濯機を設置することがポイントなのだそうです。

コインランドリーを買収するために最もハードルが高いのは、売却を希望しているコインランドリーを見つけ出すことです。街の不動産屋さんや税理士さんなど地域密着で仕事をされている方に声をかけて情報を集めることから始めてください。

後継者がいない農地をM&Aして「スモール農業」

農業M&A

少子高齢化が進む日本では、農家の後継者問題が深刻になっています。何代も続けて農業を行ってきた家でも、後継者となるはずの子供たちが都会に出てしまうケースが珍しくありません。

農地M&Aの概要

買収予算800万円~(融資を受けられる可能性あり)
かかる時間:毎月2日程度~
資金回収にかかる期間:3年~
おすすめの方:農作業や農作物に関心のある方

すでに高齢となった農家の人たちは作付けを行うことなく農地を放置してしまっているケースが多く、地元の農協や行政も頭を悩ませている状況です。

だからこそ、農地もまたスモールM&Aの対象となっています。

しかし、サラリーマンが農地を手に入れたとしても、実際に農業をするのは大変だと感じられることでしょう。農業は日々の細かな作業が連続する事業ですから、現実的にサラリーマンが自ら農業を行うことは難しいです。

このため、農地を購入したサラリーマンは、近隣の農家の方などと契約して全ての業務を行ってもらうことが多いです。場所を用意して、運営管理を委託する形になりますので、農業と言えども一般的な事業と同じように運営することができます。

農地買収後の実務

スモールM&Aで農地を手に入れてからの実務には、次のようなものがあります。

  • 地域の農家への業務委託契約
  • 定期的な現地確認

農業のスペシャリストである農家の方との契約を済ませることが最もハードルの高い実務となりますが、ほぼ全てを任せるため現地での実務は決して多くありません。

農地の買収を行うスモールM&Aでオーナーの工夫やアイデアが活かされるのは、農業そのもの以外の部分です。例えば、収穫時に都会から人々を集めて農業体験を行ったり、収穫された野菜を行きつけの居酒屋さんなどの独自のルートで販売することが挙げられます。

補助金が手厚いために地方へのUターンやJターンをするサラリーマンが増えている昨今、まずは副業として農業に触れる機会を持つことは、収益性や利回りに留まらない価値を得ることができます。

サラリーマンの投資の新潮流「スモールM&A」まとめ

スモールM&Aまとめ

スモールM&Aは、これまで事業とは無縁だったサラリーマンが、手元の資金を使って取り組むことができる副業の延長線上にある事業買収です。

ゼロから全てを構築する手間をかけることなく、一般的な投資商品よりも収益性の高いものが多いため、静かなブームとなっています。

この記事では、サイトのM&A、コインランドリーのM&A、そして農業のM&Aについて具体例としてご紹介しましたが、規模感と仕事量が副業としての範疇におさまるのであれば、どのような事業であってもスモールM&Aの対象となりえます。

日本の終身雇用が崩れ、少子高齢化が進行しているなか、サラリーマンにとっては副業が解禁されて、さらに後継者不足により事業売却が増えるなど、スモールM&Aのチャンスが溢れる状況となっています。

安定した収益や確実性とは無縁の世界ですが、一般的な投資商品とは異なるものとしてスモールM&Aについて解説させていただきました。